東京大学 理学系研究科 物理学専攻 2019年8月実施 物理学 第2問
Author
Miyake
Description
第2問
体積 、粒子数 の系が温度 の熱浴と接触している状況を考える。粒子の質量を とし、粒子間の相互作用は考えない。必要であれば、熱力学の関係式
を用いてよい。ここで、 は系の内部エネルギー、 は熱量、 は圧力、 は化学ポテンシャル、 はエントロピー、 はヘルムホルツの自由エネルギーである。
まず粒子を古典的に扱う。この場合、分配関数は
で、ハミルトニアン は
で与えられる。ここで は 番目の粒子の運動量、 は 番目の粒子の位置座標、 はプランク定数 、で、 はボルツマン定数である。
1. 式 (2) の積分を実行し、を求めよ。さらに、得られた結果を用いて、この系の圧力 を求めよ。必要であれば
が十分大きい場合
を用いてよい。
2. 式 (2) には、 という因子がついている。もしこの因子が無かったとすると、ヘルムホルツの自由エネルギーが、ある熱力学的性質を満たさなくなる。このことを簡潔に説明せよ。
3. この系のエントロピー を求めよ。 としたときに、古典的には はどうなるか述べよ。
4. 体積が一定のときの熱容量 を求めよ。
以下では、粒子がフェルミ粒子であるとして、量子力学的に扱う。系は化学ポテンシャル の粒子浴に接しているとして、グランドカノニカル分布で考える。粒子の運動エネルギーを
と表す。ここで は粒子の波数を表す。また、体積 は一辺の長さ の立方体とし 、周期境界条件が満たされるものとする。ただし、スピンなどの粒子の内部自由度は考えなくてよい。
5. この系の大分配関数 は
である。この式で、波数 が取り得る値を求めよ。
6. 大分配関数を用いて、全粒子数の期待値 が
となることを示せ。ここで はフェルミ分布関数
である。
7. フェルミ粒子系の縮退温度より十分高い温度では、 は負で絶対値の大きな値 となる。この場合、フェルミ分布関数は
と近似してよい。このような温度領域で、 が十分大きいとして式 (7) の の取り得る値についての和を積分の形に書き直して積分を実行し、 を と (簡単のために と書いてよい)の関数として求めよ。
8. 設問 7 と同様の温度領域におけるエントロピーが、近似的に となることを示せ。
9. 一方、縮退温度より十分低い温度では、この自由フェルミ粒子系の熱容量 は に比例して と書けることがわかっている。このことと設問 8 の結果を考慮して、フェルミ粒子系でのエントロピーを温度の関数としてグラフにせよ。
比較のために、設問 3 で考えたエントロピーの温度依存性も点線で書き加えよ。
Kai
であるから、
を得る。
よって、ヘルムホルツの自由エネルギー は次のように求められる:
そこで、 を考慮して、
圧力 は次のように求められる:
因子 がないと、ヘルムホルツの自由エネルギーが示量性を満たさなくなる。
すなわち、
が成り立たなくなる。
のとき となる。
周期的境界条件から、 なので、整数 を使って、
同様に、整数 を使って、
グランドポテンシャル は、次のようになる:
よって、
与えられた近似の下で積分を実行すると、次のようになる:
これを について解く: