名古屋大学 情報学研究科 情報システム学専攻 2022年8月実施 専門 問5
Author
祭音Myyura
Description
配列を利用してヒープを実現し,優先度付きキューとして使用することを考える. 取り扱うデータは整数であると仮定し,データの値そのものをヒープのキーとして使用する. ヒープは,最下層のみに節点の欠落を許す完全2分木として構成し,最下層の節点は左側から詰めて配置する. ヒープの根節点を節点 1,節点 i の左右の子をそれぞれ節点 2i, 節点 2i+1 と呼ぶ. 内部節点 i のキーの値は,その子 2i および 2i+1 のキーの値以上となっている必要があり,これをヒープ条件という.
十分大きなサイズを持つ配列 A の存在を仮定し,ヒープにおける節点 i のデータを配列要素 A[i] に格納する. また,配列 A の中に格納されているデータ数(ヒープの節点数)を変数A.size に代入して記録する(したがって,ヒープのデータは A[1], ..., A[A.size]に格納されている). 疑似コード1の Heapify は節点 i で局所的に崩れたヒープ条件を修復する操作,疑似コード 2 の Build-Heap は全ての節点でヒープ条件が成り立つようデータを移動する操作である. なお,\(\lfloor x \rfloor\) は \(x\) 以下の最大整数を表す.
(1) 配列 A の中に,図 1 に示すようなデータが格納されている.この図に対応する配列要素 A[1], ..., A[10] の値を示せ.
(2) 問 (1) の配列 A に対し Build-Heap(A) を実行した後のヒープを,図 1 のような2分木として示せ.
上記のように実現したヒープを利用し,優先度付きキューを構成する. 優先度付きキューから最大のデータを取り出す Pull 操作,優先度付きキューにデータ(キー)を挿入する Push 操作は,疑似コード 3,4 のように実現される.
(3) 疑似コード 3 で (X) となっている箇所に記載すべき操作を,1 行の疑似コードとして示せ. 複数の疑似コードが考えられる場合は,できるだけ効率の良いものを解答すること.
(4) 図 2 のヒープが配列 A に格納されているとする.このとき,Push(A,15) を実行した後のヒープを2分木として示せ.
優先度付きキューに格納されているデータ数(ヒープの節点数)を n とする.
(5) Push の最悪時間計算量を n に関するオーダー記法で示せ.また,その計算量となる理由を説明せよ.
(6) Build-Heap の最悪時間計算量を n に関するオーダー記法で示せ.また,その計算量となる理由を説明せよ.
Kai
(1)
(2)
(3)
Heapify(A, 1)
(4)
(5)
最悪のとき、while 文の実行する回数が \(\log (\text{A.size})\) なので、Push の最悪時間計算量は \(O(\log n)\) となる。
(6)
Build-Heap の最悪時間計算量を \(T(n)\) とおくと、
よって、