九州大学 システム情報科学府 情報理工学専攻 2018年度 オートマトンと言語
Author
Zero
Description
【問1】
以下の遷移図を持つ非決定性有限オートマトン \(M = (K,\Sigma,\delta,q_0,F)\) に対し, 次の各問いに答えよ。ただし, \(K = \{q_0,q_1,q_2,q_3,q_4\}\), \(\Sigma = \{a,b\}\), \(\delta\), \(q_0\), \(F = \{q_1,q_2,q_4\}\) は, それぞれ状態の集合, アルファベット, 遷移関数, 初期状態, 最終状態の集合を表す。\(M\) によって受理される言語を \(L\) とする。
(1) \(L\) に含まれる長さ \(4\) の文字列をすべて列挙せよ。
(2) \(L\) に含まれる任意の文字列を, 正規表現 \((\alpha + \beta)(\alpha + \beta)^*\) を用いて表すことができる。ただし, \(\alpha\) と \(\beta\) はともに \(\Sigma\) 上の文字列である。これらの文字列 \(\alpha\) と \(\beta\) を与えよ。
(3) \(w\) を \(\Sigma\) 上の文字列とする。以下の \(2\) つの命題はそれぞれ真であるか偽であるか。真ならば理由を説明し, 偽ならば反例を与えよ。
-
(a) 「 \(w \in L\) ならば, \(bb\) は \(w\) の部分文字列ではない。」
-
(b) 「 \(bb\) が \(w\) の部分文字列でないならば, \(w \in L\) である。」
(4) \(L\) を受理する状態数最小の決定性有限オートマトンの遷移図を与えよ。
【問2】
文脈自由文法 \(G_1 = (N, \Sigma, P_1, S)\), \(G_2 = (N, \Sigma, P_2, S)\) を考える. ただし,\(N = \{S, A, B\}\), \(\Sigma = \{a, b, c\}\), \(P_i \ (i = 1, 2)\), \(S\) はそれぞれ非終端記号の集合,終端記号の集合,生成規則の集合,開始記号とする. ここで, \(P_1 = \{S \to AB, A \to ab \mid aAb, B \to c \mid Bc\}\), \(P_2 = \{S \to AB, A \to a \mid aA, B \to bBc \mid bc\}\) とする.
(1) \(G_1\) による文字列 \(aabbc\) の導出過程を与えよ.
(2) \(G_1\) が生成する言語 \(L(G_1)\) に含まれる文字列を説明せよ.
(3) \(G_2\) が生成する言語 \(L(G_2)\) に含まれる文字列を説明せよ.
(4) 言語 \(L(G_1) \cup L(G_2)\) を生成する文脈自由文法 \(G_3 = (N_3, \Sigma, P_3, S)\) の生成規則の集合 \(P_3\) を与えよ.ただし, \(N_3 = \{S, A, B, C, D\}\).
Kai
【問1】
(1)
\(b\) で終わることがない、かつ \(b\) を連続で含まないことが条件になっているので
(2)
(1) を基に考えると
(3)
(a)
真;
理由:(2) より \(\Sigma\) 上の文字列 \(w\) は, \((a + ba)(a + ba)^*\) と表せるので、\(b\) の後に連続して \(b\) がくることがないから。
(b)
偽;
反例:\(ab\)
(4)
a | b | ||
---|---|---|---|
\(\rightarrow\) | \(q_0\) | \(q_1\) | \(q_3\) |
\(*\) | \(q_1\) | \(q_1\) | \(q_3\) |
\(*\) | \(q_2\) | \(q_1\) | \(q_3\) |
\(q_3\) | \(\{q_1,q_4\}\) | \(\emptyset\) | |
\(*\) | \(q_4\) | \(q_1\) | \(q_3\) |
\(\emptyset\) | \(\emptyset\) | \(\emptyset\) |
上の表から \(q_1,q_2,\{q_1,q_4\}\) が等しいことがわかる。また、\(q_4\) はどの状態からも遷移先になっていないことが。
よって、遷移表は以下のようになる。
a | b | ||
---|---|---|---|
\(\rightarrow\) | \(q_0\) | \(q_1\) | \(q_3\) |
\(*\) | \(q_1\) | \(q_1\) | \(q_3\) |
\(q_3\) | \(q_1\) | \(\emptyset\) | |
\(\emptyset\) | \(\emptyset\) | \(\emptyset\) |
ゆえに、求める状態数最小の決定性有限オートマトン \(a\) 遷移図は