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東京大学 新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻 2020年度 専門基礎科目 第1問

Author

Miyake

Description

以下の間に答えよ。ただし, \(x,y,z,t,k\) は実数であるとする。

(間1)

関数 \(f(x,y) = x^3 + y^2 - xy\) の偏導関数 \(\frac{\partial f}{\partial x}\)\(\frac{\partial f}{\partial y}\)を求めよ。また, 曲面 \(z = f(x,y)\)\((x,y,z) = (1,2,f(1,2))\) における接平面の方程式を求めよ。

(間2)

関数 \(h(x) = \exp\{\exp(2x) - 1\}\)\(x = 0\) のまわりで \(1\) 次の項までテイラー展開せよ。また, 極限

\[ a = \lim_{x \rightarrow 0} \frac{1 - h(x)}{x^k} \]

が存在し, \(0 < |a| < \infty\) を満たすとき, \(k\)\(a\) の値を求めよ.

(間3)

関数 \(\cos^{-1}\)\(\cos\) の 逆関数で, \(\cos^{-1}\) の 定義域と値域は, それぞれ, \([-1,1]\)\([0,\pi]\) であるとする。曲線 \(y = \cos^{-1}(x + \frac{1}{2})\) を描け。また, この曲線と \(x\) 軸および \(y\) 軸で囲まれる領域の面積を求めよ.

(間4)

実関数 \(g(t)\) が満たす次の微分方程式の一般解を求めよ.

\[ \frac{\text{d}^2g}{\text{d}t^2} + \frac{\text{d}g}{\text{d}t} + \sin t = 0 \]

また, 初期値 \(g(0) = 2,\frac{\text{d}g}{\text{d}t}(0)=0\) に対する特解を求めよ。

(間5)

\(D = \{(x,y)|0 \le 2x - y \le 1,0 \le x + 3y \le 2\}\) とする。

変数変換 \(u = 2x - y,v = x + 3y\) を用いて,次の重積分の値を求めよ。

\[ \iint_{D} \frac{(2x - y)^3}{4 + (x + 3y)^2}\text{d}x\text{d}y \]

Kai

(問1)

偏導関数は、

\[ \begin{aligned} \frac{\partial f}{\partial x} = 3x^2-y , \ \ \ \ \frac{\partial f}{\partial y} = 2y-x \end{aligned} \]

である。

また、 \(x=1,y=2\) のとき、

\[ \begin{aligned} f(1,2)=3 , \ \ \ \ \frac{\partial f}{\partial x} (1,2) = 1 , \ \ \ \ \frac{\partial f}{\partial y} (1,2) = 3 \end{aligned} \]

であるから、 求める接平面は、点 \((1,2,3)\) を通り、法線ベクトル \((1,3,-1)\) を持つので、 その方程式は、

\[ \begin{aligned} (x-1) + 3(y-2) - (z-3) = 0 \end{aligned} \]
\[ \begin{aligned} \therefore \ \ \ \ x + 3y - z - 4 = 0 \end{aligned} \]

である。

(問2)

次のように計算できる:

\[ \begin{aligned} h'(x) &= \exp \left\{ \exp (2x) - 1 \right\} \cdot \exp (2x) \cdot 2 \\ h(0) &= 1 \\ h'(0) &= 2 \end{aligned} \]

よって、 \(h(x)\) は1次の項までで次のようにテイラー展開される:

\[ \begin{aligned} h(x) = 1 + 2x + \cdots \end{aligned} \]

\(h(x)\) の2次以上の項をまとめて \(\varphi(x)\) とすると、

\[ \begin{aligned} a &= \lim_{x \to 0} \frac{1 - h(x)}{x^k} \\ &= \lim_{x \to 0} \frac{-2x - \varphi(x)}{x^k} \end{aligned} \]

であるから、 \(k \lt 1\) のときは \(a=0\) であり、 \(k \gt 1\) のときは発散する。 よって、極限が存在し \(0 \lt |a| \lt \infty\) を満たすのは \(k=1\) のときであり、このとき

\[ \begin{aligned} a = -2 \end{aligned} \]

である。

(問3)

グラフは、このようになります。

求める面積は、

\[ \begin{aligned} \int_0^{1/2} \cos^{-1} \left( x + \frac{1}{2} \right) dx = \int_0^{\pi / 3} \left( \cos x - \frac{1}{2} \right) dx = \left[ \sin x - \frac{1}{2} x \right]_0^{\pi / 3} = \frac{\sqrt{3}}{2} - \frac{\pi}{6} \end{aligned} \]

である。

(問4)

\(h(t) = dg(t)/dt\) とすると、与えられた微分方程式は、次のように書ける:

\[ \begin{align} \frac{dh(t)}{dt} + h(t) + \sin t = 0 \tag{1} \label{1} \end{align} \]

そこで、

\[ \begin{aligned} \frac{dh(t)}{dt} + h(t) = 0 \end{aligned} \]

を考えると、これの一般解は、積分定数を \(A\) として、

\[ \begin{aligned} h(x) = A e^{-t} \end{aligned} \]

と書ける。 そこで、式 (\(\ref{1}\)) の解を次のよう形で探す:

\[ \begin{aligned} h(x) = A(t) e^{-t} \end{aligned} \]

これを式 (\(\ref{1}\)) に代入して整理すると、

\[ \begin{aligned} A'(t) = - e^t \sin t \end{aligned} \]

よって、

\[ \begin{aligned} A(t) = - \int e^t \sin t dt = - e^t \sin t + \int e^t \cos t dt = - e^t \sin t + e^t \cos t - \int e^t \sin t dt \end{aligned} \]

よって、

\[ \begin{aligned} A(t) &= \frac{1}{2} \left( \cos t - \sin t \right) e^t + B \\ \therefore \ \ h(t) &= \frac{1}{2} \left( \cos t - \sin t \right) + B e^{-t} \\ \therefore \ \ g(t) &= \frac{1}{2} \left( \sin t + \cos t \right) - B e^{-t} + C \end{aligned} \]

ここで、 \(B, C\) は積分定数である。

また、与えられた初期値を満たすのは、

\[ \begin{aligned} B = - \frac{1}{2} , \ \ C = 1 \end{aligned} \]

すなわち、

\[ \begin{aligned} g(t) = \frac{1}{2} \left( \sin t + \cos t \right) + \frac{1}{2} e^{-t} + 1 \end{aligned} \]

である。

(問5)

与えられた変数変換について、

\[ \begin{aligned} \frac{\partial u}{\partial x} = 2 &, \ \ \frac{\partial u}{\partial y} = -1 \\ \frac{\partial v}{\partial x} = 1 &, \ \ \frac{\partial v}{\partial y} = 3 \end{aligned} \]

であるから、 \(du dv = 7 dx dy\) であり、 与えられた積分は、

\[ \begin{aligned} &\iint_D \frac{u^3}{4+v^2} \frac{du dv}{7} = \frac{1}{7} \int_0^1 u^3 du \int_0^2 \frac{dv}{4+v^2} \\ &= \frac{1}{7} \left[ \frac{u^4}{4} \right]_0^1 \left[ \frac{1}{2} \arctan \frac{v}{2} \right]_0^2 = \frac{1}{7} \frac{1}{4} \frac{1}{2} \frac{\pi}{4} = \frac{\pi}{224} \end{aligned} \]

となる。