Osaka-University
大阪大学 情報科学研究科 情報基礎数学専攻 2021年度 数学4-5
Author
Miyake
Description
Kai
4.
(1)
\(A\) の列ベクトル
\[
\begin{aligned}
\boldsymbol{a}_1 = \begin{pmatrix} -5 \\ -2 \end{pmatrix}
,
\boldsymbol{a}_2 = \begin{pmatrix} 3a-3b+14 \\ a-b+4 \end{pmatrix}
,
\boldsymbol{a}_3 = \begin{pmatrix} 15 \\ 6 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
を見ると、 \(\boldsymbol{a}_3 = -3 \boldsymbol{a}_1\) であるが、
\(a,b\) が何であっても
\(\boldsymbol{a}_2\) は \(\boldsymbol{a}_1\) の実数倍で表せない。
したがって、 \(A\) の像は2次元であり、核 \(V\) は1次元である。
核 \(V\) を求めるために、次のようにおく:
\[
\begin{aligned}
\begin{pmatrix} -5 & 3a-3b+14 & 15 \\ -2 & a-b+4 & 6 \end{pmatrix}
\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix} 0 \\ 0 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
これが成り立つのは \(-x+3z=0,y=0\) のときであり、
したがって、 \(V\) の基底はたとえば、
\[
\begin{aligned}
\boldsymbol{v} = \begin{pmatrix} 3 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
である。
(2)
\(B\) の列ベクトルを次のように書く:
\[
\begin{aligned}
\boldsymbol{b}_1 = \begin{pmatrix} 1 \\ 2 \\ 3 \end{pmatrix}
,
\boldsymbol{b}_2
= \begin{pmatrix} -3a-b \\ 3a+b \\ 3a+b \end{pmatrix}
= (3a+b) \boldsymbol{b}'_2
\end{aligned}
\]
ここで、
\[
\begin{aligned}
\boldsymbol{b}'_2
= \begin{pmatrix} -1 \\ 1 \\ 1 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
であり、 \(\boldsymbol{b}_1, \boldsymbol{b}'_2\) は1次独立である。
\(3a+b=0\) のときは、 \(W\) は1次元であり、
\(\boldsymbol{b}_1\) が基底になる。
\(3a+b \neq 0\) のときは、 \(W\) は2次元であり、
\(\boldsymbol{b}_1, \boldsymbol{b}'_2\) が基底になる。
(3)
\(\boldsymbol{v}\) は (1) の通りとし、
\(\boldsymbol{b}_1, \boldsymbol{b}'_2\) は (2) の通りとする。
\(\boldsymbol{v}, \boldsymbol{b}_1\) は1次独立なので、
\(3a+b=0\) のときは、 \(V+W\) は \(V\) と \(W\) の直和になる。
\(\boldsymbol{v} = \boldsymbol{b}_1 - 2 \boldsymbol{b}'_2\)
なので、
\(3a+b \neq 0\) のときは、 \(V+W\) は \(V\) と \(W\) の直和にならない。
したがって、求める条件は \(3a+b=0\) である。
5.
