東北大学 理学研究科 数学専攻 2023年度 共通問題 [1]
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\(V = M_3(\mathbb{R})\) を3次実正方行列全体のなす実ベクトル空間とし、\(V\) の部分空間 \(W\) を
\[
W = \{A \in V \mid A^T = -A\}
\]
と定める。ただし、\(A^T\) は行列 \(A\) の転置行列を表す。以下の問いに答えよ。
(1) \(W\) の基底を含むような \(V\) の基底を \(1\) 組求めよ。
(2) \(R \in M_3(\mathbb{R})\) を固定して、線形写像 \(f: V \rightarrow V\) を \(f(x) = R^TXR\) と定める。このとき、\(f(W) \subset W\) であることを示せ。
(3) \(R = \begin{pmatrix} -1 & 3 & 2 \\ 2 & 0 & -1 \\ -1 & 1 & 2 \end{pmatrix}\) とする。この \(R\) に対して (2) で定めた写像 \(f\) の \(W\) への制限を \(g\) とする。このとき、(1)で求めた \(W\) の基底に関する \(g\) の表現行列 \(S\) を求めよ。
(4) (3)で求めた行列 \(S\) の固有値を全て求めよ。
Kai
(1)
\(W\) は3次元であり、例えば、
\[
\begin{aligned}
A_1 = \begin{pmatrix} 0 & 1 & 0 \\ -1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 \end{pmatrix}
, \
A_2 = \begin{pmatrix} 0 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 0 \\ -1 & 0 & 0 \end{pmatrix}
, \
A_3 = \begin{pmatrix} 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \\ 0 & -1 & 0 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
は \(W\) の基底である。 \(V\) は9次元であり、例えば、上の \(A_1, A_2, A_3\) と
\[
\begin{aligned}
\begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 \end{pmatrix}
, \
\begin{pmatrix} 0 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 \end{pmatrix}
, \
\begin{pmatrix} 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}
, \
\begin{pmatrix} 0 & 1 & 0 \\ 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 \end{pmatrix}
, \
\begin{pmatrix} 0 & 0 & 1 \\ 0 & 0 & 0 \\ 1 & 0 & 0 \end{pmatrix}
, \
\begin{pmatrix} 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \\ 0 & 1 & 0 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
を合わせて \(V\) の基底となる。
(2)
任意の \(A \in W\) について \(A^T = -A\) であるから、
\[
\begin{aligned}
f(A)^T
&= (R^T A R)^T
\\
&= R^T A^T R
\\
&= - R^T A R
\\
&= - f(A)
\\
\therefore \ \
f(A) &\in W
\end{aligned}
\]
がわかり、これは \(f(W) \subset W\) を意味する。
(3)
\[
\begin{aligned}
g(A_1) &= -6A_1 - 3A_2 - 3A_3
\\
g(A_2) &= 2A_1 + 4A_3
\\
g(A_3) &= 2A_1 + 3A_2 + A_3
\end{aligned}
\]
であるから、
\[
\begin{aligned}
S &= \begin{pmatrix} -6 & 2 & 2 \\ -3 & 0 & 3 \\ -3 & 4 & 1 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
がわかる。
(4)
\[
\begin{aligned}
-3, -1 \pm \sqrt{13}
\end{aligned}
\]