東京大学 理学系研究科 物理学専攻 2021年8月実施 専門科目 第1問
Author
Miyake
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【問 1】
量子力学において不確定性関係式は重要な役割を果たす。与えられた量子状態に対する、位置演算子 と運動量演算子 の標準偏差を
と定義しよう。ここで、 は演算子 の量子力学的期待値である。以下の設問に答えよ。なお、必要があれば次の積分公式を使ってもよい。
また、 はプランク定数を で割った量とする。
1. 波動関数
に対して 、 を計算し、その結果を物理的に解釈せよ。
2. 一般に、 と の間には不等式
が成立する。これを示すために、まず、任意の演算子 とそのエルミート共役演算子 に対して
が成立することを示せ。
3. 次に、 ( は任意の実数) とおくことで不等式 (1) を示せ。
4. 設問 3 の の固有値が 0 を含むための に関する条件を述べ、固有値 0 に対応する固有状態が不等式 (1) の等号を満足することを示せ。
5. 不等式 (1) の等号が成立する状態を最小不確定状態という。設問 4 の結果を用いて、最小不確定状態を記述するように規格化された波動関数を求めよ。
Kai
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東大理学系研究科 物理学専攻 令和4年度 専門科目 第1問
は に比例し、 は に反比例するので、
と は互いに反比例し、
である。
これは与えられた (1) の等号が成り立つ場合であり、最小不確定状態である。
波動関数 で表される状態について、
がわかる。
まず、 のとき、
である。
また、正準交換関係 から、
がわかるので、
である。
一方、2. から、任意の実数 について であるから、
がわかる。
が固有値 をもつということは、それに属する固有関数について
が成り立つということである。3. より、その条件は
である。
次のように書くことにする:
- で求めた を使って は次のようになる:
求める波動関数 は、 が成り立つので、
ここで は積分定数であり、規格化条件から がわかるので、結局、
を得る。