Kyoto-University
京都大学 情報学研究科 知能情報学専攻 2019年8月実施 情報学基礎 F1-1
Author
Miyake
Description
日本語版
設問1
以下の \(2 \times 2\) 正方行列 \(\boldsymbol{A}\) について考える。
\[
\boldsymbol{A} =
\begin{pmatrix}
4 & -2 \\
-2 & 7
\end{pmatrix}
\]
このとき、以下の問いに答えよ。
(1) \(\boldsymbol{A}\) の行列式を求めよ。
(2) \(\boldsymbol{A}\) の逆行列を求めよ。
(3) \(\boldsymbol{A}\) の固有値と対応する固有ベクトルを全て求めよ。
(4) \(\boldsymbol{A}\) は正定値行列か判定せよ。理由も述べよ。
(5) \(\boldsymbol{A}\) を対角化せよ。
設問2
任意の実対称行列について、以下の問いに答えよ。
(1) すべての固有値が実数となることを証明せよ。
(2) 異なる固有値に対応する固有ベクトルは直交することを証明せよ。
Kai
設問1
(1)
\[
\begin{aligned}
\det A
= 4 \cdot 7 - (-2) \cdot (-2)
= 24
\end{aligned}
\]
(2)
\[
\begin{aligned}
A^{-1}
= \frac{1}{24}
\begin{pmatrix}
7 & 2 \\ 2 & 4
\end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
(3)
\(A\) の固有値 \(\lambda\) は次のように求められる:
\[
\begin{aligned}
0
&=
\det
\begin{pmatrix}
4 - \lambda & -2 \\ -2 & 7 - \lambda
\end{pmatrix}
= (4 - \lambda)(7 - \lambda) - 4
= (\lambda - 3)(\lambda - 8)
\\
\therefore \ \
\lambda &= 3, 8
\end{aligned}
\]
固有値 \(\lambda = 3\) に属する固有ベクトルを求めるために、
次のようにおく:
\[
\begin{aligned}
\begin{pmatrix} 4 & -2 \\ -2 & 7 \end{pmatrix}
\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}
=
3
\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
これから \(x=2y\) がわかるので、例えば、
\[
\begin{aligned}
\begin{pmatrix} 2 \\ 1 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
が求める固有ベクトルである。
固有値 \(\lambda = 8\) に属する固有ベクトルを求めるために、
次のようにおく:
\[
\begin{aligned}
\begin{pmatrix} 4 & -2 \\ -2 & 7 \end{pmatrix}
\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}
=
8
\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
これから \(2x=-y\) がわかるので、例えば、
\[
\begin{aligned}
\begin{pmatrix} 1 \\ -2 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
が求める固有ベクトルである。
(4)
任意の実数 \(x,y\) について次のように計算できる:
\[
\begin{aligned}
\begin{pmatrix} x & y \end{pmatrix}
A
\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}
&=
\begin{pmatrix} x & y \end{pmatrix}
\begin{pmatrix} 4 & -2 \\ -2 & 7 \end{pmatrix}
\begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}
\\
&=
4x^2 - 4xy + 7y^2
\\
&=
4 \left( x - \frac{1}{2} y \right)^2 + 6y^2
.
\end{aligned}
\]
これは \(x=y=0\) のときを除いて正の数であるので、
\(A\) は正定値行列である。
(5)
(3) で求めた固有ベクトルを使って、
\[
\begin{aligned}
V
=
\frac{1}{\sqrt{5}}
\begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & -2 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
とおくと、その転置行列は、
\[
\begin{aligned}
V^T
=
\frac{1}{\sqrt{5}}
\begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & -2 \end{pmatrix}
\end{aligned}
\]
となる。
これらを使って、次のように \(A\) を対角化できる:
\[
\begin{aligned}
V^T A V
&=
\frac{1}{5}
\begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & -2 \end{pmatrix}
\begin{pmatrix} 4 & -2 \\ -2 & 7 \end{pmatrix}
\begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 1 & -2 \end{pmatrix}
\\
&=
\begin{pmatrix} 3 & 0 \\ 0 & 8 \end{pmatrix}
.
\end{aligned}
\]
設問1
行列やベクトルのエルミート共役を \(\dagger\) ,
複素数の複素共役を \(\ast\) で表す。
(1)
実対称行列 \(A\) の固有値を \(\alpha\) とし、
これに属する固有ベクトルを \(x\) とする:
\[
\begin{aligned}
A x = \alpha x
\end{aligned}
\]
両辺に左から \(x^\dagger\) をかけると、次を得る:
\[
\begin{aligned}
x^\dagger A x = \alpha x^\dagger x
\end{aligned}
\]
これのエルミート共役をとり、 \(A = A^\dagger\) を使うと、次を得る:
\[
\begin{aligned}
x^\dagger A x = \alpha^\ast x^\dagger x
\end{aligned}
\]
よって、次を得る:
\[
\begin{aligned}
\alpha^\ast x^\dagger x = \alpha x^\dagger x
\end{aligned}
\]
\(x\) はゼロベクトルではなく \(x^\dagger x \gt 0\) なので、
次を得る:
\[
\begin{aligned}
\alpha^\ast = \alpha
\end{aligned}
\]
すなわち、固有値 \(\alpha\) は実数である。
(2)
実対称行列 \(A\) の2つの相異なる固有値を \(\alpha, \beta\) とし、
それぞれに属する固有ベクトルを \(x, y\) とする:
\[
\begin{aligned}
A x = \alpha x
, \ \
A y = \beta y
\end{aligned}
\]
1番目の式の両辺に左から \(y^\dagger\) をかけ、
2番目の式の両辺に左から \(x^\dagger\) をかけると、
次のようになる:
\[
\begin{aligned}
y^\dagger A x = \alpha y^\dagger x
, \ \
x^\dagger A y = \beta x^\dagger y
\end{aligned}
\]
これの2番目の式のエルミート共役をとって、
\(A^\dagger = A, \beta^\ast = \beta\) を使うと、次のようになる:
\[
\begin{aligned}
y^\dagger A x = \beta y^\dagger x
\end{aligned}
\]
よって、次を得る:
\[
\begin{aligned}
(\alpha - \beta) y^\dagger x = 0
\end{aligned}
\]
\(\alpha \ne \beta\) であるから、 \(y^\dagger x = 0\)
すなわち \(x\) と \(y\) は直交する。