山口大学 人間社会科学研究科 臨床心理学専攻 令和8年度第1回 専門科目(臨床心理学)
Author
祭音Myyura (co-authored by GPT-5.6 Sol)
Description
臨床心理学に関する次の四問を扱う。
第1問:自殺予防
- TALKの原則を構成する四つの行動。
- 自殺予防のゲートキーパーに求められる四つの役割。
第2問:食行動症及び摂食症群
- DSM-5-TRにおける神経性やせ症の主要な診断上の特徴。
- DSM-5-TRにおける神経性過食症の主要な診断上の特徴。
- これらの診断を受けた人に臨床心理学的に関わる際の留意点を二つ。
第3問:臨床心理職の倫理
- 多重関係の概要と具体例。
- 守秘義務の概要と、遵守をめぐって葛藤が生じやすい場面の具体例。
- インフォームド・アセントの概要。
第4問:力動論
- エス(イド)、自我、超自我の機能を踏まえ、Freudの力動論を説明する。
- 卒業論文の指導場面で、本当は自分の研究テーマについて意見を言いたいのに、指導教員へ言えず黙り込んだ大学生Aさんの心の動きを、三つの審級を明示して説明する。
公式PDFの設問範囲を独自の表現で要約し、公開された解答例(唯一の正解を意味しない)と出題意図を照合してKaiを作成した。原資料はReferenceを参照されたい。
题目描述
本试题由以下四道临床心理学大题组成。
- 自杀预防:说明 TALK 原则的四项行动,以及自杀预防守门人的四项角色。
- 喂食与进食障碍:说明 DSM-5-TR 中神经性厌食症、神经性贪食症的主要诊断特征,并列举临床心理干预时的两项注意事项。
- 临床心理专业伦理:解释多重关系、保密义务与知情赞同,并根据要求举例。
- 心理动力理论:说明 Freud 的本我、自我、超我及动力论,并用三个心理层级分析指定的大学生案例。
Kai
第1問:自殺予防
1. TALKの原則
- Tell:相手を心配していること、大切に思っていることを、曖昧にせず言葉で伝える。
- Ask:死にたい気持ちや自殺念慮の有無を、落ち着いて率直に尋ねる。尋ねること自体が自殺を誘発するという前提で避けない。
- Listen:評価、説教、安易な励ましを急がず、本人の苦痛、絶望、孤立感に耳を傾ける。
- Keep safe:切迫した危険が疑われるときは一人にせず、危険物へのアクセスを減らし、医療・相談機関や緊急支援につないで安全を確保する。
2. ゲートキーパーの四つの役割
- 気づく:表情、言動、生活、家族関係などの変化や危険のサインに気づき、声をかける。
- 傾聴する:本人の気持ちを尊重し、否定せずに話を聴く。
- つなぐ:早い段階で、医療機関や相談窓口など適切な専門家へ相談するよう促し、必要なら同行・連絡を支援する。
- 見守る:専門家につないだ後も、孤立させず、温かく継続して関わる。
ゲートキーパーは診断や治療を一人で担う専門家ではなく、危険に気づき、安全確保と適切な支援への橋渡しを行う存在である。
出題の意図
自殺予防の基本原則と、地域・学校・職場などで早期支援を行うための基礎知識を確認する問題である。
第2問:食行動症及び摂食症群
以下は入試答案用の要約であり、実際の診断は資格をもつ専門家が総合的に行う。
1. 神経性やせ症
中心となる特徴は、必要量に比べてエネルギー摂取を制限し、年齢・性別・発達段階・身体的健康状態に照らして有意に低い体重となること、体重増加や肥満への強い恐れ、または体重増加を妨げる持続的な行動があることである。さらに、(a) 自分の体重・体型を体験する仕方の障害、(b) 体重・体型が自己評価へ及ぼす過度な影響、(c) 低体重の深刻さを持続的に認識できないこと、のいずれかが認められる。
2. 神経性過食症
短時間に通常より明らかに多量の食物を摂り、その間に制御できない感覚を伴う過食エピソードが反復する。体重増加を防ぐため、自己誘発性嘔吐、下剤の不適切使用、絶食、過剰な運動などの代償行動も反復する。過食と代償行動は平均して週1回以上、3か月間続き、自己評価が体型・体重に過度に左右される。これらが神経性やせ症の経過中にのみ生じる場合とは区別する。
3. 臨床心理学的アプローチの留意点
答案では、次のうち二点以上を具体的に述べればよい。
