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東京大学 新領域創成科学研究科 海洋技術環境学専攻 2020年度

Author

Miyake

Description

第1問

次の定積分を求めよ。

\[ I = \int_0^{\sqrt{3}} \frac{dx}{\sqrt{x^2 + 1}} \]

第2問

整数 \(m\)、任意の実数 \(\theta\) について、変数 \(x\)\(y\) を以下のように定義する。

\[ \left\{ \begin{aligned} x(\theta) &= \sum_{m=0}^{\infty} \frac{\theta^{2m}}{(2m)!} \\ y(\theta) &= \sum_{m=0}^{\infty} \frac{\theta^{2m+1}}{(2m+1)!} \end{aligned} \right. \]

ただし、\(m! \equiv m \times (m-1) \times (m-2) \times \cdots \times 2 \times 1\)\(0! = 1\)\(0^0 = 1\) である。

この時、以下の問いを答えよ。

1) \(\frac{dx}{dy}\)\(x\)\(y\) で表せ。

2) \(x\)\(y\) の満たす関係を求めよ。

第3問

\[ A=\begin{pmatrix} 1 & 2 & 1 \\ 2 & 5 & 6 \\ 1 & 3 & 4\\ \end{pmatrix} \]

について以下の問いに答えよ。

1) \(A^{-1}\) を求めよ。

2) \(|A^{-1}|= \frac{1}{|A|}\) となることを示せ。

第4問

座標系 \(\text{O}xy\) 上の三角形 \(ABC\) が、座標系 \(\text{O}x'y'\) 上の三角形 \(A'B'C'\) に変換された。 この時、座標系 \(\text{O}xy\) 上の任意の点 \(\vec{x}\) から座標系 \(\text{O}x'y'\) 上の点 \(\vec{x'}\) への変換を求めよ。

第5問

行列 \(A=\begin{pmatrix} a & 1-a \\ 1-a & a \end{pmatrix}\) について、以下の問いに答えよ。ただし \(a\) は実数で、\(0<a<1\) とする。

1) 固有値、固有ベクトルを求めよ。

2) \(A^n\) を求めよ。ただし、\(n\) は自然数である。

3) \(\lim_{n \rightarrow \infty} A^n\) を求めよ。

Kai

第1問

\[ \begin{aligned} I &= \int_0^{\sqrt{3}} \frac{dx}{\sqrt{x^2 + 1}} \\ &= \left[ \log \left| x + \sqrt{x^2 + 1} \right|\right]_0^{\sqrt{3}} \\ &= \log \left( 2 + \sqrt{3} \right) \end{aligned} \]

第2問

1)

\[ \begin{aligned} \frac{dx(\theta)}{d \theta} &= \sum_{m=1}^\infty \frac{\theta^{2m-1}}{(2m-1)!} \\ &= y(\theta) \\ \frac{dy(\theta)}{d \theta} &= \sum_{m=0}^\infty \frac{\theta^{2m}}{(2m)!} \\ &= x(\theta) \end{aligned} \]

なので、\(\frac{dx}{dy} = \frac{\frac{dx}{d \theta}}{\frac{dy}{d \theta}} = \frac{y}{x}\) を得る。

2)

\[ \begin{aligned} x dx = y dy \end{aligned} \]

であり、これを積分すると、積分定数を \(C\) として、

\[ \begin{aligned} x^2 = y^2 + C \end{aligned} \]

である。 \(\theta = 0\) のとき \(x=1, y=0\) なので、 \(C=1\) がわかり、

\[ \begin{aligned} x^2 - y^2 = 1 \end{aligned} \]

を得る。

第3問

1)

