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東京工業大学 情報理工学院 数理・計算科学系 2023年度 午前 問A

Author

Miyake

Description

\(n \ (n \geq 3)\) を整数とし, 複素数を成分とする \(n \times n\) 行列全体の集合を \(M_n\) とする. \(M_n\) の元で零行列と単位行列をそれぞれ \(O, I\) と書く. \(M_n\) の元 \(A\)\(A^2 \neq O, A^3 = O\) を満たすとし, \(M_n\) の元 \(X\)

\[ X = I + A + 2A^2 \]

により定義する. 以下の問いに答えよ.

(1) 次の行列 \(B\) について \(B^2\)\(B^3\) を求めよ.

\[ B = \begin{pmatrix} -1 & 1 & 0 \\ 1 & 1 & 2 \\ 1 & -1 & 0 \end{pmatrix} \]

(2) \(M_n\) を複素ベクトル空間であると考えるとき, \(I, A, A^2\) が線形独立であることを示せ.

(3) \(X\) の固有値はすべて \(1\) であることを示せ.

(4) \(X\) の逆行列を \(I, A, A^2\) の線形和で表せ.

Kai

(1)

\[ \begin{aligned} B^2 &= 2 \begin{pmatrix} 1 & 0 & 1 \\ 1 & 0 & 1 \\ -1 & 0 & -1 \end{pmatrix} \\ B^3 &= O \end{aligned} \]

(2)

複素数 \(x,y,z\) について

\[ \begin{align} xI + yA + zA^2 &= O \tag{a} \label{a} \end{align} \]

が成り立つとする。 式 (\(\ref{a}\)) に \(A^2\) をかけると

\[ \begin{aligned} xA^2 + yA^3 + zA^4 &= O \end{aligned} \]

となるが、 \(A^2 \ne O, A^3 = O\) から \(x=0\) がわかり、式 (\(\ref{a}\)) は

\[ \begin{align} yA + zA^2 &= O \tag{b} \label{b} \end{align} \]

となる。 式 (\(\ref{b}\)) に \(A\) をかけると

\[ \begin{aligned} yA^2 + zA^3 &= O \end{aligned} \]

となるが、 \(A^2 \ne O, A^3 = O\) から \(y=0\) がわかり、式 (\(\ref{b}\)) は

\[ \begin{aligned} zA^2 &= O \end{aligned} \]

となる。 \(A^2 \ne O\) から \(z=0\) がわかる。 式 (\(\ref{a}\)) を仮定して \(x=y=z=0\) を得たので、 \(I,A,A^2\) は線形独立である。

(3)

\(X\) の固有値を \(\lambda\) とし、これに属する固有ベクトルを \(\boldsymbol{v}\) (零ベクトルでない)とする:

\[ \begin{aligned} X \boldsymbol{v} &= \lambda \boldsymbol{v} \\ \boldsymbol{v} + A \boldsymbol{v} + 2A^2 \boldsymbol{v} &= \lambda \boldsymbol{v} \end{aligned} \]

これに \(A^2\) をかけると、

\[ \begin{aligned} A^2 \boldsymbol{v} + A^3 \boldsymbol{v} + 2A^4 \boldsymbol{v} &= \lambda A^2 \boldsymbol{v} \\ \therefore \ \ A^2 \boldsymbol{v} &= \lambda A^2 \boldsymbol{v} \end{aligned} \]

となるが、 \(A^2 \ne O\) なので \(A^2 \boldsymbol{v}\) は零ベクトルではなく、 \(\lambda = 1\) を得る。 つまり、 \(X\) の固有値はすべて \(1\) である。

(4)

\(Y=aI+bA+cA^2\) とすると、

\[ \begin{aligned} XY = aI + (a+b)A + (2a+b+c) A^2 \end{aligned} \]

なので、 \(a=1, b=-1, c=-1\) のとき \(XY=I\) となる。 したがって、

\[ \begin{aligned} I - A - A^2 \end{aligned} \]

\(X\) の逆行列である。