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東京大学 情報理工学研究科 数理情報学 2023年度 第4問

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hari64boli64

Description

確率変数 \(X\) が平均 \(0\)、分散 \(1\) の正規分布に従うとし、確率変数

\[ Y = \frac{1}{X^2} \]

が従う分布の確率密度関数を \(f(y)\) と定める。虚数単位を \(i\) とし、実数全体の集合を \(\mathbb{R}\) とする。また、確率変数 \(Z\) の期待値を \(\mathbb{E}[Z]\) で表す。 以下の設問に答えよ。

(1) \(f(y)\) を求めよ。

(2) \(f(y)\) のラプラス変換を \(L(u) = \int_0^{\infty} e^{-uy} f(y) \text{d}y \ (u \ge 0)\) と表す。このとき、

\[ \frac{\text{d} L(u)}{\text{d} u} = -\frac{1}{\sqrt{2u}} L(u) \quad (u>0) \]

が成り立つことを示せ。

(3) \(Y\) の特性関数を \(\phi(u) = \mathbb{E}[e^{iuY}] \ (u \in \mathbb{R})\) と表す。このとき、\(\phi(u)\) を求めよ。

(4) 確率変数 \(Y_1, \ldots, Y_n\) が独立同一に確率密度関数 \(f(y)\) を持つ確率分布に従うとする。このとき、

\[ \frac{1}{n^2} (Y_1 + \cdots + Y_n) \]

\(n \to \infty\) の極限で分布収束(法則収束)することを示し、その極限分布の確率密度関数を求めよ。

Kai

(1)

確率変数の変数変換の公式を用いると、 また、\(X=\pm\frac{1}{\sqrt{Y}}\) と、2つの解があることに注意すると、

\[ \begin{aligned} f(y) & = \begin{cases} 2 \frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{-\frac{1}{2y}} \lvert \frac{\text{d}x}{\text{d}y} \rvert & (0<y) \\ 0 & (\text{otherwise}) \end{cases} \\ & = \begin{cases} \frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{-\frac{1}{2y}} y^{-\frac{3}{2}} & (0<y) \\ 0 & (\text{otherwise}) \end{cases} \end{aligned} \]

となる。

なお、実際、\(\int_0^{\infty}\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{-\frac{1}{2y}} y^{-\frac{3}{2}} \text{d}y =1\) である。(Wolfram Alphaで計算)

(2)

\[ \begin{aligned} \frac{\text{d}L(u)}{\text{d}u} & =\frac{\text{d}}{\text{d}u} \int_0^{\infty} {e^{-uy}f(y)}\text{d}{y} \\ & =\int_0^{\infty} \frac{\text{d}}{\text{d}u} e^{-uy}f(y) \text{d}{y} \\ & =\int_0^{\infty} {-y e^{-uy}f(y)} \text{d}{y} \\ & =-\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_0^{\infty} {e^{-uy}e^{-\frac{1}{2y}}y^{-\frac{1}{2}}} \text{d}{y} \\ & =\frac{1}{2u\sqrt{2\pi}} \int_0^{\infty} {e^{-\frac{1}{2z}}e^{-uz}\left( \frac{1}{2uz} \right)^{-\frac{1}{2}}z^{-2}} \text{d}{z} \\ & =\sqrt{2u}\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_0^\infty e^{-\frac{1}{2z}}e^{-uz}z^{-\frac{3}{2}} \text{d}{z} \\ & =\sqrt{2u}L(u) \end{aligned} \]

微分と積分が交換できることは、\(f(y)\) が確率密度関数であるため被積分関数が可積分であり、また、微分後の式も可積分であることから従う。

\(\frac{1}{2y}=uz\) という変数変換が本質的。 見つけた人曰く、「\(\exp(-uy),\exp(-\frac{1}{2}y)\) の形を保存するにはどうすればいいのかなぁと思って、いろいろ気合いで推測」したらしいです。

(3)

(2)の式に当てはめて \(L(-iu)=e^{-\sqrt{2u}\sqrt{-i}}\) としたい所だが、これは厳密な解答ではない。 \(\sqrt{-i}\) 自体が多価関数。

以下 Slack にあがっていた解答の書き起こし。 なお、この解答の作成者は数学科の複素関数論を履修されていた方です。(私には無理……)

\[ \begin{aligned} D & =\left\{ re^{i\theta}\in \mathbb{C} | r>0, -\frac{\pi}{2} < \theta < \frac{\pi}{2} \right\} \\ E & =\left\{ re^{i\theta}\in \mathbb{C} | r>0, -\frac{\pi}{4} < \theta < \frac{\pi}{4} \right\} \end{aligned} \]

とおく。

\[ \begin{aligned} E \to D, \; & z \mapsto z^2 \\ D \to E, \; & z \mapsto \sqrt{z} \; \left(re^{i\theta} \mapsto \sqrt{r}e^{i\frac{\theta}{2}}\right) \end{aligned} \]

は正則かつ全単射で互いに逆写像。

ここで、\(L\)\(D\) で正則、\(\overline{D}\) で連続である。この証明は後述。

実軸正の部分で、

\[ \begin{aligned} \frac{\text{d}L}{\text{d}u}(u)=-\frac{1}{\sqrt{2u}}L(u) \end{aligned} \]

が成り立つから、両辺が \(D\) 上で正則な為、一致の定理より、\(D\)

\[ \begin{aligned} \frac{\text{d}L}{\text{d}z}(z)=-\frac{1}{\sqrt{2z}}L(z) \end{aligned} \]

