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東京大学 理学系研究科 生物科学専攻 2024年8月実施 第4問

Author

祭音Myyura (co-authored with GPT 5.6 SOL)

Description

以下は公式第4問の独立した要約である。遺伝子の獲得と進化、アブラムシが水平伝播で獲得した遺伝子 YY、および集団間移住を題材として答えよ。

図1に真核生物各種の系統関係とゲノムの情報を示す。

+-- Saccharomyces cerevisiae(酵母)
`--+-- Nematostella vectensis(イソギンチャク)
`--+--+-- Caenorhabditis elegans(線虫)
| `-- Drosophila melanogaster(ショウジョウバエ)
`--+-- Takifugu rubripes(フグ)
`--+-- Mus musculus(マウス)
`-- Homo sapiens(ヒト)
生物一倍体ゲノムサイズ(Mb)タンパク質をコードする遺伝子数ヒトの遺伝子と相同な遺伝子数(相対値)
酵母1263000.14
イソギンチャク269190000.44
線虫100200000.30
ショウジョウバエ143140000.36
フグ380220000.73
マウス2700220001
ヒト310020000-

図1:最後の列はマウスの相同遺伝子数を1とした相対値。

  1. 重複遺伝子がたどる代表的な運命を2つ説明せよ。
  2. 種系統樹の推定にはオルソログとパラログのどちらを用いるべきか。
  3. イソギンチャクがショウジョウバエや線虫より多くのヒト相同遺伝子・保存ドメインをもつ理由を考察せよ。
  4. 「遺伝子 YY はアブラムシのゲノムに存在し、アブラムシ系統だけが水平伝播で獲得した」とする推論に矛盾しないものを全て選べ。
    • (ア)無菌化したアブラムシでは YY が PCR 増幅されない。
    • (イ)昆虫以外の節足動物にも YY があり、アブラムシの YY と単系統になる。
    • (ウ)YY の近傍に同じ生合成経路の別酵素遺伝子がある。
  5. アブラムシ2種と植物・細菌・真菌類の遺伝子 YY を単離し、タンパク質 Y の部分アミノ酸配列を比較した(表1)。表1から推定される系統関係を正しく反映した遺伝子系統樹を、(ア)~(エ)から全て選べ。いずれも UPGMA により作成した樹である。

表1:異なるアミノ酸サイト数の割合。行・列の略号は次の生物を表す。

略号生物分類
ApAcyrthosiphon pisumアブラムシ
MpMyzus persicaeアブラムシ
UmUstilago maydis真菌類
GfGibberella fujikuroi真菌類
SaStaphylococcus aureus細菌
PaPantoea agglomerans細菌
AtArabidopsis thaliana植物
ApMpUmGfSaPaAt
Ap00.020.330.390.580.650.71
Mp-00.330.390.580.650.71
Um--00.320.580.580.67
Gf---00.540.560.69
Sa----00.580.69
Pa-----00.69
At------0

(ア)

+-- Arabidopsis
`--+-- Pantoea
`--+-- Staphylococcus
`--+--+-- Gibberella
| `-- Ustilago
`--+-- Acyrthosiphon
`-- Myzus

(イ)

+--+--+--+--+-- Gibberella
| | | | `-- Ustilago
| | | `-- Pantoea
| | `-- Staphylococcus
| `--+-- Myzus
| `-- Acyrthosiphon
`-- Arabidopsis

(ウ)

+--+-- Pantoea
| `--+--+--+-- Myzus
| | | `-- Acyrthosiphon
| | `--+-- Ustilago
| | `-- Gibberella
| `-- Staphylococcus
`-- Arabidopsis

(エ)

+-- Arabidopsis
`--+--+-- Pantoea
| `-- Staphylococcus
`--+-- Acyrthosiphon
`--+-- Myzus
`--+-- Gibberella
`-- Ustilago
  1. 問5から、遺伝子 YY の獲得時期・起源生物とアブラムシとの生態関係を考察せよ。
  2. Hardy-Weinberg 平衡にあり、アレル AA の頻度が 0.40.4 のとき、AaAa の頻度を求めよ。
  3. 集団1の AA 頻度を qq、集団2の初期頻度を p0p_0 とする。集団1は非常に大きく qq は一定とし、離散時刻ごとに集団2の割合 mm0<m<10<m<1)が退出し、同数が集団1から流入する。問8では移住以外による頻度変化はないとする。ptp_t の漸化式と一般項を求めよ。
  4. 遺伝的浮動も考慮し、q=0.5,m=0.01q=0.5,m=0.01 のもとで計算した集団2の平衡頻度分布を図2に示す。(ア)~(ウ)のうち最大の集団サイズを仮定したものを選び、理由を述べよ。

図2:各図の横軸はアレル AA の頻度(0011)、縦軸は確率密度(目盛り 0,2,4,6,80,2,4,6,8)。いずれも 0.50.5 を中心に左右対称である。

選択肢分布の概形
(ア)0.50.5 付近に鋭く集中した単峰型。頂点の高さは約 77。両端付近ではほぼ 00
(イ)0.50.5 を頂点とする幅広い単峰型。頂点の高さは約 2.22.2。両端付近ではほぼ 00
(ウ)0.50.5 付近で最も低く、0011 の近くで高くなる U 字型。

Kai

問1

  • 機能喪失:一方に機能を損なう変異が蓄積し、偽遺伝子化して失われる。
  • 機能分化:変異の蓄積により新機能を得る、または祖先機能を分担する。

問2

オルソログを用いる。オルソログは種分化で分かれた相同遺伝子なので種系統を反映するが、パラログは遺伝子重複で分かれた別コピーである。

問3

動物の共通祖先は既に豊富な遺伝子・ドメインをもっていたと考えられる。ショウジョウバエと線虫ではその後の系統特異的な喪失や急速な配列変化が多く、イソギンチャクでは祖先型が比較的よく保存された。

問4

(ア)はゲノム上の存在に反する。(イ)を節足動物の共通祖先での獲得・継承と解釈する最節約的な進化モデルでは、アブラムシ系統だけでの獲得に反する。この解釈では

(ウ)のみ.\boxed{\text{(ウ)のみ}}.

ただし、単系統性だけから水平伝播の方向や回数は一意に決まらない。他の節足動物がもつ遺伝子からアブラムシへの水平伝播なども許せば、(イ)を論理的に排除するには追加の仮定が必要である。

問5

アブラムシ2種は距離 0.020.02、真菌2種は 0.320.32 でまとまり、両群は平均距離 0.360.36 で結合する。以後 Staphylococcus、Pantoea、Arabidopsis の順に結合する。(ア)と(ウ)は枝を回転させた同じ系統関係なので

(ア)、(ウ).\boxed{\text{(ア)、(ウ)}}.

問6

アブラムシ2種の分岐前、その共通祖先が真菌から YY を獲得したと考えられる。例えば、アブラムシに共生・寄生する真菌や、餌植物上で接触する真菌からの移動が考えられる。ただし、この系統樹だけでは具体的な生態関係を特定できない。

問7

2×0.4×0.6=0.48.\boxed{2\times0.4\times0.6=0.48}.

問8

pt=(1m)pt1+mq.\boxed{p_t=(1-m)p_{t-1}+mq}.

したがって

ptq=(1m)(pt1q),p_t-q=(1-m)(p_{t-1}-q),

より

pt=q+(1m)t(p0q).\boxed{p_t=q+(1-m)^t(p_0-q)}.

問9

(ア).\boxed{\text{(ア)}}.

集団が大きいほど遺伝的浮動が弱く、アレル頻度は移住で定まる q=0.5q=0.5 の近くに強く集中する。

Reference