九州大学 理学府 地球惑星科学専攻 2024年度 問題5 熱力学
Author
Miyake
Description
Kai
問 1
(1)
\(dU=TdS-pdV\) より、
\[
\begin{aligned}
\left( \frac{\partial U}{\partial V} \right)_T
&= T \left( \frac{\partial S}{\partial V} \right)_T - p
\\
&= T \left( \frac{\partial p}{\partial T} \right)_V - p
& ( \because \text{ 与えられた式 } )
\end{aligned}
\]
がわかる。
(2)
理想気体では、適当な定数 \(c\) を使って
\[
\begin{aligned}
p = \frac{cT}{V}
\end{aligned}
\]
が成り立つので、 (1) で得た式に代入して、
\[
\begin{aligned}
\left( \frac{\partial U}{\partial V} \right)_T
&= T \cdot \frac{c}{V} - \frac{cT}{V}
\\
&= 0
\end{aligned}
\]
がわかる。
\(T,V\) を独立変数としたとき、 \(U\) は \(T\) のみに依存し \(V\) にはよらない。
(3)
\[
\begin{aligned}
dS
&= \left( \frac{\partial S}{\partial T} \right)_p dT
+ \left( \frac{\partial S}{\partial p} \right)_T dp
\end{aligned}
\]
(4)
等エントロピー変化では、 (3) の式より
\[
\begin{aligned}
0
&= \left( \frac{\partial S}{\partial T} \right)_p
+ \left( \frac{\partial S}{\partial p} \right)_T
\left( \frac{\partial p}{\partial T} \right)_S
\end{aligned}
\]
が成り立つが、
\[
\begin{aligned}
\left( \frac{\partial S}{\partial T} \right)_p
&= \frac{n C_p}{T}
,\\
\left( \frac{\partial S}{\partial p} \right)_T
&= - \left( \frac{\partial V}{\partial T} \right)_p
& ( \because \text{ 与えられた式 } )
\\
&= - \alpha V
& ( \because \text{ 与えられた式 } )
\end{aligned}
\]
なので、
\[
\begin{aligned}
\left( \frac{\partial p}{\partial T} \right)_S
= \frac{n C_p}{\alpha VT}
\end{aligned}
\]
がわかる。
問 2
(1)
熱膨張率が正であることから E, D, C, B の順に温度が高い。
さらに、定圧比熱が正であることから E, D, C, B の順にエントロピーが高い。
(2)
熱や仕事のやり取りがないため、
内部エネルギーが一定であり、 C である。
(3)
断熱環境下でエントロピーが増大した。
(4)
変化の前後で同じ値となる状態量は、内部エネルギーとエンタルピーと温度である。
理由 :
(i) (3) で述べた通り、エントロピーは増大する。
(ii) (2) で述べた通り、内部エネルギーは一定である。
(iii) 理想気体では \(T,V\) の関数としての \(U(T,V)\) について
\[
\begin{aligned}
\left( \frac{\partial U}{\partial T} \right)_V \gt 0
, \ \
\left( \frac{\partial U}{\partial V} \right)_T = 0
\end{aligned}
\]
が成り立ち、 \(U\) の値が変わらないので \(T\) の値も変わらない。
(iv) エンタルピー \(H\) について \(H=U+pV\) が成り立ち、
理想気体では \(pV=cT\) ( \(c\) は状態によらない定数)が成り立つ。
\(U,T\) の値が変わらないので \(H\) の値も変わらない。
問 3
(1)
\[
\begin{aligned}
S_B - S_A
&= \int_{T_A}^{T_1} \frac{C_L}{T} dT + \frac{L}{T_1}
+ \int_{T_1}^{T_B} \frac{C_G}{T} dT
\\
&= C_L \ln \frac{T_1}{T_A} + \frac{L}{T_1} + C_G \ln \frac{T_B}{T_1}
\end{aligned}
\]
(2)
温度 \(T_1\) のときの \(p_0, v_1, v_2\) を、
一般の \(T \ ( \lt T_c )\) について
\(\tilde{p}_0(T), \tilde{v}_1(T), \tilde{v}_2(T)\)
とする。
ヘルムホルツの自由エネルギー \(F(T,V)\) について
\(dF = -S dT - pdV\)
であるが、今の場合、
\[
\begin{aligned}
F \left( T, \tilde{v}_2(T) \right) - F \left( T, \tilde{v}_1(T) \right)
&= - \tilde{p}_0 (T) \left( \tilde{v}_2(T) - \tilde{v}_1(T) \right)
\end{aligned}
\]
である。
両辺を \(T\) で微分して、
\[
\begin{aligned}
- S_2(T) - \tilde{p}_0(T) \frac{d \tilde{v}_2(T)}{dT}
+ S_1(T) + \tilde{p}_0(T) \frac{d \tilde{v}_1(T)}{dT}
&=
- \frac{d \tilde{p}_0 (T)}{dT} \left( \tilde{v}_2(T) - \tilde{v}_1(T) \right)
- \tilde{p}_0 (T)
\left( \frac{d\tilde{v}_2(T)}{dT} - \frac{d\tilde{v}_1(T)}{dT} \right)
\end{aligned}
\]
\[
\begin{aligned}
\therefore \ \
\frac{d \tilde{p}_0 (T)}{dT}
&=
\frac{ S_2(T) - S_1(T) }{ \tilde{v}_2(T) - \tilde{v}_1(T) }
\end{aligned}
\]
となる。
ここで、 \(S_i(T)\) は
温度 \(T\) , 圧力 \(\tilde{p}_0(T)\) , モル体積 \(\tilde{v}_i(T)\)
でのエントロピーである \((i=1,2)\) 。
そこで、 \(T=T_1\) とすると、最後の式の右辺は
\[
\begin{aligned}
\frac{L}{ T_1 \left( v_2 - v_1 \right) }
\end{aligned}
\]
となり、これが求める答である。