が成立する。

\(E\) 上で \(M(z)=L(z^2)\) とおけば、上式より、

\[ \begin{aligned} \frac{\text{d}M}{\text{d}z}(z) & =\frac{\text{d}L}{\text{d}z}{}(z^2)2z \\ & =-\frac{1}{\sqrt{2z^2}}L(z^2)2z \\ & = -\sqrt{2}M(z) \; (\because \sqrt{z^2}=z \ \text{on} \ E) \end{aligned} \]

これより、\(E\)\(M(z)=Ce^{-\sqrt{2}z}\) となる。ただし、\(C\) は積分定数。 実軸正の部分から、\(u \searrow 0\) とすれば、\(M(u)=L(\sqrt{u}) \to L(0)=1\) となる。 従って、\(C=1\)\(M(z)=e^{-\sqrt{2}z}\)\(D\) 上で \(L(z)=M(\sqrt{z})=e^{-\sqrt{2z}}\) となる。

\(u>0\) の場合、\(z=a-iu\) として、\(a\searrow 0\) とすれば、 \(\sqrt{z} \to \sqrt{u} \left(\frac{1}{\sqrt{2}}-\frac{1}{\sqrt{2}}i \right)\) なので、

\[ \begin{aligned} \phi(u)=L(-iu)=\lim_{a \searrow 0}L(a-iu)=e^{-\sqrt{u}(1-i)} \end{aligned} \]

となる。極限を取る際に \(\overline{D}\) 上での連続性を用いた。

\(u<0\) の場合、\(z=a-iu\) として、\(a \searrow 0\) とすれば、 \(\sqrt{z} \to \sqrt{u} \left(\frac{1}{\sqrt{2}}+\frac{1}{\sqrt{2}}i \right)\) なので、

\[ \begin{aligned} \phi(u)=L(-iu)=\lim_{a \searrow 0}L(a-iu)=e^{-\sqrt{-u}(1+i)} \end{aligned} \]

となる。極限を取る際に \(\overline{D}\) 上での連続性を用いた。

\(u=0\) の場合、

\[ \begin{aligned} \phi(0)=1 \end{aligned} \]

となる。

以上より、まとめて、

\[ \begin{aligned} \phi(u)=\begin{cases} e^{-\sqrt{u}(1-i)} & (u>0) \\ e^{-\sqrt{-u}(1+i)} & (u<0) \\ 0 & (u=0) \end{cases} \end{aligned} \]

が答えとなる。

以下、\(L\) の正則性と連続性を見る。

まず正則性を見る。 \(u=a+ib \in D\) とする。 \(0<|h|<\frac{a}{2}\) とし、\(h=p+iq\) とおく。

\[ \begin{aligned} \frac{L(u+h)-L(u)}{h}=\int_0^\infty \frac{e^{-(u+h)y}-e^{-uy}}{h} f(y) \text{d}{y} \end{aligned} \]

で、被積分関数に関して、

\[ \begin{aligned} \left \lvert \frac{e^{-(u+h)y}-e^{-uy}}{h} \right \rvert & = \left \lvert \frac{1}{h}\int_u^{u+h} -y e^{-ky} \text{d}{k}\right \rvert \\ & = \left \lvert \frac{1}{h}\int_0^1 -y e^{-\left (u+t(p+iq) \right)y} (p+iq) \text{d}{t} \right \rvert \\ & \leq \frac{1}{|h|}\int_0^1 y e^{-(a+tp)y} |h| \text{d}{t} \\ & \leq \int_0^1 y e^{-\frac{a}{2}y} \text{d}{t} \\ & \leq e^{-\frac{a}{2}y} \\ & <C \quad (h \text{によらず有界}) \end{aligned} \]

となるため、\(C f(y)\) は可積分であるから優収束定理が使えて、

\[ \begin{aligned} \frac{\text{d}L(u)}{\text{d}u} =\int_0^{\infty} {-y e^{-uy}f(y)} \text{d}{y} \end{aligned} \]

となる。つまり、\(D\) 上正則となる。

次に連続性を見る。 \(u=ib \in \overline{D}, |h|<1,u+h \in \overline{D}\) とし、 \(h=p+iq (p \geq 0)\) とおく。

\[ \begin{aligned} L(u+h)=\int_0^{\infty} e^{-(u+h)y}f(y)\text{d}{y} \end{aligned} \]

となるが、被積分関数に関して、

\[ \begin{aligned} \left \lvert e^{-(u+h)y}f(y) \right \rvert=e^{-py}f(y) \leq f(y) \quad (\because \ y \geq 0) \end{aligned} \]

なので、優収束定理が使えて、

\[ \begin{aligned} \lim_{z \to u}L(z)=\int_0^\infty e^{-uy}f(y) \text{d}{y} \end{aligned} \]

となる。つまり、\(\overline{D}\) 上連続となる。

(4)

\(\frac{1}{n^2}\sum_{i=1}^n{Y_i}\) の特性関数を求める。

\[ \begin{aligned} \mathbb{E}\left [e^{iu\frac{1}{n^2}\sum_{i=1}^n{Y_i}} \right] & =\mathbb{E}\left [\prod_{i=1}^{n}e^{iu\frac{1}{n^2}Y_i} \right] \\ & =\prod_{i=1}^{n}\mathbb{E}\left [e^{iu\frac{1}{n^2}Y_i} \right] \quad (\because \text{i.i.d.}) \\ & =\mathbb{E} \left [e^{iu\frac{1}{n^2}Y} \right ]^n \\ & =\phi\left (\frac{u}{n^2} \right )^n \\ & =\phi(u) \end{aligned} \]

となる。

よって、\(Y\) に分布収束する (\(n \to \infty\) が関係ない答えである為、本当に正しいのかどうかは不明) 。