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東京大学 情報理工学研究科 2022年度 数学 第1問

Author

Miyake, etsurin

Description

以下の \(x,y,z\in \mathbb{R}\) 関する複数の条件を考える.

\[ \left\{ \begin{array}{llll} 0 < z-xy <1 \\ 0 < z-(x+y)^2 <-xy \end{array} \right. \]

\(\Omega\) を上記の条件を満たす \(z\) が一つでも存在するような点 \((x,y)\) の集合とする.\(\Omega\) は三次元デカルト座標系において上記の条件を満たすような点 \((x,y,z)\) の集合 \(xy\) 平面上に正射影した図形とも解釈できる.以下の問いに答えよ.

(1)、\(\Omega\)\(x\)\(y\) に関する不等式で表現せよ.

(2)、集合 \(\Omega\)\(xy\) 平面上に図示せよ.図形の境界が \(x\) 軸, \(y\) 軸と交わる場合は,その交点の座標も明記せよ.

(3)、集合 \(\Omega\) の境界の湾曲した区間は、単位円の複数の円弧をある線形変換 \(\mathbf{X}\) で変換した図形になっている.このような \(\mathbf{X}\) を一つ求めよ.ただし,単位円上の点 \((1,0)\) は、湾曲した区間の最も曲率の高い点に変換されなければならない.

(4)、(3)で求めた \(\mathbf{X}\) の行列式を求めよ.

(5)、集合 \(\Omega\) の面積を求めよ.ただし、図形を線形変換した場合の面積変化率は、その線形変換の行列式の絶対値に等しいことを用いてもよい.

Kai

(1)

与えられた2つの不等式は、次のように変形できる:

\[ \begin{aligned} xy &\lt z \lt xy+1 \\ x^2+y^2+2xy &\lt z \lt x^2+y^2+xy \end{aligned} \]

任意の \(x,y\) について1つ目の不等式を満たす \(z\) が存在する。

2つ目の不等式を満たす \(z\) が存在する条件は \(xy \lt 0\) である。

上の連立不等式を満たす \(z\) が存在するためには、

\[ \begin{aligned} xy &\lt x^2+y^2+xy \\ x^2+y^2+2xy &\lt xy+1 \end{aligned} \]

も必要であるが、前者は \((x,y) \neq (0,0)\) を意味し、

後者は \(x^2+y^2+xy \lt 1\) を意味する。

まとめると、求める不等式は

\[ \begin{aligned} xy \lt 0 , \ \ x^2+y^2+xy \lt 1 \end{aligned} \]

である。

(2)

\(xy \lt 0\) は、xy平面の第2象限と第4象限を表す。

\(x^2+y^2+xy \lt 1\) は、原点を中心とし、 直線 \(y=-x\) 上に長軸があり、直線 \(y=x\) 上に短軸があり、 長径が \(\sqrt{2}\) であり、短径が \(\sqrt{2/3}\) であるような楕円である。 なぜなら、

\[ \begin{aligned} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} &= \frac{1}{\sqrt{2}} \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ -1 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x' \\ y' \end{pmatrix} \end{aligned} \]

とすると、

\[ \begin{aligned} x^2 + y^2 + xy &= \frac{1}{2} x'^2 + \frac{3}{2} y'^2 \\ &= \frac{x'^2}{2} + \frac{y'^2}{\frac{2}{3}} \end{aligned} \]

となるからである。

\(\Omega\) の境界のうち、

x 軸上にあるのは \((-1,0)\)\((1,0)\) を結ぶ線分であり、

y 軸上にあるのは \((0,-1)\)\((0,1)\) を結ぶ線分である。

(3)

(2) で考えた \((x,y)\)\((x',y')\) の対応に加えて、

\[ \begin{aligned} x' = \sqrt{2} x'' , \ \ y' = \sqrt{\frac{2}{3}} y'' \end{aligned} \]

を考えると、

\[ \begin{aligned} x^2 + y^2 + xy &= \frac{x'^2}{2} + \frac{y'^2}{\frac{2}{3}} \\ &= x''^2 + y''^2 \end{aligned} \]

となる。 これは、楕円 \(x^2+y^2+xy=1\) の最も曲率の高い点(の1つ) \((x,y)=(1/\sqrt{3}, -1/\sqrt{3})\) と 単位円 \(x''^2+y''^2=1\) 上の点 \((x'',y'')=(1,0)\) を対応付ける。 よって、求める線形変換行列 \(X\) は、

\[ \begin{aligned} X &= \frac{1}{\sqrt{2}} \begin{pmatrix} 1 & 1 \\ -1 & 1 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \sqrt{2} & 0 \\ 0 & \sqrt{\frac{2}{3}} \end{pmatrix} \\ &= \begin{pmatrix} 1 & \frac{1}{\sqrt{3}} \\ -1 & \frac{1}{\sqrt{3}} \end{pmatrix} \end{aligned} \]

とすればよい。

(4)

\[ \begin{aligned} \det X = \frac{2}{\sqrt{3}} \end{aligned} \]

(5)

\[ \begin{aligned} X^{-1} &= \frac{1}{2} \begin{pmatrix} 1 & -1 \\ \sqrt{3} & \sqrt{3} \end{pmatrix} \end{aligned} \]

なので、 \((x,y)=(1,0)\) に対応するのは \((x'',y'')=(1/2, \sqrt{3}/2)\) である。

つまり、 \(\Omega\) に対応するのは単位円の内部の \(2/3\) である。

よって、 \(\Omega\) の面積は

\[ \begin{aligned} \pi \cdot \frac{2}{3} \cdot \frac{2}{\sqrt{3}} = \frac{4 \pi}{3 \sqrt{3}} \end{aligned} \]