東京大学 情報理工学研究科 2023年度 数学 第2問
Author
Miyake
Description
\(t\) を実数の独立変数、\(x(t)\) と \(y(t)\) を実数値関数として、以下の問いに答えよ。
(1) 常微分方程式
\[
\frac{d^2x}{dt^2} + 2\frac{dx}{dt} + x = \cos(t)
\]
の \(t \to -\infty\) で有界である解を全て求めよ。
(2) 常微分方程式
\[
\begin{aligned}
\frac{d^2x}{dt^2} + 2\frac{dx}{dt} + x - y &= \cos(t) \\
\frac{d^2y}{dt^2} + 2\frac{dy}{dt} + y - x &= 0
\end{aligned}
\]
の \(t \to -\infty\) で有界である解 \(x(t)\) と \(y(t)\) をすべて求めよ。
(3) 適切な変数変換によって常微分方程式
\[
e^{-t}x^2 - 2\frac{dx}{dt} + x = 0
\]
を線形な常微分方程式に変換し、\(x(0) = \frac{1}{2}\) となる解 \(x(t)\) を求めよ。
Kai
(1)
まず、
\[
\begin{aligned}
\frac{d^2x}{dt^2} + 2 \frac{dx}{dt} + x = 0
\end{aligned}
\]
に \(x=e^{\lambda t}\) ( \(\lambda\) は \(t\) によらない定数)を代入すると、
\[
\begin{aligned}
&\lambda^2 + 2 \lambda + 1 = 0
\\
&\therefore \ \
\lambda = -1
\ \ \ \ \text{ (重解) }
\end{aligned}
\]
となるので、この微分方程式の一般解は
\[
\begin{aligned}
x = Ce^{-x} + Dxe^{-x}
\ \ \ \ \ \ \ \ ( C, D \text{ は積分定数 } )
\end{aligned}
\]
である。
次に、与えられた微分方程式に
\(x = A \sin (t) + B \cos (t)\) ( \(A,B\) は \(t\) によらない定数)を代入すると、
\[
\begin{aligned}
A = \frac{1}{2}, \ B = 0
\end{aligned}
\]
を得るので、
\[
\begin{aligned}
x = \frac{1}{2} \sin (t)
\end{aligned}
\]
は特殊解である。
以上より、与えられた微分方程式の一般解は
\[
\begin{aligned}
x = Ce^{-x} + Dxe^{-x} + \frac{1}{2} \sin (t)
\ \ \ \ \ \ \ \ ( C, D \text{ は積分定数 } )
\end{aligned}
\]
である。よって、 \(t \to - \infty\) で有界である解は
\[
\begin{aligned}
x = \frac{1}{2} \sin (t)
\end{aligned}
\]
である。
(2)
\(z=x+y\) とおくと、
\[
\begin{aligned}
\frac{d^2z}{dt^2} + 2 \frac{dz}{dt} = \cos (t)
\end{aligned}
\]
が成り立ち、 (1) と同じように考えて、これの一般解は
\[
\begin{aligned}
z = A e^{-2t} + B + \frac{2}{5} \sin (t) - \frac{1}{5} \cos (t)
\ \ \ \ \ \ \ \ ( A, B \text{ は積分定数 } )
\end{aligned}
\]
であることがわかる。
\(w=x-y\) とおくと、
\[
\begin{aligned}
\frac{d^2w}{dt^2} + 2 \frac{dw}{dt} + 2w = \cos (t)
\end{aligned}
\]
が成り立ち、 (1) と同じように考えて、これの一般解は
\[
\begin{aligned}
w = C e^{-t} \sin (t) + D e^{-t} \cos (t)
+ \frac{2}{5} \sin (t) + \frac{1}{5} \cos (t)
\ \ \ \ \ \ \ \ ( C, D \text{ は積分定数 } )
\end{aligned}
\]
であることがわかる。
以上より、与えられた微分方程式の一般解は
\[
\begin{aligned}
x
&= \frac{z+w}{2}
\\
&= A e^{-2t} + B + C e^{-t} \sin (t) + D e^{-t} \cos (t)
+ \frac{2}{5} \sin (t)
, \\
y
&= \frac{z-w}{2}
\\
&= A e^{-2t} + B - C e^{-t} \sin (t) - D e^{-t} \cos (t)
- \frac{1}{5} \cos (t)
\\
&( A, B, C, D \text{ は積分定数 } )
\end{aligned}
\]
である。よって、 \(t \to - \infty\) で有界である解は
\[
\begin{aligned}
x
&= B + \frac{2}{5} \sin (t)
, \\
y
&= B - \frac{1}{5} \cos (t)
\\
&( B \text{ は任意定数 } )
\end{aligned}
\]
である。
(3)
与えられた微分方程式はベルヌーイ方程式なので、
\(y = 1/x\) とおくことで、線形な微分方程式が得られる:
\[
\begin{aligned}
\frac{dy}{dt}
&= - \frac{1}{x^2} \frac{dx}{dt}
\\
&= - \frac{1}{x^2} \frac{1}{2} \left( e^{-t} x^2 + x \right)
\\
&= - \frac{1}{2} \left( e^{-t} + \frac{1}{x} \right)
\\
&= - \frac{1}{2} \left( e^{-t} + y \right)
\\
\therefore \ \
2 \frac{dy}{dt} + y &= - e^{-t}
.
\end{aligned}
\]
この方程式に \(y=f(t)e^{-t/2}\) を代入して整理すると、
\[
\begin{aligned}
\frac{df}{dt} &= - \frac{1}{2} e^{-\frac{1}{2}t}
\\
\therefore \ \
f(t) &= e^{-\frac{1}{2}t} + C
\ \ \ \ \ \ \ \ ( C \text{ は積分定数 } )
\end{aligned}
\]
となるので、一般解
\[
\begin{aligned}
y(t)
&= \left( e^{-\frac{1}{2}t} + C \right) e^{-\frac{1}{2}t}
\\
&= e^{-t} + C e^{-\frac{1}{2}t}
\ \ \ \ \ \ \ \ ( C \text{ は積分定数 } )
\\
\therefore \ \
x(t)
&= \frac{1}{e^{-t} + C e^{-\frac{1}{2}t}}
\\
&= \frac{e^t}{1 + C e^{\frac{1}{2}t}}
\ \ \ \ \ \ \ \ ( C \text{ は積分定数 } )
\end{aligned}
\]
を得る。さらに、 \(x(0)=1/2\) を使うと、
\[
\begin{aligned}
\frac{1}{1 + C} &= \frac{1}{2}
\\
\therefore \ \
C &= 1
\end{aligned}
\]
となるので、求める解は
\[
\begin{aligned}
x(t)
&= \frac{e^t}{1 + e^{\frac{1}{2}t}}
\end{aligned}
\]
である。