東京大学 情報理工学研究科 数理情報学 2017年度 第5問
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hari64boli64
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頂点集合 \(V = \{v_1, v_2, \ldots, v_n\}\) と枝集合 \(E\) からなる連結無向グラフ \(G = (V, E)\) を考える。
頂点 \(v_i\) に接続する枝の本数を \(d_i\) と書く。
ただし、\(G\) は自己閉路や多重枝は無いものとする。\(n \times n\) 行列 \(A = (a_{ij}), L = (l_{ij})\) を
\[
a_{ij} = \begin{cases}
1 & \text{($ \{v_i, v_j\} \in E$ のとき)}, \\
0 & \text{(それ以外のとき)}
\end{cases},
\quad
l_{ij} = \begin{cases}
-1 & \text{($ \{v_i, v_j\} \in E$ のとき)}, \\
d_i & (i = j\text{ のとき}), \\
0 & \text{(それ以外のとき)}
\end{cases}
\]
と定義する。以下の設問に答えよ。
(1) 行列 \(A\) のべき乗 \(A^k\) の \((i, j)\) 成分は何を表わすか。
(2) 2 頂点間の距離をその 2 頂点を結ぶ経路の最小枝数で定める。任意の 2 頂点間の距離は、\(A\) の相異なる固有値の個数より小さいことを示せ。
(3) 行列 \(L\) の非零固有値に対応する固有ベクトル \(u = (u_i)\) について、\(\sum_{i=1}^{n} u_i = 0\) となることを示せ。
(4) 行列 \(L\) の固有値はすべて非負実数であることを示せ。
(5) 関数 \(V : \mathbb{R}^n \rightarrow \mathbb{R}\) を
\[
V(x) = \frac{1}{2} \sum_{1 \leq i < j \leq n} a_{ij}(x_i - x_j)^2 \quad (x \in \mathbb{R}^n)
\]
と定義し、\(x(t) = (x_1(t), x_2(t), \ldots, x_n(t))\) に関する微分方程式系
\[
\frac{\text{d}x_i(t)}{\text{d}t} = - \frac{\partial V(x)}{\partial x_i} \bigg|_{x = x(t)} \quad (i = 1, 2, \ldots, n)
\]
を考える。初期値 \(x(0) = (c_1, c_2, \ldots, c_n)\) に対する解 \(x(t)\) の極限 \(\overline{x} = \lim_{t \to \infty} x(t)\) を求め、収束の速さについて論じよ。
Kai
(1)
頂点 \(i\) から頂点 \(j\) へ長さが \(k\) の経路の数
(2)
ケーリーハミルトンの定理より、背理法
(3)
\[
\begin{aligned}
& \sum_{j=1}^{n}{0}=0 \\
\Leftrightarrow & \sum_{j=1}^{n}{0u_j}=0 \\
\Leftrightarrow & \sum_{j=1}^{n}\left(\sum_{i=1}^{n}{L_{ij}} \right)u_j=0 \\
\Leftrightarrow & \sum_{i=1}^{n}\sum_{j=1}^{n}{L_{ij}u_j}=0 \\
\Leftrightarrow & \sum_{i=1}^{n}{(Lu)_i}=0 \\
\Leftrightarrow & \sum_{i=1}^{n}{\lambda u_i}=0 \\
\Leftrightarrow & \sum_{i=1}^{n}{u_i}=0 \\
\end{aligned}
\]
(4)
\[
\begin{aligned}
\boldsymbol{x}^T L \boldsymbol{x} & =\sum_{i,j}x_i L_{ij} x_j \\
& =\sum_{i,j}x_i (D_{ij}-A_{ij}) x_j \\
& =\sum_{i}x_i^2 D_{ii}-\sum_{i<j}x_i x_j A_{ij}- \sum_{i>j}x_i x_j A_{ij} \\
& =\sum_{i}\left(x_i^2 \sum_{j}{A_{ij}}\right)-\sum_{i<j}x_i x_j A_{ij}- \sum_{i<j}x_j x_i A_{ji} \\
& =\sum_{i<j}(x_i^2 -2x_i x_j +x_j^2) A_{ij} \\
& =\sum_{i<j}a_{ij}(x_i -x_j)^2 \\
& \geq 0
\end{aligned}
\]
(5)
\(\frac{\text{d}\boldsymbol{x}}{\text{d}t}=-L\boldsymbol{x}\) より、\(\boldsymbol{x}(t)=e^{-Lt}\boldsymbol{x}(0)\) となる。
\(L\) の固有値が全て非負実数の為、\(\boldsymbol{\overline{x}}=\lim_{t \to \infty}\boldsymbol{x}(t) = \boldsymbol{0}\) となる。
また、収束の速さは \(L\) の固有値に依存する。