跳到主要内容

山口大学 人間社会科学研究科 経済学・経営学専攻 医療・福祉経営コース 令和8年度第1回 外国人留学生入試 医療経済学

Author

祭音Myyura (co-authored with GPT 5.6 SOL)

Description

経営学プログラム(医療・福祉経営コース)の専門科目試験であり、次の二点を論じる。

  1. 看護サービスが一般的な市場サービスと異なる四つの経済学的特殊性を、それぞれ説明する。
  2. 日本・中国などにおける看護師の労働力不足について、自らの今後の研究と関連づけながら対応策を論じる。

题目描述

本试题要求考生运用医疗经济学分析护理服务:第一题解释护理服务区别于一般市场服务的四项经济学特殊性;第二题分析日本、中国等地护士劳动力不足的结构与成因,并结合自己今后的研究提出对策。

Kai

第1問:看護サービスの四つの特殊性

看護サービスは医療サービスの重要な構成要素であるため、自由な市場取引だけでは効率性または公平性を実現しにくい。代表的な特殊性は、次の四点である。

1. 情報の非対称性

患者は看護師に比べて、自分の状態、必要なケアの種類・量、その質や効果について十分な専門知識をもたない。しかも看護は、購入後であっても質を完全に評価しにくい「信用財」の性格をもつ。このため、供給者が需要の決定にも関与する代理関係が生まれ、過少利用、過剰提供、質の低下などが起こりうる。国家資格、業務基準、情報公開、第三者評価、説明と同意は、この問題を緩和する制度である。

2. 不確実性

疾病や症状の急変はいつ起きるか分からず、必要となる看護の時期・量・期間も事前には確定できない。また、同じケアを行っても患者の反応や回復には差があるため、供給側も成果を確実には予測できない。個人が発生時の全費用を負担する市場では、必要なサービスを購入できない危険がある。そこで医療・介護保険によるリスク・プーリング、24時間の提供体制、重症度に応じた人員配置が必要となる。

3. 外部性

看護の便益・費用は、患者と提供者だけにとどまらない。感染管理、服薬・療養指導、認知症ケアは、家族の介護負担や第三者への感染・事故の危険を減らす正の外部性をもつ。他方、感染対策が不十分であれば負の外部性が生じる。市場価格にこの社会的効果が十分反映されなければ、社会的に望ましい量より供給・利用が少なくなるので、公費負担、基準設定、予防への報酬などが正当化される。

4. 価値財としての性格

看護は、本人の所得やその時点の支払意思にかかわらず、生命、尊厳、基本的生活を守るために一定水準まで保障すべき価値財である。市場だけに委ねれば、必要性が高くても購買力の低い人が排除され、資源配分の公平性が損なわれる。そのため、皆保険、公費、所得に応じた負担、全国的な最低提供基準などが求められる。

以上のうち、情報の非対称性、不確実性、外部性は主として市場の効率性を損なう要因であり、価値財性は主として公平性に関わる。ただし、看護を一括りにせず、重症者への専門的看護のように特殊性が強い領域と、比較的市場取引になじみやすい領域を区別して政策を設計すべきである。

第2問:日中の看護労働力不足と対応策

以下では、今後の研究テーマを「日本と中国における看護師の定着および地域・領域間配置の比較分析」と設定して論じる。

1. 現状と問題の構造

看護師不足は、免許保有者の総数だけで判断できない。必要な時間と場所に、必要な技能をもつ看護師を配置できないという、量・地域・専門・勤務時間のミスマッチとして捉える必要がある。

日本では、高齢化、医療の高度化、在院日数の短縮、在宅・訪問看護への移行によって需要が増えている。厚生労働省が2019年に取りまとめた2025年需給推計は需要を約180.2万人とし、2020年の就業者約173.4万人から一層の確保が必要であることを示した。もっとも、この推計は作成時点以後の受療行動やDXを十分に反映しないため、全国総数だけでなく、都市部、訪問看護、夜勤、急性期などの不足を常勤換算で把握することが重要である。

中国では、2020年末の登録看護師は約471万人、人口千人当たり3.34人であった。政府の「全国护理事业发展规划(2021-2025年)」は、2025年に550万人、同3.8人を目標とする一方、総数の相対的不足と分布の不均衡を課題として明記した。人口規模、高齢化、慢性疾患、在宅ケア需要を考えれば、農村と都市、沿海部と内陸部、三級病院と基層医療機関の間の偏在、さらに老年・小児・重症・感染症・地域看護などの技能構成が重要である。したがって、人数の増加と配置・定着・質の改善を区別すべきである。

供給側では、夜勤、長時間労働、感情労働、暴力・ハラスメント、責任の重さに報酬と裁量が見合わないことがバーンアウトと離職を招く。出産・育児・介護との両立困難、地方での教育・キャリア機会の少なさも、潜在看護師化と地域偏在を強める。人員不足が一人当たり負担を増やし、それがさらに離職を生むという循環が核心である。

2. 対応策

第一に、定着を中心に処遇と労働環境を改善する。単純な採用数ではなく、患者の重症度と業務量に連動した配置、夜勤・交替制の改善、超過労働の抑制、休息時間の確保、暴力対策、心理的支援を行う。職務・技能・責任を反映した賃金と専門看護師へのキャリア・ラダーを整え、管理職だけでない昇進経路を作る。保育、介護、短時間正規勤務、復職研修も離職防止に有効である。

第二に、業務を再設計する。看護補助者や他職種との適切なタスク・シフト、記録の標準化、重複事務の削減、相互運用可能な情報システムを進める。ただし、DXを新たな入力負担にしたり、患者との直接ケア時間を削ったりしないよう、導入前後の業務時間と安全指標を評価する。

第三に、地域・専門間の偏在へ選択的に介入する。地方・基層・訪問看護への手当、住宅・教育支援、一定期間勤務を条件とする奨学金、地域枠、遠隔教育、都市病院との循環研修を組み合わせる。単なる強制配置は早期離職を招くため、地域で技能とキャリアを形成できる仕組みが必要である。

第四に、教育とサービス供給を需要構造へ合わせる。養成定員だけを増やすのではなく、老年、地域、在宅、リハビリテーション、感染症などの実践教育を強化する。日本では病院から地域包括ケアへ、中国では大病院集中から基層・居家护理へ、人材と財源を同時に移す必要がある。

3. 今後の研究との接続

私の研究では、日中の病院・訪問看護・基層医療機関を対象に、離職率、欠員率、夜勤回数、患者一人当たり看護時間、賃金、バーンアウト、医療安全、患者満足を共通指標としてパネル化する。その上で、配置加算、夜勤改善、奨学金、復職支援などの導入前後を、差の差法などにより比較する。政策が単に他地域から人材を奪ったのか、純粋な就業継続と患者アウトカムの改善を生んだのかも検証する。

結論として、看護師不足への対策は「養成数を増やす」だけでは不十分である。看護サービスの情報の非対称性と価値財性を踏まえ、質を守りながら、定着、配置、技能構成、労働環境を一体的に改善し、その効果を実証的に評価する必要がある。

出題の意図

第1問は、看護サービスの取引構造と制度的背景を理解するための医療経済学の基礎素養を確認する。第2問は、日中の看護師不足を単に記述するのではなく、問題を構造的に把握し、自らの研究課題へ接続しながら、労働環境、制度設計、国際比較など複数の観点から実行可能な対応策を論じる力をみるものである。

Reference