\(A\) の固有値を \(\lambda\) とすると、
\[
\begin{aligned}
0
&= \det \begin{pmatrix} -1 - \lambda & 1 & 0 \\ 4 & -1 - \lambda & 0 \\ -3 & 2 & 1 - \lambda \end{pmatrix}
\\
&= - (\lambda + 3)(\lambda - 1)^2
\\
\therefore \ \
\lambda &= -3, 1
\end{aligned}
\]
を得る。
固有値 \(-3\) に対応する固有ベクトルを求めるため、
\[
\begin{aligned}
\begin{pmatrix} -1+3 & 1 & 0 \\ 4 & -1+3 & 0 \\ -3 & 2 & 1+3 \end{pmatrix}
\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
とおくと、 \(2x+y=0, -3x+2y+4z=0\) なので、
\[
\begin{aligned}
\boldsymbol{v}_1 = \begin{pmatrix} 4 \\ -8 \\ 7 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
は固有値 \(-3\) に属する固有ベクトルである。
固有値 \(1\) に対応する固有ベクトルを求めるため、
\[
\begin{aligned}
\begin{pmatrix} -1-1 & 1 & 0 \\ 4 & -1-1 & 0 \\ -3 & 2 & 1-1 \end{pmatrix}
\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
とおくと、 \(-2x+y=0, -3x+2y=0\) したがって \(x=y=0\) なので、
\[
\begin{aligned}
\boldsymbol{v}_2 = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
は固有値 \(1\) に属する固有ベクトルである。
固有値 \(1\) に属する \(\boldsymbol{v}_2\) と1次独立な固有ベクトルは存在しない。
固有値 \(1\) に属する広義固有空間(一般固有空間)の \(\boldsymbol{v}_2\) と1次独立なベクトルを求めるため、
\[
\begin{aligned}
\begin{pmatrix} -1-1 & 1 & 0 \\ 4 & -1-1 & 0 \\ -3 & 2 & 1-1 \end{pmatrix}
\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 1 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
とおくと、 \(-2x+y=0, -3x+2y=1\) したがって \(x=1, y=2\) なので、
\[
\begin{aligned}
\boldsymbol{v}_3 = \begin{pmatrix} 1 \\ 2 \\ 0 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
は固有値 \(1\) に属する広義固有空間(一般固有空間)の \(\boldsymbol{v}_2\) と1次独立なベクトルであり、
\[
\begin{aligned}
A \boldsymbol{v}_3 = \boldsymbol{v}_2 + \boldsymbol{v}_3
\end{aligned}
\]
を満たす。
以上より、
\(\boldsymbol{v}_1, \boldsymbol{v}_2, \boldsymbol{v}_3\)
は \(\mathbb{R}^3\) の基底であり、
\[
\begin{aligned}
A \boldsymbol{v}_1 = -3 \boldsymbol{v}_1
, \ \
A \boldsymbol{v}_2 = \boldsymbol{v}_2
, \ \
A \boldsymbol{v}_3 = \boldsymbol{v}_2 + \boldsymbol{v}_3
\end{aligned}
\]
を満たす。
したがって、任意の \(\boldsymbol{v} \in \mathbb{R}^3\) に対して
\[
\begin{aligned}
\boldsymbol{v}
= a \boldsymbol{v}_1 + b \boldsymbol{v}_2 + c \boldsymbol{v}_3
\end{aligned}
\]
であるような \(a,b,c \in \mathbb{R}\) が一意的に存在し、
\[
\begin{aligned}
A \boldsymbol{v}
&= -3a \boldsymbol{v}_1 + (b+c) \boldsymbol{v}_2 + c \boldsymbol{v}_3
,\\
A^2 \boldsymbol{v}
&= 9a \boldsymbol{v}_1 + (b+2c) \boldsymbol{v}_2 + c \boldsymbol{v}_3
\end{aligned}
\]
が成り立つ。
\(a \ne 0\) かつ \(b \ne 0\) かつ \(c \ne 0\) のときは、
\(\boldsymbol{v}, A \boldsymbol{v}, A^2 \boldsymbol{v}\)
は1次独立なので、
このような \(\boldsymbol{v}\) は求める2次元部分空間に含まれない。
さらに、
\[
\begin{aligned}
A (a \boldsymbol{v}_1 + b \boldsymbol{v}_2 )
&= -3a \boldsymbol{v}_1 + b \boldsymbol{v}_2
,\\
A (a \boldsymbol{v}_2 + c \boldsymbol{v}_3 )
&= -3a \boldsymbol{v}_1 + c \boldsymbol{v}_2 + c \boldsymbol{v}_3
,\\
A (b \boldsymbol{v}_2 + c \boldsymbol{v}_3 )
&= (b+c) \boldsymbol{v}_2 + c \boldsymbol{v}_3
\end{aligned}
\]
であるから、求める2次元部分空間は、
「 \(\boldsymbol{v}_1\) と \(\boldsymbol{v}_2\) によって張られる部分空間」
と
「 \(\boldsymbol{v}_2\) と \(\boldsymbol{v}_3\) によって張られる部分空間」
の2つであることがわかる。