掃き出し法により、次のように求められる:

\[ \begin{aligned} & \begin{pmatrix} 1 & 2 & 1 & 1 & 0 & 0 \\ 2 & 5 & 6 & 0 & 1 & 0 \\ 1 & 3 & 4 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \\ & \begin{pmatrix} 1 & 2 & 1 & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 4 & -2 & 1 & 0 \\ 0 & 1 & 3 & -1 & 0 & 1 \end{pmatrix} \\ & \begin{pmatrix} 1 & 0 & -7 & 5 & -2 & 0 \\ 0 & 1 & 4 & -2 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & -1 & 1 & -1 & 1 \end{pmatrix} \\ & \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 & -2 & 5 & -7 \\ 0 & 1 & 0 & 2 & -3 & 4 \\ 0 & 0 & 1 & -1 & 1 & -1 \end{pmatrix} \end{aligned} \]
\[ \begin{aligned} \therefore \ \ A^{-1} = \begin{pmatrix} -2 & 5 & -7 \\ 2 & -3 & 4 \\ -1 & 1 & -1 \end{pmatrix} \end{aligned} \]

2)

サラスの方法より、

\[ \begin{aligned} |A| &= (20+12+6)-(5+18+16) \\ &= -1 \\ |A^{-1}| &= (-6-20-14)-(-21-8-10) \\ &= -1 \end{aligned} \]

なので、 \(|A^{-1}| = 1 / |A|\) が成り立っていることがわかる。

第4問

\(\vec{x}=(x,y)\) から \(\vec{x'}=(x',y')\) への変換は次のように表される:

\[ \begin{aligned} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x' \\ y' \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} e \\ f \end{pmatrix} \end{aligned} \]

点 A, B, C がそれぞれ 点 A', B', C' に変換されることから、

\[ \begin{aligned} a = 1, b = 0, e = 0, c = \frac{1}{\sqrt{3}}, d = \frac{2}{\sqrt{3}}, f = \frac{1}{\sqrt{3}} - 1 \end{aligned} \]

がわかる。 つまり、

\[ \begin{aligned} x' &= x \\ y' &= \frac{x+2y+1-\sqrt{3}}{\sqrt{3}} \end{aligned} \]

である。

第5問

1)

\(A\) の固有値を \(\lambda\) とすると、

\[ \begin{aligned} 0 &= \det \begin{pmatrix} a-\lambda & 1-a \\ 1-a & a-\lambda \end{pmatrix} \\ &= (\lambda - 1)(\lambda - 2a + 1) \\ \therefore \ \ \lambda &= 1, 2a-1 \end{aligned} \]

を得る。 \(a \ne 1\) なので、これらは相異なる固有値である。

固有値 \(1\) に属する固有ベクトルを求めるために

\[ \begin{aligned} \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \end{pmatrix} &= \begin{pmatrix} a-1 & 1-a \\ 1-a & a-1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} \end{aligned} \]

とおくと \(x=y\) であり、 固有値 \(2a-1\) に属する固有ベクトルを求めるために

\[ \begin{aligned} \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \end{pmatrix} &= \begin{pmatrix} 1-a & 1-a \\ 1-a & 1-a \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} \end{aligned} \]

とおくと \(x+y=0\) であるから、それぞれに属する固有ベクトルは例えば

\[ \begin{aligned} \begin{pmatrix} 1 \\ 1 \end{pmatrix} , \begin{pmatrix} 1 \\ -1 \end{pmatrix} \end{aligned} \]

である。

2)

1) で求めた固有ベクトルを使って、

\[ \begin{aligned} P &= \frac{1}{\sqrt{2}} \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 1 & -1 \end{pmatrix} \end{aligned} \]

とおくと、

\[ \begin{aligned} P^2 &= \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} \\ PAP &= \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 2a-1 \end{pmatrix} \end{aligned} \]

が成り立つので、

\[ \begin{aligned} A^n &= P \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 2a-1 \end{pmatrix}^n P \\ &= P \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & (2a-1)^n \end{pmatrix} P \\ &= \frac{1}{2} \begin{pmatrix} 1+(2a-1)^n & 1-(2a-1)^n \\ 1-(2a-1)^n & 1+(2a-1)^n \end{pmatrix} \end{aligned} \]

を得る。

3)

\(0 \lt a \lt 1\) より \(-1 \lt 2a-1 \lt 1\) なので、

\(\lim_{n \to \infty} (2a-1)^n = 0\) であり、

\[ \begin{aligned} \lim_{n \to \infty} A^n &= \frac{1}{2} \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ 1 & 1 \end{pmatrix} \end{aligned} \]

を得る。