神戸大学 理学研究科 化学専攻 2022年8月実施 [V]-b
Author
Miyake
Description
半径 \(L\) の円の内側に閉じ込められた粒子(質量 \(m_0\)))のシュレディンガー方程式は,平面極座標 \((r, \theta)\) を用いて (1) 式で表される。
ただし,円の内側のポテンシャルは零としている。
以下の問いに答えなさい。ただし,\(\hbar = h / 2\pi\) であり,\(h\) はプランク定数である。
\[
\begin{align}
-\frac{\hbar^2}{2m_0} \left(\frac{1}{r}\frac{\partial}{\partial r} \left( r\frac{\partial}{\partial r} \right) + \frac{1}{r^2}\frac{\partial^2}{\partial \theta^2} \right) \Psi(r, \theta) = E \Psi(r, \theta) \tag{1}
\end{align}
\]
問1. 波動関数 \(\Psi(r, \theta)\) を \(r\) と \(\theta\) を使って変数分離して,\(r\) と \(\theta\) に対してそれぞれ独立な微分方程式を求めなさい。
問2. 波動関数 \(\Psi(r, \theta)\) の境界条件を書きなさい。
問3.粒子の動径方向が \(r=r_0\) (ただし,\(0 < r_0 < L\))の一定値に束縛されている場合,波動関数の一つとして \(\Psi_m(r_0, \theta) = Ae^{im\theta} \ (m=\cdots -2,-1, 0, 1, 2, \cdots)\) が挙げられる。この粒子の持つエネルギーを求めなさい。導出の過程も分かるように書きなさい。
Kai
問1.
与えられたシュレディンガー方程式に \(\Psi(r,\theta)=R(r)\Theta(\theta)\) を代入して整理すると、
\[
\begin{align}
\frac{1}{r} \frac{R'(r)}{R(r)} + \frac{R''(r)}{R(r)} + \frac{1}{r^2} \frac{\Theta''(\theta)}{\Theta(\theta)} = - \frac{2m_0E}{\hbar^2}
\tag{a}
\end{align}
\]
となる。
ここで、
\[
\begin{aligned}
R'(r) = \frac{dR(r)}{dr}
, \ \
R''(r) = \frac{d^2 R(r)}{dr^2}
, \ \
\Theta''(\theta) = \frac{d^2 \Theta(\theta)}{d \theta^2}
\end{aligned}
\]
である。
\(\Theta''(\theta)/\Theta(\theta)\) は \(r\) によらない \(\theta\) のみの関数であるが、
式 (a) から、 \(\theta\) にもよらない定数でなければならないことがわかる。
これを \(\alpha\) とすると、
\[
\begin{align}
\Theta''(\theta) = \alpha \Theta(\theta)
\tag{b}
\end{align}
\]
であり、式 (a) から
\[
\begin{align}
R''(r) + \frac{1}{r} R'(r) + \left( \frac{\alpha}{r^2} + \frac{2m_0E}{\hbar^2} \right) R(r) = 0
\tag{c}
\end{align}
\]
を得る。
(b), (\(c\)) が求める微分方程式である。
問2.
\[
\begin{aligned}
\Psi(L, \theta) &= 0
, \\
\Psi(r, 2 \pi) &= \Psi(r, 0)
\end{aligned}
\]
問3.
\(\Psi_m(r_0,\theta) = Ae^{im\theta}\) は規格化定数を除いて
\[
\begin{align}
\Theta(\theta) &= e^{im\theta}
\tag{d}
\end{align}
\]
を意味する。
式 (d) を (b) に代入すると、
\[
\begin{align}
\alpha = - m^2
\tag{e}
\end{align}
\]
を得る。
\(r=r_0\) に束縛されていることから、式 (\(c\)) において \(r=r_0, R'(r)=0, R''(r)=0\) とし、
さらに (e) を代入して整理すると、
\[
\begin{aligned}
E = \frac{m^2 \hbar^2}{2m_0r_0^2}
\end{aligned}
\]
を得る。
これが求めるエネルギーである。