東京大学 情報理工学研究科 数理情報学 2020年度 第3問
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\(K\) を体、\(n\) を正整数とする。 \(K(x_1, x_2, \ldots, x_n)\) を \(K\) 上の \(n\) 変数の有理関数のなす体とし、\(K\) および \(x_1, x_2, \ldots, x_n, x_1^{-1}, x_2^{-1}, \ldots, x_n^{-1}\) で生成される \(K(x_1, x_2, \ldots, x_n)\) の部分環 \(K[x_1, x_2, \ldots, x_n, x_1^{-1}, x_2^{-1}, \ldots, x_n^{-1}]\) を \(L\) で表す。 また \(R = K[x_1, x_2, \ldots, x_n, y_1, y_2, \ldots, y_n]\) を \(K\) 上の \(2n\) 変数多項式環とする。以下の設問に答えよ。
(1) 元 \(p \in R\) において、各変数 \(y_i \ (i = 1, \ldots, n)\) に \(x_i^{-1}\) を代入して得られる \(L\) の元を \(\varphi(p)\) で表す。この写像 \(\varphi: R \rightarrow L\) は環の準同型である。 \(J\) を \(L\) のイデアルとするとき、\(\varphi^{-1}(J)\) は \(R\) のイデアルであることを示せ。
(2) \(1 \leq i \leq n\) について \(g_i = x_i y_i - 1\) と定める。また、
と定める。任意の元 \(p \in R\) に対して、\(p = h_1 g_1 + \cdots + h_n g_n + r\) となる \(R\) の元 \(h_1, \ldots, h_n\) と \(R'\) の元 \(r\) が存在することを示せ。
(3) \(g_1, \ldots, g_n\) で生成される \(R\) のイデアルを \(I\) で表す。ker \(\varphi = I\) を示し、\(L\) が剰余環 \(R/I\) と同型であることを示せ。
Kai
(1)
以下の二つを言えばよい。
-
\(\varphi^{-1}(J)\) は加法について部分群である。\(J\)も加法について\(L\)の部分群であるので明らか。
-
\(r \in \varphi^{-1}(J),x \in R \Rightarrow rx \in \varphi^{-1}(J)\)。\(\varphi(rx)=\varphi(r)\varphi(x)\in J \quad (\because \varphi(r) \in J , \varphi(x) \in L)\) より従う。
(2)
自明
(3)
\(I \subset \mathrm{Ker}\varphi\) は代入すれば明らか。
\(\mathrm{Ker}\varphi \subset I\) は、(2)より \(r\neq 0\) ならば \(\varphi(p) \neq 0\) が言えればよい。
説明が難しいが、\(x_i\) と \(x_j,y_j\) が無関係だということを言えばok? (自信なし)
後半は準同型定理より、
Knowledge
斜体ならば可換性を課さないが、体ならば可換性がある。
体の定義は以下の通り。
空でない集合\(K\)が体(field)であるとは,
- \(K\) が単位元を持つ可換環
- \(K\) の \(0\) でない任意の元が乗法逆元を持つ,すなわち,\(a \neq 0\) に対し,\(aa^{-1}=1\) となるものが存在する。言い換えると \(K^{\times}=K\setminus\{0\}\) であるの2つが成り立つことをいう。ただし,\(K^{\times}\)とは\(K\)の乗法群を指す。
この時、右イデアルと左イデアルは同じになる。
イデアルの定義は以下の通り。
\(R\) を環とし,\(I \subset R\) とする。\(I\) について,
- \(I\) は加法について部分群である
- \(r \in R, x \in I \Rightarrow rx \in I\)
- \(r \in R, x \in I \Rightarrow xr \in I\) ...(中略)...,1,2,3 が成り立つとき,両側イデアル (two-sided ideal) という。
\(S (\subset R)\) から生成された有限生成イデアルの一般形は以下の通り。
群の準同型定理の主張は以下の通り。
群準同型 \(f:G_1 \to G_2\) に対して、写像 \(F:G_1/\mathrm{Ker}f \to \mathrm{Im}f\) は群準同型であり、特に、\(G_1/\mathrm{Ker}f \cong \mathrm{Im}f\) である。