名古屋大学 情報学研究科 数理情報学専攻 2017年8月実施 問題4 グラフ理論
Author
祭音Myyura
Description
頂点 (vertex) 集合 \(V\)、辺 (edge) 集合 \(E\) をもつ無向グラフ (undirected graph) \(G = (V, E)\) を考える。
- \(G\) を平面上に辺が交差することなく描画できるとき (non-crossing drawing exists)、そのように描画したものを平面グラフ (plane graph) と呼び、辺によって分割された領域のそれぞれを面 (face) と呼ぶ。平面グラフの外側の領域も面の一つである (外面 (outer face))。例えば図1は平面グラフであり \(f_1\) から \(f_5\) までの面がある。
- 頂点の列 \((v_1, v_2, \ldots, v_k, v_{k+1})\) が \(\{v_i, v_{i+1}\} \in E \ (i = 1, 2, \ldots, k), v_{k+1} = v_1\) であるとき、このような列のことを閉路 (cycle) という。図1の \((v_1, v_2, v_3, v_1)\) は閉路である。
- 木 (tree) とは閉路のない連結 (connected) グラフのことをいう。例えば、図2は木である。木は平面グラフでもある。
- \(n\) 頂点完全 (complete) グラフ \(K_n\) とは、\(|V| = n, E = \{\{u, v\} \mid u, v \in V \}\) を満たすようなグラフのことをいう。例えば図3のグラフは \(K_5\) である。
以上を踏まえた上で、以下の各問に答えよ。
(1) 図1, 図2のグラフのそれぞれの頂点数、辺数、面数を答えよ。
(2) 平面グラフにおいて、一つの面は一つの閉路と (一対一) 対応するか。する場合、証明を与えよ。しない場合、そのような例を一つ挙げよ。
(3) 連結な平面グラフにおいてはオイラーの公式 (Euler's formula) \(|V| - |E| + f = 2\) が成立する。ただし、\(f\) は面数である。これを利用し、平面グラフにおいては、\(|E| \le 3|V| - 6\) が成立することを示せ。(ヒント:どの面も3本以上の辺に囲まれている)
(4) \(K_n (n = 3, 4, 5, \ldots)\) は平面グラフであるかどうかを、根拠と共に述べよ。
(5) (3) で取り上げたオイラーの公式 \(|V| - |E| + f = 2\) を証明せよ。必要ならば、木においては \(|E| = |V| - 1\) が成立することを用いて良い。
Kai
(1)
- 図1: 頂点数 \(8\), 辺数 \(11\), 面数 \(5\)
- 図2: 頂点数 \(7\), 辺数 \(6\), 面数 \(1\)
(2)
平面グラフにおいて、一つの面は一つの閉路と(一対一)対応しない。例えば、以下のような平面グラフ(四角形)を考える:
閉路は1つ(\((v_1, v_2, v_3, v_4, v_1)\))ですが、面の2つ(内側の面と外側の面)あるので、一対一の対応は成立しない。
(3)
(ヒント:どの面も3本以上の辺に囲まれている)
外部領域も含め全ての領域が3本以上の辺に囲まれている。 そして、各辺は2つの領域を分けているから、各領域を囲む辺を全て数え上げると各辺を2度数えることになるので
が成り立つ。(i) とオイラーの公式から
即ち、
(4)
\(K_3\) と \(K_4\) は平面グラフ。(証明は略)
\(K_5\) は平面グラフではない。\(K_5\) は \(|E|=10\)、\(|V|=5\) なので、もし平面グラフの形に書けたとすると、(3) により
でなければならない。それは \(|E|=10\) に矛盾する。
\(K_n \ (n=6, 8, \ldots)\) は \(K_5\) を含むので、平面グラフではない。
(5)
辺数 \(|E|\) に関する数学的帰納法により証明する。
\(|E|\) が一番少ないのは \(G\) が木のときで \(|E|=|V|-1\) であり、面は外側のひとつだけなので \(f=1\)。 よって \(|V|-|E|+f = |V| - (|V|-1) + 1= 2\) となって成り立ちます。
\(G\) が木でないときは、\(G\) 内の閉路 \(C\) と、\(C\) 上の辺 \(e\) を \(1\) 本選んで
を考えます。\(G'\) は \(G\) の部分グラフゆえ平面グラフで、そのパラメータを \(|V'|\), \(|E'|\), \(f'\) とおくと
- 頂点は消していないので \(|V'|=|V|\)
- 辺は 1 本除去したので \(|E'|=|E|-1\)
- \(e\) の表側の 2 つの面が 1 つにつながったので \(f'=f-1\)
よって
ここで \(G'\) に帰納法の仮定を使いました。