早稲田大学 先進理工学研究科 物理学及応用物理学専攻 2023年度 力学および電磁力学 問題3
Author
Miyake
Description
Kai
時刻を \(t\) で表し、時間微分を \(d/dt\) や \(\dot{}\) で表す。
(1)
質点にはたらく力を \(\boldsymbol{f}\) とすると、
運動方程式 \(\dot{\boldsymbol{p}} = \boldsymbol{f}\) が成り立ち、また、
中心力であることから \(\boldsymbol{r} \times \boldsymbol{f} = \boldsymbol{0}\)
が成り立つ。
さらに、速度 \(\dot{\boldsymbol{r}}\) と運動量 \(\boldsymbol{p}\) は平行なので、
\(\dot{\boldsymbol{r}} \times \boldsymbol{p} = \boldsymbol{0}\) が成り立つ。
よって、質点の角運動量
\(\boldsymbol{l} = \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{p}\) の時間微分は
\[
\begin{aligned}
\dot{\boldsymbol{l}}
&= \dot{\boldsymbol{r}} \times \boldsymbol{p}
+ \boldsymbol{r} \times \dot{\boldsymbol{p}}
\\
&= \boldsymbol{0}
\end{aligned}
\]
となり、 \(\boldsymbol{l}\) は保存することがわかる。
(2)
質点の質量を \(m\) とすると
\(\boldsymbol{p} = m \dot{\boldsymbol{r}}\) である。
微小な時間 \(\Delta t\) の間の質点の位置の変化は
\(\dot{\boldsymbol{r}} \Delta t\) であるので、
この間に原点と質点の位置を結ぶ線分が掃過する面積のベクトル
\(\Delta \boldsymbol{S}\)
(その大きさが面積で、向きは
\(\boldsymbol{r}, \dot{\boldsymbol{r}}\) に直交し、
\(\boldsymbol{r}, \dot{\boldsymbol{r}}, \Delta \boldsymbol{S}\)
が右手系をなす)は
\[
\begin{aligned}
\Delta S
&= \frac{1}{2} \boldsymbol{r} \times
\left( \boldsymbol{r} + \dot{\boldsymbol{r}} \Delta t \right)
\\
&= \frac{\Delta t}{2m} \boldsymbol{l}
\end{aligned}
\]
となる。
(1) より \(\boldsymbol{l}\) は保存するので、
\(\Delta \boldsymbol{S} / \Delta t\) が保存することがわかり、
これは面積速度が一定であることを意味する。
(3)
物体 A が B におよぼす重力を \(\boldsymbol{f}\) とすると、
B が A におよぼす重力は $ - \boldsymbol{f}$ であり、
\((\boldsymbol{r}_B - \boldsymbol{r}_A) \times \boldsymbol{f} = \boldsymbol{0}\)
が成り立つ。
また、A, B それぞれの運動方程式は
\[
\begin{aligned}
\dot{\boldsymbol{p}}_A = - \boldsymbol{f}
, \ \
\dot{\boldsymbol{p}}_B = \boldsymbol{f}
\end{aligned}
\]
である。
よって、
\[
\begin{aligned}
\frac{d}{dt} \left( \boldsymbol{l}_A + \boldsymbol{l}_B \right)
&=
\frac{d}{dt} \left( \boldsymbol{r}_A \times \boldsymbol{p}_A
+ \boldsymbol{r}_B \times \boldsymbol{p}_B \right)
\\
&= \dot{\boldsymbol{r}}_A \times \boldsymbol{p}_A
+ \boldsymbol{r}_A \times \dot{\boldsymbol{p}}_A
+ \dot{\boldsymbol{r}}_B \times \boldsymbol{p}_B
+ \boldsymbol{r}_B \times \dot{\boldsymbol{p}}_B
\\
&= \left( \boldsymbol{r}_B - \boldsymbol{r}_A \right) \times \boldsymbol{f}
\\
&= \boldsymbol{0}
\end{aligned}
\]
となるので、
\(\boldsymbol{l}_A + \boldsymbol{l}_B\) は保存されることがわかる。
(4)
A, B それぞれの運動方程式は
\[
\begin{aligned}
M \ddot{\boldsymbol{r}}_A = - \boldsymbol{F}
, \ \
m \ddot{\boldsymbol{r}}_B = \boldsymbol{F}
\end{aligned}
\]
なので、
\(\boldsymbol{r} = \boldsymbol{r}_B - \boldsymbol{r}_A\) について、
\[
\begin{aligned}
\ddot{\boldsymbol{r}}
&= \ddot{\boldsymbol{r}}_B - \ddot{\boldsymbol{r}}_A
\\
&= \left( \frac{1}{m} + \frac{1}{M} \right) \boldsymbol{F}
\\
\therefore \ \
\frac{1}{ \frac{1}{m} + \frac{1}{M} } \ddot{\boldsymbol{r}} &= \boldsymbol{F}
\end{aligned}
\]
が成り立つ。
これは、質量 \(1/((1/m)+(1/M))\) 力 \(\boldsymbol{F}\)
の1つの質点の運動方程式と同じである。
(5)
速度の動径方向に垂直な成分は \(l/(mr)\) であるので、
力学的エネルギーの総和 \(E\) は
\[
\begin{aligned}
E
&= \frac{1}{2} m \left( v_r^2 + \left( \frac{l}{mr} \right)^2 \right)
- \frac{GmM}{r}
\\
&= \frac{1}{2} m v_r^2 + \frac{l^2}{2mr^2} - \frac{GmM}{r}
\end{aligned}
\]
である。
(重力のポテンシャルエネルギーは \(r \to \infty\) で \(0\) とした。)
(6)
(5) より
\[
\begin{aligned}
V(r) &= \frac{l^2}{2mr^2} - \frac{GmM}{r}
\\
\frac{dV(r)}{dr}
&= - \frac{l^2}{mr^3} + \frac{GmM}{r^2}
\\
&= \frac{- l^2 + Gm^2Mr}{mr^3}
\end{aligned}
\]
なので、
\[
\begin{aligned}
r_m &= \frac{l^2}{Gm^2M}
\\
V_m &= V(r_m)
\\
&= - \frac{G^2m^3M^2}{2l^2}
\end{aligned}
\]
を得る。
(7)
(i) \(E \lt V_m\) であるような運動はありえない。
(ii) \(E = V_m\) のときは、 \(r\) は一定 \(r_m\) であり、円運動である。
(iii) \(V_m \lt E \lt 0\) のときは、 \(r\) に関して有界な運動である。
(iv) $0 \leq E $ のときは、 \(r\) に関して非有界な運動である。