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大阪大学 情報科学研究科 情報工学 2021年度 離散構造

Author

祭音Myyura

Description

非負の整数全体の集合を \(\mathbb{Z}_0\) と書く。 実数 \(x\) に対して、\(x\) を超えない最大の整数を \(\lfloor x \rfloor\) と書く。 任意の \(n \in \mathbb{Z}_0\) に対して、実区間 \([0, \infty)\) から \([0, \infty)\) への写像 (mapping) \(f_n\) を以下の漸化式 (recurrence relation) により定める。

\[ f_{n+1}(x) = x \lfloor f_n(x) \rfloor, \ f_0(x) = 1,\ x \in [0, \infty) \]

以下の各問に答えよ。

(1) 次の値をそれぞれ求めよ:\(f_1(1.5)\), \(f_2(2.5)\), \(f_3(3.5)\)

(2) 命題 (proposition)「ある \(n \in \mathbb{Z}_0\) が存在し \(f_n\) は単射 (injective) である」の真偽を判定せよ。その理由を述べよ。

(3) 命題「\(n \in \mathbb{Z_0}\) が正かつ偶数ならば \(f_n\) は全射 (surjective) である」の真偽を判定せよ。その理由を述べよ。

(4) \(\mathbb{Z}_0\) における以下の二項関係 (binary relation) を考える。

\[ R = \{(k,l) \in \mathbb{Z}_0 \times \mathbb{Z}_0 \mid k = f_n(h/2) \text{ かつ } l = f_m(h/2) \text{ を満たす } h,n,m \in \mathbb{Z}_0 \text{ が存在する}\} \]
  • (4-1) \(R\) が反射的 (reflexive) であるかを判定せよ。その理由を述べよ。
  • (4-2) \(R\) が反対称的 (antisymmetric) であるかを判定せよ。その理由を述べよ。

(5) 方程式

\[ \begin{align} f_2(x) = 171 \tag{i} \end{align} \]

を考える。以下の各問に答えよ。

  • (5-1) 非負の実数 \(x\) が方程式 (i) の解であると仮定する。ある実数 \(\epsilon \in [0,1)\) が存在し \(x=13+\epsilon\) が成り立つことを示せ。
  • (5-2) 方程式 (i) の解を一つ求めよ。

(6) 方程式

\[ \begin{align} f_3(x) = 171 \tag{ii} \end{align} \]

の解を一つ求めよ。

Kai

(1)

\[ f_1(1.5) = 1.5 \cdot \lfloor f_0(1.5) \rfloor = 1.5 \cdot \lfloor 1 \rfloor = 1.5 \]
\[ f_2(2.5) = 2.5 \cdot \lfloor f_1(2.5) \rfloor = 2.5 \cdot \lfloor 2.5 \rfloor = 5 \]
\[ f_3(3.5) = 3.5 \cdot \lfloor f_2(3.5) \rfloor = 3.5 \cdot \lfloor 3.5 \cdot \lfloor 3.5 \rfloor \rfloor = 35 \]

(2)

\(n = 1\) の場合、

\[ f_1(x) = x \lfloor f_0(x) \rfloor = x \cdot \lfloor 1 \rfloor = x \]

が単射であるので、命題は真である。

(3)

\(n = 2\) の場合(\(f_2(x) = x \lfloor x \rfloor\))を考える。

\(0 \leq x < 1\) のとき、\(f_2(x) = x \cdot 0 = 0\)

\(x \geq 1\) のとき、\(f_2(x) \geq 1\)

よって、\(f_2(x)\) は全射ではない。ゆえに、命題は偽である。

(4)

(4-1)

任意の \(k \in \mathbb{Z}_0\) に対して、(2) より、

\[ \begin{aligned} &m = n = 1 \\ &h = 2k \end{aligned} \]

とおくと、\(k = f_1(k)\) がわかるので、\(R\) が反射的 (reflexive) である。

(4-2)

二項関係 \(R\) の定義より、\(R\) は対称的であることはほぼ自明なので、反対称的ではない。

(5)

(5-1)

\[ \begin{aligned} f_2(x) = x \lfloor x \rfloor &= 171 \\ (13+\epsilon) \cdot \lfloor (13 + \epsilon) \rfloor &= 171 \\ 169 + 13 \epsilon &= 171 \\ \epsilon &= \frac{2}{13} \end{aligned} \]

(5-2)

(意味不明な設問)

(5-1) より、\(x = \frac{171}{13}\) は一つの解である。

(6)

\[ f_3(x) = x \lfloor x \lfloor x \rfloor \rfloor \leq x^3 \]
\[ 5 < \sqrt[3]{171} < 6 \]

なので、\(x = 5 + \epsilon, \ \epsilon \in [0, 1)\) と書くと、

\[ \begin{align} (5+\epsilon) \lfloor (5+\epsilon) \lfloor 5+\epsilon \rfloor \rfloor &= 171 \tag{iii} \\ (5+\epsilon) \lfloor 25 + 5 \epsilon \rfloor &= 171 \tag{iv} \end{align} \]

方程式 \((5+\epsilon)(25 + 5 \epsilon) = 171\) を解くと、\(\epsilon = 3 \sqrt \frac{19}{5} - 5 \approx 0.85\) を得る。

よって、\(\lfloor 25 + 5 \epsilon \rfloor = \lfloor 25 + 5 \times 0.85 \rfloor = 29\) を仮定し、方程式 (iv) を解くと、\(\epsilon = \frac{26}{29}\) を得る。

最終的に \(x = \frac{171}{29}\) を方程式 (ii) に代入して検証すると、\(x = \frac{171}{29}\) は方程式 (ii) の解であることがわかる。