東京大学 情報理工学系研究科 電子情報学専攻 2019年度 専門 第5問
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信号 \(f(t)\) が与えられたとき, \(f(t)\) を時間間隔 \(t_s\) で標本化することを考える。時間間隔 \(t_s\) にデルタ関数 \(\delta(t)\) が並ぶ信号を単位インパルス列 \(\delta_s(t)\) と呼ぶ。すなわち,
この時, \(f(t)\) の標本化された信号 \(f_s(t)\) は, \(f_s(t) = f(t)\cdot\delta_s(t)\) と表される。
以下の問いに答えよ。
(1) \(\delta_s(t)\) を周期 \(t_s\) の周期信号と考え, フーリエ級数展開せよ。
(2) \(\delta_s(t)\) のフーリエ変換 \(\Delta_s(\omega)\) を求めよ。ただし \(\omega_s = \frac{2\pi}{t_s}\) とせよ。
(3) \(f(t)\) 並びに \(f_s(t)\) のフーリエ変換をそれぞれ \(F(\omega)\) と \(F_s(\omega)\) とする。 \(F_s(\omega)\) を \(F(\omega)\) を用いて表せ。
(4) 折り返し歪 (エイリアシング) の定義を述べよ。また, (3) の結果においてどのような現象となるのか説明せよ。さらに, 折り返し歪が起きないために \(F(\omega)\) が満足すべき条件を \(\omega_s\) を用いて述べよ。
必要に応じて以下を使ってよい。
周期 \(T\) の信号 \(x(t)\) のフーリエ級数展開:
信号 \(x\) のフーリエ変換 \(X(\omega)\) :
信号 \(x(t) = 1\) のフーリエ変換は \(2\pi\delta(\omega)\) .
\(x_1(t)\) と \(x_2(t)\) の畳み込み:
信号 \(x_1(t)\) と \(x_2(t)\) ののフーリエ変換をそれぞれ \(X_1(\omega)\) と \(X_2(\omega)\) とすると, \(x_1(t)*x_2(t)\) のフーリエ変換は , \(X_1(\omega) \cdot X_2(\omega)\).
同様に \(x_1(t) \cdot x_2(t)\) のフーリエ変換は \(\frac{1}{2\pi}X_1(\omega) * X_2(\omega)\).
Kai
(1)
\(\delta_{s}(t) = \sum_{i = -\infty}^{\infty}\delta(t - it_s)\) を \(1\) 周期分 \((-\frac{t_s}{2} \le t < \frac{t_s}{2})\) 切り出して、係数を求める。問題文にもあるように係数を求める式は次の通り。
この場合、\(T = t_s ,f(t) = \delta(t)\) なので、これを代入して
よって、係数は等しく \(\frac{1}{t_s}\) であり、フーリエ級数展開の結果は
(2)
(1) の結果をフーリエ変換の公式に代入する。ただし、積分と和の交換、フーリエ変換の公式 \((1 \rightarrow 2\pi \delta(\omega),f(t) \rightarrow e^{j\omega_0 t} \rightarrow F(\omega - \omega_0))\)
(3)
\(f_s(t) = f(t) \cdot \delta_s(t)\) の両辺をフーリエ変換する。
下の計算では和と積分の入れ替えや、(2) で得た結論や、畳込みの定義式やフーリエ変換 を使った。
(4)
- エイリアシングの定義
エイリアシングとは、サンプリングに従って信号の一部が本来の周波数とは異なる周波 数の成分として混入してしまい、波形に歪みが生じることを言う。
- (3) においてどのような減少となるの
サンプリング周波数 \(\omega_s\) に対して周波数 \(\omega,\omega \pm \omega_s ,\omega \pm 2\omega ,\dotsb\) の成分がすべて \(F_s(\omega)\) 上の同じ点に重なってしまうため、サンプリング後の信号 \(F_s(\omega)\) を見たときに \(F(\omega)\) のど この周波数由来なのか判別不可能になる。
- \(F(\omega)\) が満足すべき条件 \(\omega > \frac{\omega_s}{2}\) において \(F(\omega) = 0\) を満たすこと。