東京大学 総合文化研究科 広域科学専攻 広域システム科学系 2020年度 総合科目 第3問
Author
Miyake
Description
質量 \(m_1\) の質点 \(1\) と質量 \(m_2\) の質点 \(2\) が、お互いに万有引力で引き合いながら真空中を運動している。
質点 \(2\) から質点 \(1\) に向かうベクトルを \(\vec{r}\) とし、
二つの質点の重心を原点 \(\text{O}\) とする座標系を用いる。
二つの質点は同一平面内を運動するが、\(\vec{r}\) をその面内の二次元極座標で表し、
動径および方位角成分を \((r, \phi)\) とする。万有引力定数を \(G\) とし、
\[
\begin{aligned}
&\mu = \frac{m_1 m_2}{m_1 + m_2} \\
&M = m_1 + m_2
\end{aligned}
\]
として、以下の設問に答えよ。なお必要に応じて、時間微分を \(\dot{r}\) や \(\dot{\phi}\) などと上付きドットを用いて表しても良い。
(1) 質点 \(1\) および質点 \(2\) の位置ベクトルを、\(m_1\), \(m_2\) および \(\vec{r}\) 用いて表せ。
(2) 二つの質点の運動エネルギーの総和を \(\mu\), \(r\) および \(\phi\) を用いて表せ。
(3) この系の重力ポテンシャルエネルギーを \(\mu\), \(M\), \(r\) および \(G\) を用いて表せ。
(4) \(l \equiv r^2 \phi\) が保存量となることを示せ。
(5) 動径成分 \(r\) についての運動方程式を、\(\mu\), \(M\), \(r\), \(l\) および \(G\) を用いて書き下せ。
(6) 系の全エネルギー \(E\) を \(\mu\), \(M\), \(r\), \(l\) および \(G\) で表せ。
(7) \(E\)が最小値を取る時の \(E\) の表式を \(\mu\), \(M\), \(l\) および \(G\) を用いて求め、その時の二つの質点の軌道の様子を述べよ。
(8) \(\vec{r}=(r_1, \phi_1)\) を質点 \(1\) の位置ベクトルとする。
二つの質点のが重力的に束縛されお互いの周りを周回する条件と、その時の \(r_1\) と \(\phi_1\) の関係を求めよ。
Kai
(1)
題意より、
\[
\begin{aligned}
m_1 \vec{r}_1 + m_2 \vec{r}_2 = \vec{0}
, \ \ \ \
\vec{r} = \vec{r}_1 - \vec{r}_2
\end{aligned}
\]
であるから、
\[
\begin{aligned}
\vec{r}_1 = \frac{m_2}{m_1+m_2} \vec{r}
, \ \ \ \
\vec{r}_2 = - \frac{m_1}{m_1+m_2} \vec{r}
\end{aligned}
\]
を得る。
(2)
\(\vec{r}\) のデカルト座標による成分を \((x,y)\) とすると、
\[
\begin{aligned}
x &= r \cos \phi
\\
y &= r \sin \phi
\\
\dot{x} &= \dot{r} \cos \phi - r \dot{\phi} \sin \phi
\\
\dot{y} &= \dot{r} \sin \phi + r \dot{\phi} \cos \phi
\\
\left| \dot{\vec{r}} \right|^2
&= \dot{x}^2 + \dot{y}^2
= \dot{r}^2 + r^2 \dot{\phi}^2
\end{aligned}
\]
である。
よって、求める運動エネルギー \(K\) は、
\[
\begin{aligned}
K
&= \frac{1}{2} m_1 \left| \dot{\vec{r}_1} \right|^2
+ \frac{1}{2} m_2 \left| \dot{\vec{r}_2} \right|^2
\\
&= \frac{1}{2} \frac{m_1 m_2^2 + m_1^2 m_2}{(m_1+m_2)^2}
\left| \dot{\vec{r}} \right|^2
\\
&= \frac{1}{2} \frac{m_1 m_2}{m_1+m_2}
\left( \dot{r}^2 + r^2 \dot{\phi}^2 \right)
\\
&= \frac{1}{2} \mu \left( \dot{r}^2 + r^2 \dot{\phi}^2 \right)
\end{aligned}
\]
となる。
(3)
求める重力ポテンシャルエネルギー \(U\) は、
\[
\begin{aligned}
U = - G \frac{m_1 m_2}{r}
= - \frac{G \mu M}{r}
\end{aligned}
\]
である。
(4)
この系のラグランジアン \(L\) は、
\[
\begin{aligned}
L = K - U
= \frac{1}{2} \mu \left( \dot{r}^2 + r^2 \dot{\phi}^2 \right)
+ \frac{G \mu M}{r}
\end{aligned}
\]
であり、
\[
\begin{aligned}
\frac{\partial L}{\partial \phi}
&= 0
\\
\frac{\partial L}{\partial \dot{\phi}}
&= \mu r^2 \dot{\phi}
= \mu l
\end{aligned}
\]
であるから、 \(\phi\) に関する運動方程式より、
\(l\) が保存量であることがわかる。
(5)
上で求めたラグランジアン \(L\) から、
\[
\begin{aligned}
\frac{\partial L}{\partial r}
&= \mu r \dot{\phi}^2 - \frac{G \mu M}{r^2}
= \frac{\mu l^2}{r^3} - \frac{G \mu M}{r^2}
\\
\frac{\partial L}{\partial \dot{r}}
&= \mu \dot{r}
\end{aligned}
\]
であるから、 \(r\) に関する運動方程式は、
\[
\begin{aligned}
\mu \ddot{r}
&= \frac{\mu l^2}{r^3} - \frac{G \mu M}{r^2}
\\
\therefore \ \ \ \
\ddot{r}
&= \frac{l^2}{r^3} - \frac{G M}{r^2}
\end{aligned}
\]
となる。
(6)
\[
\begin{aligned}
E = K + U
&= \frac{1}{2} \mu \left( \dot{r}^2 + r^2 \dot{\phi}^2 \right)
- \frac{G \mu M}{r}
\\
&= \frac{1}{2} \mu \left( \dot{r}^2 + \frac{l^2}{r^2} \right)
- \frac{G \mu M}{r}
\end{aligned}
\]
(7)
\[
\begin{aligned}
V(r)
= \frac{1}{2} \mu \frac{l^2}{r^2} - \frac{G \mu M}{r}
\end{aligned}
\]
とすると、
\[
\begin{aligned}
V'(r)
&= - \mu \frac{l^2}{r^3} + \frac{G \mu M}{r^2}
\\
&= \mu \frac{- l^2 + G M r}{r^3}
\end{aligned}
\]
となるので、
\[
\begin{aligned}
r_0 = \frac{l^2}{GM}
\end{aligned}
\]
とすると、 \(V(r)\) が最小値をとるのは \(r=r_0\) のときで、
\[
\begin{aligned}
V(r_0)
= - \frac{1}{2} \frac{G^2 \mu M^2}{l^2}
\end{aligned}
\]
となる。
\(E\) が最小値 \(E_0\) をとるのもこのときで、
\[
\begin{aligned}
E_0
= - \frac{1}{2} \frac{G^2 \mu M^2}{l^2}
\end{aligned}
\]
である。
(8)