東京大学 情報理工学研究科 数理情報学 2020年度 第4問
Author
hari64boli64
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整数 \(n\) と実数 \(t \geq 0\) に対する関数 \(x(n,t)\) がしたがう微分方程式
\[
\begin{align}
\frac{\partial}{\partial t}x(n,t) = x(n-1,t) + x(n+1,t) - 2x(n,t) \tag{*}
\end{align}
\]
を考える。ただし、関数 \(x(n,t)\) は任意の整数 \(n\) に対して
\[
\begin{align}
x(n+N,t) = x(n,t) \tag{**}
\end{align}
\]
を満たすものとする。ここで \(N\) は \(3\) 以上の整数とする。
また、整数 \(m, n\) に対し \(e(m,n) = \exp \left( i\frac{2\pi mn}{N} \right)\) と定める。
ここで \(i\) は虚数単位である。以下の設問に答えよ。
(1) 整数 \(m\) に対し \(f_m(t)\) を実数 \(t \geq 0\) の関数とし、\(f_m(0) = c_m\) とする。ここで \(c_m\) は複素数である。
\(x(n,t) = e(m,n) f_m(t)\) の形の関数が微分方程式 (*) と条件 (**) を満たすとき、\(f_m(t)\) を求めよ。
(2) \((g_0, \ldots, g_{N-1})\) を \(N\) 次元複素ベクトルとする。初期条件 \(x(n,0) = g_n \ (n = 0,1,\ldots,N-1)\) のもとで、微分方程式 (*) の解を条件 (**) のもとで求めよ。
(3) (2) で求めた解 \(x(n,t)\) に対して、\(\lim_{t \to \infty} x(n,t)\) を求めよ。
Kai
(1)
\[
\begin{aligned}
& \frac{\partial}{\partial t}x(n,t)=x(n-1,t)+x(n+1,t)-2x(n,t) \\
\Leftrightarrow & e(m,n)\frac{\text{d}}{\text{d} t}f_m(t)=e(m,n-1)f_m(t)+e(m,n+1)f_m(t)-2e(m,n)f_m(t) \\
\Leftrightarrow & \frac{\text{d}}{\text{d} t}f_m(t)=\left (\exp(-i\frac{2\pi m}{N})+\exp(i\frac{2\pi m}{N})-2 \right) f_m(t) \\
\Leftrightarrow & f_m(t)=c_me^{\left (\exp(-i\frac{2\pi m}{N})+\exp(i\frac{2\pi m}{N})-2 \right)t} \\
\end{aligned}
\]
そして、これは \(e(m,n+N)=e(m,n)\) より、条件 (**) を満たす。
(2)
(1) の形で書けるとまず仮定して、与えられた初期条件を適用すると、\(c_m=\frac{g_n}{e(m,n)}\) となる。
しかし、これでは \(c_m\) が \(n\) に依存してしまうので、条件に反してしまう。
なので、\(c_m\) を \(n\) に依存しないように定めたい。
ここで、\(g_n=\sum_{m=0}^{N-1}e(m,n)c'_m\) という形で書けることを利用する。
ただし、\(c'_m=\frac{1}{N}\sum_{n'=0}^{N-1}e(-m,n')g_{n'}\) である。これは離散フーリエ変換に相当する。
なお、このような形で書けることは、以下で確認することが出来る。
\[
\begin{aligned}
& \sum_{m=0}^{N-1}e(m,n)c'_m \\
= & \frac{1}{N}\sum_{m=0}^{N-1}e(m,n)\sum_{n'=0}^{N-1}e(-m,n')g_{n'} \\
= & \frac{1}{N}\sum_{n'=0}^{N-1}\sum_{m=0}^{N-1}e(m,n)e(-m,n')g_{n'} \\
= & \frac{1}{N}\sum_{n'=0}^{N-1}\sum_{m=0}^{N-1}e(m,n-n')g_{n'} \\
= & \frac{1}{N}\sum_{n'=0}^{N-1}N\delta_{n,n'}g_{n'} \\
= & \frac{1}{N}Ng_n \\
= & g_n \\
\end{aligned}
\]
この事を利用すると、
\[
\begin{aligned}
x(n,t)=\sum_{m=0}^{N-1}e(m,n)f_m(t) \quad (c_m=c'_m)
\end{aligned}
\]
とすれば、
\[
\begin{aligned}
x(n,0)=\sum_{m=0}^{N-1}e(m,n)c_m=g_n
\end{aligned}
\]
となり、特に、(1) より、これは条件 (*), (**) を共に満たす。
よって、
\[
\begin{aligned}
x(n,t) & =\sum_{m=0}^{N-1}e(m,n)f_m(t) \\
& =\sum_{m=0}^{N-1}e(m,n)\left (\frac{1}{N}\sum_{n'=0}^{N-1}e(-m,n')g_{n'} \right ) e^{\left (\exp(-i\frac{2\pi m}{N})+\exp(i\frac{2\pi m}{N})-2 \right) t} \\
\end{aligned}
\]
が解となる。
(3)
\[
\begin{aligned}
\lim_{t\to\infty}x(n,t) & =\lim_{t\to\infty}\sum_{m=0}^{N-1}e(m,n)c_me^{\left (\exp(-i\frac{2\pi m}{N})+\exp(i\frac{2\pi m}{N})-2 \right )t} \\
& =c_0 \\
& =\frac{1}{N}\sum_{n=0}^{N-1}e(0,n)g_n \\
& =\frac{1}{N}\sum_{n=0}^{N-1}g_n \\
\end{aligned}
\]
Knowledge
離散フーリエ変換