京都大学 理学研究科 数学・数理解析専攻 2024年度 基礎科目 [1] ~ [4]
Author
Miyake
Description
[2]
\(a\) を複素数とし、複素 \(3\) 次正方行列 \(A\) を
\[
A=
\begin{pmatrix}
a-1 & 0 & 0 \\ 1 & -a & 1 \\ 2a & -2a & a+1
\end{pmatrix}
\]
と定める。行列 \(A\) の固有値を全て求めよ。また、\(A\) の階数を求めよ。
[3]
\(n,m\) を \(n \ge 2m\) を満たす正の整数とする。\(V\) を有限次元複素ベクトル空間とする。
\(f: V\rightarrow V\) を \(f^n = f^m\) を満たす線形写像とする。こと時、
\[
V = \text{Ker}(f^m) \oplus \text{Im} (f^m)
\]
を示せ。ここで、\(\text{Ker}(f^m)\) は \(f^m\) の核であり、\(\text{Im}(f^m)\) は \(f^m\) の像である。
Kai
[2]
(i) \(A\) の固有値を \(\lambda\) とすると、
\[
\begin{aligned}
0
&= \begin{vmatrix}
a-1-\lambda & 0 & 0 \\ 1 & -a-\lambda & 1 \\ 2a & -2a & a+1-\lambda
\end{vmatrix}
\\
&= (a-1-\lambda)
\begin{vmatrix} -a-\lambda & 1 \\ -2a & a+1-\lambda \end{vmatrix}
\\
&= -(\lambda-a+1)(\lambda^2 - \lambda - a(a-1))
\\
&= -(\lambda-a+1)(\lambda - a)(\lambda + a - 1)
\\
\therefore \ \
\lambda &= a-1, a, -a+1
\end{aligned}
\]
である。
(ii) \(A\) を列基本変形すると、次のようにできる:
\[
\begin{aligned}
\begin{pmatrix}
a-1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ a-1 & a+1 & a(a-1)
\end{pmatrix}
.
\end{aligned}
\]
これを構成する3つの列ベクトルの1次独立性に注目すると、\(A\) のランクは、\(a=1\) のときは \(1\) , \(a=0\) のときは \(2\) , その他のときは \(3\)であることがわかる。
[3]
(i)
\(v \in V\) に対して
\[
\begin{aligned}
w &= f^{n-m}(v)
,\\
u &= v - w
\end{aligned}
\]
とおく。
\(n \geq 2m\) なので、
\[
\begin{aligned}
w &= f^m \left( f^{n-2m} (v) \right)
\end{aligned}
\]
と書け、 \(f^{n-2m}(v) \in V\) なので \(w \in \mathrm{Im}(f^m)\) である。
また、
\[
\begin{aligned}
f^m(u)
&= f^m(v) - f^n(v)
\\
&= 0
\end{aligned}
\]
なので、 \(u \in \mathrm{Ker}(f^m)\) である。
したがって、任意の \(v \in V\) に対して
\[
\begin{aligned}
v = u + w
\end{aligned}
\]
であるような \(u \in \mathrm{Ker}(f^m), \ w \in \mathrm{Im}(f^m)\)
が存在するので、
\[
\begin{aligned}
V \subset \mathrm{Ker}(f^m) + \mathrm{Im}(f^m)
\ \ \ \ \left( = \left\{ u+w \mid
u \in \mathrm{Ker}(f^m), w \in \mathrm{Im}(f^m) \right\} \right)
\end{aligned}
\]
がわかる。
(ii)
\(\mathrm{Ker}(f^m) \subset V, \ \mathrm{Im}(f^m) \subset V\) から
\[
\begin{aligned}
\mathrm{Ker}(f^m) + \mathrm{Im}(f^m) \subset V
\end{aligned}
\]
がわかる。
(iii)
\(v \in V\) が
\(v \in \mathrm{Ker}(f^m)\) かつ \(v \in \mathrm{Im}(f^m)\)
を満たすとすると、
\(v \in \mathrm{Im}(f^m)\) より
\[
\begin{aligned}
v = f^m(v_0)
\end{aligned}
\]
を満たす \(v_0 \in V\) が存在し、
\[
\begin{aligned}
v
&= f^m(v_0)
\\
&= f^n(v_0) \ \ \ \ \ \ \ \ ( \because f^n = f^m )
\\
&= f^{n-2m} \left( f^m (v) \right)
\\
&= f^{n-2m} (0) \ \ \ \ \ \ \ \ ( \because v \in \mathrm{Ker}(f^m) )
\\
&= 0
\end{aligned}
\]
を得る。
つまり、
\[
\begin{aligned}
\mathrm{Ker}(f^m) \cap \mathrm{Im}(f^m) = \left\{ 0 \right\}
\end{aligned}
\]
である。
(iv)
(i), (ii) より、
\[
\begin{aligned}
V = \mathrm{Ker}(f^m) + \mathrm{Im}(f^m)
\end{aligned}
\]
がわかり、さらに (iii) より、
\[
\begin{aligned}
V = \mathrm{Ker}(f^m) \oplus \mathrm{Im}(f^m)
\end{aligned}
\]
がわかる。