- 身体的安全と医療連携:低体重、低栄養、電解質異常、月経異常、貧血などの身体的危険を理解し、心理支援だけで完結させず、医師や管理栄養士などと連携する。
- 自傷・自殺リスクの評価:希死念慮、自殺企図、自傷行為、衝動性を継続的に評価し、必要に応じて安全計画と緊急対応を行う。
- 治療関係の構築:低い自己評価や否定されることへの恐れ、症状を手放すことへの両価性を理解し、体重や行動だけを責めず、本人の尊厳と主体性を守って丁寧に関係を築く。
出題の意図
臨床心理学と関係の深い医学的診断を理解し、身体面・安全面・心理面を統合した支援上の留意点を説明できるかを確認する問題である。
第3問:臨床心理職の倫理
1. 多重関係
臨床上の専門的関係に加えて、同じ相手との間に別の関係が同時に存在する状態をいう。例えば、セラピストがクライエントの友人・親族・同僚でもある、面接外で私的に食事を重ねる、金銭の貸し借りや事業関係をもつ、といった場合である。過去に別の関係があった場合も、その影響を個別に評価する必要がある。多重関係のうち、専門家の客観性・能力・支援の有効性を損なうと合理的に予測されるものや、相手を搾取し、または害するおそれがあるものは、回避または適切に解消・管理しなければならない。
2. 守秘義務
心理支援の過程で知り得た個人情報を、本人の同意なく正当な理由もなしに第三者へ開示しない義務である。面接の開始時に守秘の範囲を説明し、自他への重大で切迫した危険や法令上の義務など、本人の同意がなくても開示が正当化されうる例外も明確にしておく。
スーパービジョンや事例検討は、それだけで無条件の開示を許す例外ではない。正当な臨床目的があり、事前の説明・同意または別の正当な根拠があり、参加者も守秘義務を負う範囲で行う。共有する情報は必要最小限にし、可能な限り匿名化する。
葛藤の例として、学校や組織の管理者が業務管理を理由に、誰が相談したか、何を話したかの報告を求める場面がある。組織への説明責任とクライエントの秘密保持が衝突するため、必要最小限の共有、本人への説明と同意、法令・倫理綱領・組織方針の確認、上司や専門家への相談が必要となる。
3. インフォームド・アセント
子どもなど法的に単独で完全な同意を与えることが難しい対象者に、年齢、発達、理解力に合う方法で介入や研究の目的、方法、負担、選択肢を説明し、本人の理解と自発的な参加意思を確認する手続である。通常は保護者など代諾者のインフォームド・コンセントと併せて行うが、代諾があるからといって本人への説明と意思確認を省いてよいわけではない。
出題の意図
臨床心理職の倫理に関する基礎用語を理解し、実際の臨床場面に即して説明できるかを確認する問題である。
第4問:力動論
1. 力動論
力動論は、心的現象を、心の内部にある諸力の葛藤、調整、妥協の結果として理解する立場である。構造論では次の三つの審級を区別する。
- エス(イド):本能的欲求や衝動の源で、快を直ちに得ようとする快楽原則に従う。
- 超自我:養育者や社会の規範・禁止・理想を内在化し、「すべき」「してはならない」という要求を自我へ向ける。違反の予期は罪悪感や不安を生じさせる。
- 自我:外的現実を考慮する現実原則に従い、エス、超自我、現実からの要求を調整する。葛藤が強いときには、防衛機制を用いながら不安を軽減し、行動として表すか抑えるかを決める。
したがって、表面に現れた言動だけでなく、その背後で欲求、禁止、現実への適応がどのようにせめぎ合い、どのような妥協が成立したかを捉える。
2. Aさんの理解
- (エス/イド):自分の研究テーマについて、本当に考えていることを遠慮なく主張し、理解してもらいたいという欲求がある。
- (超自我):教員に反対してはいけない、良い学生でなければならないという規範が働き、叱責や否定を受けるのではないかという不安を強める。
- (自我):意見を伝えたい欲求と、超自我の禁止、教員との現実の力関係を調整しようとするが、葛藤を十分に処理できず、発言を抑えて黙るという妥協を選ぶ。
この沈黙は、発言したい気持ちが存在しないのではなく、欲求と禁止の葛藤から生じた自我の抑制として理解できる。ただし、実際の臨床では一つの理論だけで本人の内面を断定せず、本人の語りを通して仮説を検討する必要がある。
出題の意図
精神分析学の基本概念である力動論と三つの審級を理解し、具体的な事例へ適用できるかを確認する問題である。