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東京大学 情報理工学研究科 数理情報学 2017年度 第3問

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hari64boli64

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定数 \(p\)\(0 < p < 1\) の範囲で定める。 分布関数 \(F_X : \mathbb{R} \rightarrow (0, 1)\) が逆関数 \(F_X^{-1}\) を持ち、\(\int_{0}^{1} |F_X^{-1}(u)| \, \text{d}u < \infty\) を満たすような任意の実数値確率変数 \(X\) に対して、

\[ R[X] = \frac{1}{1-p} \int_{p}^{1} F_X^{-1}(u) \, \text{d}u \]

と定義する。ここで、\(\mathbb{R}\) は実数全体の集合を表わし、\((0, 1) = \{x \mid 0 < x < 1\}\) である。 以下の設問に答えよ。

ただし、確率変数 \(X\) の期待値を \(E[X]\) で表わす。 また、事象 \(A\) に対して、\(A\) が起こる確率を \(\Pr(A)\) と書き、事象 \(A\) が起こるとき \(1\)、そうでないとき \(0\) となる確率変数を \(I_A\) と表わす。

(1) 分布関数が \(F_T(t) = \frac{1}{1 + e^{-t}}\) となる確率変数 \(T\) に対して、\(R[T]\) を求めよ。

(2) \(R[X]\) が定義されるような確率変数 \(X\) を考え、\(X \geq F_X^{-1}(p)\) となる事象を \(B\) と書く。このとき

\[ \Pr(B) = 1 - p, \quad R[X] = \frac{E[X \cdot I_B]}{1 - p} \]

となることを示せ。また、\(\Pr(A) = 1 - p\) を満たす任意の事象 \(A\) に対し、不等式

\[ E[X \cdot I_A] \leq E[X \cdot I_B] \]

が成り立つことを示せ。

(3) 独立とは限らない確率変数 \(X, Y\) に対し、\(R[X], R[Y], R[X + Y]\) のいずれもが定義されるならば、不等式

\[ R[X + Y] \leq R[X] + R[Y] \]

が成り立つことを示せ。

Kai

(1)

\[ \begin{aligned} R[T]=\frac{(1-p)\log(1-p)+p\log{p}}{p-1} \end{aligned} \]

(2)

確率密度関数を \(P\) とする。

\[ \begin{aligned} \mathrm{Pr}(B) & = \int_{x \in B} P(x) \ \text{d}x \\ & = \int P(x) \ \text{d}x - \int_{x \notin B} P(x) \ \text{d}x \\ & = 1 - \int_{x \notin B} P(x) \ \text{d}x \\ & = 1 - \int_{\int_0^x P(x) \ \text{d}x < p} P(x) \ \text{d}x \\ & = 1 - p \\ \end{aligned} \]

最後に、\(P(x) \geq 0\) から導かれる、範囲についての単調性を用いた(もう少し厳密なやり方があるかも)。

\[ \begin{aligned} R[X] & =\frac{1}{1-p}\int_p^1 F_X^{-1}(u) \ \text{d}u \\ & =\frac{1}{1-p}\int_{u \geq p} F_X^{-1}(u) \ \text{d}u \\ & =\frac{1}{1-p}\int_{F(x) \geq p} P(x)x \ \text{d}x \; \left(\because F_X(x)=u, \frac{\text{d}u}{\text{d}x}=\frac{\text{d}F_X}{\text{d}x}=P(x) \right) \\ & =\frac{1}{1-p}\int P(x) (xI_B) \ \text{d}x \\ \end{aligned} \]

\(x \in B \setminus A \Rightarrow x \geq F_X^{-1}(p), x \in A \setminus B \Rightarrow x < F_X^{-1}(p)\) より、

\[ \begin{aligned} \int_{x\in B \setminus A} xP(x)\ \text{d}x & \leq F_X^{-1}(p)\mathrm{Pr}(B \setminus A) \\ & = F_X^{-1}(p)\mathrm{Pr}(A \setminus B) \; (\because \mathrm{Pr}(A)=\mathrm{Pr}(B)=1-p) \\ & \leq \int_{x\in A \setminus B} xP(x)\ \text{d}x \end{aligned} \]

ただし、一つ目の不等号における等号は \(\mathrm{B \setminus A}=0\) の時に成立する (\(A=B\) とは、厳密には言えない)。

(3)

\(A=(X+Y \geq F_{X+Y}^{-1}(p)),B=(X \geq F_X^{-1}(p)),C=(Y \geq F_Y^{-1}(p))\) とする。

\(\mathrm{Pr}(A)=\mathrm{Pr}(B)=1-p\) であることから、(2) 後半より、\(\mathrm{E}[X \cdot I_A] \leq \mathrm{E}[X \cdot I_B]\) である。

同様に、\(\mathrm{E}[Y \cdot I_A] \leq \mathrm{E}[Y \cdot I_C]\) である。

よって、

\[ \begin{aligned} & \mathrm{E}[X \cdot I_A]+ \mathrm{E}[Y \cdot I_A] \leq \mathrm{E}[X \cdot I_B] + \mathrm{E}[Y \cdot I_C] \\ \Leftrightarrow & \mathrm{E}\left[(X+Y) \cdot I_{X+Y \geq F_{X+Y}^{-1}(p)} \right] \leq E[X \cdot I_{X \geq F_X^{-1}(p)}] + E[Y \cdot I_{Y \geq F_Y^{-1}(p)}] \\ \Leftrightarrow & \mathrm{R}[X+Y] \leq \mathrm{R}[X] + \mathrm{R}[Y] \end{aligned} \]