東京工業大学 情報理工学院 数理・計算科学系 2019年度 午前 問2
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1 次元ユークリッド空間 \(\mathbb{R}\) 上の通常の位相 \(\mathcal{U}\) に対し,\(\mathbb{R}\) 上の部分集合族 \(\mathcal{U}^*\) を
で定める.ただし \(\emptyset\) は空集合を表す. このとき以下の問いに答えよ.必要ならばユークリッド空間 \((\mathbb{R}, \mathcal{U})\) におけるコンパクト集合の諸性質を証明なしに用いてよい.
(1) \(\mathcal{U}^*\) は開集合系として \(\mathbb{R}\) 上に位相を定めることを示せ.
(2) \(\mathbb{R}\) の部分集合 \(G\) に関する次の命題を示せ.
- \(G\) が位相空間 \((\mathbb{R}, \mathcal{U}^*)\) の開集合であるならば \(G\) は位相空間 \((\mathbb{R}, \mathcal{U})\) の開集合である.
また,逆が成立するか否かを理由をつけて述べよ.
(3) 位相空間 \((\mathbb{R}, \mathcal{U}^*)\) がハウスドルフ空間であるか否かを理由をつけて述べよ.
Kai
(1)
(i) \(\emptyset, \mathbb{R} \in \mathcal{U}^*\) は明らか。
(ii) \(\forall U, V \in \mathcal{U}^*\) に対して、
- \(U, V\) が少なくとも一方が \(\emptyset\) 或は \(\mathbb{R}\) のとき、明らかに \(U \cap V \in \mathcal{U}^*\)。
- \(U, V \in \mathcal{U}^* \setminus \{\emptyset, \mathbb{R}\}\) のとき、\((U \cap V)^C = U^C \cup V^C\) はコンパクト集合の和なので、コンパクト。従って、\(U \cap V \in \mathcal{U}^*\)。
(iii) \(\forall U_{\lambda} \in \mathcal{U}^* (\lambda \in \Lambda)\) に対して、
- \(\forall \lambda \in \Lambda, U_{\lambda} = \emptyset \Rightarrow \bigcup_{\lambda \in \Lambda} U_{\lambda} = \emptyset \in \mathcal{U^*}\)
- \(\exists \lambda_0 \in \Lambda, U_{\lambda_0} = \mathbb{R} \Rightarrow \bigcup_{\lambda \in \Lambda} U_{\lambda} = \mathbb{R} \in \mathcal{U^*}\)
- それ以外のとき、\(\exists \Sigma \subset \Lambda, \bigcup_{\lambda \in \Lambda} U_{\lambda} = \bigcup_{\lambda \in \Sigma} U_{\lambda}\ (U_{\lambda} \notin \{\emptyset, \mathbb{R}\}, \forall \lambda \in \Sigma)\)。\(\left(\bigcup_{\lambda \in \Lambda} U_{\lambda} \right)^C = \bigcap_{\lambda \in \Sigma} U_{\lambda}^C\) は、\(U_{\lambda}^C\) が閉集合なので無限積も閉集合。また、\(U_{\lambda}^C\) が有界なので、これも有界であり、コンパクト。従って、\(\bigcup_{\lambda \in \Lambda} U_{\lambda} \in \mathcal{U}^*\)。
(2)
\(\forall G \in \mathcal{U}^*\) に対して、
- \(G \in \{\emptyset, \mathbb{R}\}\) のとき \(G \in \mathcal{U}\) は明らか。
- それ以外のとき、\(G^C\) はコンパクトより、\(G^C\) は有界閉集合なので、\(G^C = \bigcup_{i=1}^n [a_i, b_i]\) (\([a_i, b_i]\) はお互いに素) とかける。\(G = \bigcap_{i=1}^n (-\infty, a_i) \cup (b_i, +\infty) \in \mathcal{U}\)。
(3)
\(\forall x, y \in \mathbb{R}\) に対して、\(\forall U, V \in \mathcal{U}^*\) に対して、\(x \in U, y\in V\) かつ \(U \cap V = \emptyset\) とすると、\(x \in \mathbb{R} \setminus V, y \in \mathbb{R} \setminus U\) となる必要がある。
\(\mathbb{R} \setminus V = \bigcup_{i=1}^n [a_i, b_i], \mathbb{R} \setminus U = \bigcup_{j=1}^m [c_j,d_j]\) (\(\{[a_i, b_i]\}\) はお互いに素, \(\{[c_j, d_k]\}\) はお互いに素) とかける。
しかし、例えば、\(\min \{a_1, \ldots, a_n, c_1, \ldots, c_m\}-1 \in U \cap V\) より、必ず交わってしまうので、ハウスドルフ空間ではない。