Skip to content

東京大学 情報理工学研究科 数理情報学 2020年度 第3問

Author

hari64boli64

Description

\(K\) を体、\(n\) を正整数とする。 \(K(x_1, x_2, \ldots, x_n)\)\(K\) 上の \(n\) 変数の有理関数のなす体とし、\(K\) および \(x_1, x_2, \ldots, x_n, x_1^{-1}, x_2^{-1}, \ldots, x_n^{-1}\) で生成される \(K(x_1, x_2, \ldots, x_n)\) の部分環 \(K[x_1, x_2, \ldots, x_n, x_1^{-1}, x_2^{-1}, \ldots, x_n^{-1}]\)\(L\) で表す。 また \(R = K[x_1, x_2, \ldots, x_n, y_1, y_2, \ldots, y_n]\)\(K\) 上の \(2n\) 変数多項式環とする。以下の設問に答えよ。

(1) 元 \(p \in R\) において、各変数 \(y_i \ (i = 1, \ldots, n)\)\(x_i^{-1}\) を代入して得られる \(L\) の元を \(\varphi(p)\) で表す。この写像 \(\varphi: R \rightarrow L\) は環の準同型である。 \(J\)\(L\) のイデアルとするとき、\(\varphi^{-1}(J)\)\(R\) のイデアルであることを示せ。

(2) \(1 \leq i \leq n\) について \(g_i = x_i y_i - 1\) と定める。また、

\[ R' = \left\{ r \in R \ \left | \ \begin{aligned} &1 \leq i \leq n \text{ とするとき、 } r \text{ 内のどの単項式についても、 } \\ &x_i \text{ と } y_i \text{ がともに現れることはない} \end{aligned} \right. \right\} \]

と定める。任意の元 \(p \in R\) に対して、\(p = h_1 g_1 + \cdots + h_n g_n + r\) となる \(R\) の元 \(h_1, \ldots, h_n\)\(R'\) の元 \(r\) が存在することを示せ。

(3) \(g_1, \ldots, g_n\) で生成される \(R\) のイデアルを \(I\) で表す。ker \(\varphi = I\) を示し、\(L\) が剰余環 \(R/I\) と同型であることを示せ。

Kai

(1)

以下の二つを言えばよい。

  • \(\varphi^{-1}(J)\) は加法について部分群である。\(J\)も加法について\(L\)の部分群であるので明らか。

  • \(r \in \varphi^{-1}(J),x \in R \Rightarrow rx \in \varphi^{-1}(J)\)\(\varphi(rx)=\varphi(r)\varphi(x)\in J \quad (\because \varphi(r) \in J , \varphi(x) \in L)\) より従う。

(2)

自明

(3)

\(I \subset \mathrm{Ker}\varphi\) は代入すれば明らか。

\(\mathrm{Ker}\varphi \subset I\) は、(2)より \(r\neq 0\) ならば \(\varphi(p) \neq 0\) が言えればよい。

説明が難しいが、\(x_i\)\(x_j,y_j\) が無関係だということを言えばok? (自信なし)

後半は準同型定理より、

\[ \begin{aligned} & R/\mathrm{Ker}{\varphi} \cong \mathrm{Im}{\varphi} \\ \Rightarrow & R/I \cong L \end{aligned} \]

Knowledge

斜体ならば可換性を課さないが、体ならば可換性がある。

体の定義は以下の通り。


空でない集合\(K\)が体(field)であるとは,

  • \(K\) が単位元を持つ可換環
  • \(K\)\(0\) でない任意の元が乗法逆元を持つ,すなわち,\(a \neq 0\) に対し,\(aa^{-1}=1\) となるものが存在する。言い換えると \(K^{\times}=K\setminus\{0\}\) であるの2つが成り立つことをいう。ただし,\(K^{\times}\)とは\(K\)の乗法群を指す。

この時、右イデアルと左イデアルは同じになる。

イデアルの定義は以下の通り。


\(R\) を環とし,\(I \subset R\) とする。\(I\) について,

  • \(I\) は加法について部分群である
  • \(r \in R, x \in I \Rightarrow rx \in I\)
  • \(r \in R, x \in I \Rightarrow xr \in I\) ...(中略)...,1,2,3 が成り立つとき,両側イデアル (two-sided ideal) という。

\(S (\subset R)\) から生成された有限生成イデアルの一般形は以下の通り。

\[ \begin{aligned} (S)=\{r_1s_1+\cdots r_ns_n | r_k \in R, s_k \in S, n \geq 1 \} \end{aligned} \]

群の準同型定理の主張は以下の通り。

群準同型 \(f:G_1 \to G_2\) に対して、写像 \(F:G_1/\mathrm{Ker}f \to \mathrm{Im}f\) は群準同型であり、特に、\(G_1/\mathrm{Ker}f \cong \mathrm{Im}f\) である。