九州大学 数理学府 数理学コース 2024年度 基礎科目 [1]
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\(a \in \mathbb{R}\) とし \(A = \begin{pmatrix} a & a & 1 \\ a & 1 & a \\ 1 & a & a \end{pmatrix}\) とする.このとき,以下の問に答えよ.
(1) \(A\) の固有値をすべて求めよ.
(2) Aの固有値が \(3, −3, −3\) となるような \(a\) を選ぶ.このとき,直交行列を用いて \(A\) を対角化せよ.
Kai
(1)
\(A\) の固有値を \(\lambda\) とすると、
\[
\begin{aligned}
0
&= \det \begin{pmatrix}
a - \lambda & a & 1 \\ a & 1 - \lambda & a \\ 1 & a & a - \lambda
\end{pmatrix}
\\
&= - (\lambda - a + 1)(\lambda + a - 1)(\lambda - 2a - 1)
\\
\therefore \ \
\lambda &= a-1, -a+1, 2a+1
\end{aligned}
\]
である。
(2)
\(a-1=3\) とすると \(a=4\) であり \(2a+1=9\) となって条件を満たさない。
\(-a+1=3\) とすると \(a=-2\) であり \(a-1=2a+1=-3\) となって条件を満たす。
\(2a+1=3\) とすると \(a=1\) であり \(a-1=0\) となって条件を満たさない。
よって、条件を満たすのは \(a=-2\) のときのみである。
\(a=-2\) のとき、
\[
\begin{aligned}
A
&= \begin{pmatrix} -2 & -2 & 1 \\ -2 & 1 & -2 \\ 1 & -2 & -2 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
である。
固有値 \(3\) に属する固有ベクトルを求めるため
\[
\begin{aligned}
\begin{pmatrix} -5 & -2 & 1 \\ -2 & -2 & -2 \\ 1 & -2 & -5 \end{pmatrix}
\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
とおくと、 \(y=-2x, z=x\) を得るので、規格化された固有ベクトルとして
\[
\begin{aligned}
\boldsymbol{v}_1 = \frac{1}{\sqrt{6}}
\begin{pmatrix} 1 \\ -2 \\ 1 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
がある。
固有値 \(-3\) に属する固有ベクトルを求めるため
\[
\begin{aligned}
\begin{pmatrix} 1 & -2 & 1 \\ -2 & 4 & -2 \\ 1 & -2 & 1 \end{pmatrix}
\begin{pmatrix} x \\ y \\ z \end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
とおくと、 \(x-2y+z=0\) を得る。 1次独立な2つの固有ベクトルとして
\[
\begin{aligned}
\boldsymbol{u}_2 = \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ -1 \end{pmatrix}
, \ \
\boldsymbol{u}_3 = \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \\ 2 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
があるが、これらは直交していない。 そこで、
\[
\begin{aligned}
\boldsymbol{u}'_3
&= \boldsymbol{u}_3 - \frac{
\left( \boldsymbol{u}_3 \cdot \boldsymbol{u}_2 \right) \boldsymbol{u}_2
}{\left| \boldsymbol{u}_2 \right|^2}
\\
&= \begin{pmatrix} 1 \\ 1 \\ 1 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
とおくと、これは \(\boldsymbol{u}_2\) と直交する固有ベクトルである。 さらに、規格化して、
\[
\begin{aligned}
\boldsymbol{v}_2
= \frac{1}{\sqrt{2}} \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \\ -1 \end{pmatrix}
, \ \
\boldsymbol{v}_3
= \frac{1}{\sqrt{3}} \begin{pmatrix} 1 \\ 1 \\ 1 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
とする。
以上より、
\[
\begin{aligned}
P
&= \begin{pmatrix}
\boldsymbol{v}_1 & \boldsymbol{v}_2 & \boldsymbol{v}_3
\end{pmatrix}
\\
&= \begin{pmatrix}
\frac{1}{\sqrt{6}} & \frac{1}{\sqrt{2}} & \frac{1}{\sqrt{3}} \\
- \frac{2}{\sqrt{6}} & 0 & \frac{1}{\sqrt{3}} \\
\frac{1}{\sqrt{6}} & - \frac{1}{\sqrt{2}} & \frac{1}{\sqrt{3}}
\end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
が求める直交行列であり、
\[
\begin{aligned}
P^{-1} A P
&= \begin{pmatrix} 3 & 0 & 0 \\ 0 & -3 & 0 \\ 0 & 0 & -3 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
が成り立つ。