東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 2024年8月実施 専門科目B 第4問
Author
藍色日和
Description
体 K を
K=Q(2+2,3+3)
とする。次の問いに解答しなさい。
(1) K/Q はガロア拡大であることを示し、拡大次数 [K:Q] を計算しなさい。
(2) K/Q の中間体で、Q 上 4 次であるものを全て挙げなさい。但し列挙するに当たっては K の元 α を用いて Q(α) の形で書くこと。
(3) K/Q の中間体 M1,M2 で、いずれも Q 上 8 次の非可換ガロア拡大であり、かつ Gal(M1/Q) と Gal(M2/Q) が群同型でないようなものの例を挙げなさい。
Kai
以下の答案では、基礎体を明言せずに「ガロア拡大」「ガロアである」などいった場合、全て Q 上ガロアであることを指すものとする。
(1)
まず 2,3,6∈K であるから
2−2=2+22∈K
3−3=3+36∈K
が従う。よって K は Q 係数多項式
((X2−2)2−2)((X2−3)2−3)
の最小分解体なので、ガロアである。次に S=Q(2+2) 及び T=Q(3+3) とおく。
まず S は Q 上 4 次巡回拡大でその非自明は中間体は Q(2) であるのに対し、T はガロアでない。
実際 T がガロアだとすると、3−3,6∈T になるが、このとき Gal(T/Q(3)) の T への作用が 6 ないし 3−3 を固定し矛盾する。
またこの議論から 2∈/T もわかる。以上から S∩T=Q が従う。よって
[K:Q]=[S:Q][T:Q]=16
である。
(2)
G=Gal(K/Q) は
σa,b,c,d(2+2)=(−1)a2+(−1)b2
σa,b,c,d(2−2)=(−1)a+b2−(−1)b2
σa,b,c,d(3+3)=(−1)c3+(−1)d3
σa,b,c,d(3−3)=(−1)b+c+d3−(−1)d3
で定義される σa,b,c,d 全体の集合で書ける。G=Gal(K/Q) の部分群
H={σa,b,0,0}≃Z/4Z
N={σ0,0,c,d}≃Z/4Z
をとる。
まず H∩N={idK} である。
また N はガロア拡大 S の固定部分群なので、N◃G である。
また ∣N∣∣H∣=∣G∣ であることと K/Q がガロアでない中間体を持つことを考慮すれば、G は非自明な半直積
Z/4Z⋊Z/4Z
である。N の生成元を x、H の生成元を y を適切にとると、G は表示
G=⟨x,y∣x4=y4=1,yxy−1=x−1⟩
を持つ。この元の位数は全て 4 の約数であり、位数 2 の元は x2,y2,x2y2 である。以上から位数 4 の部分群の個数は
1+212=7
である。よって列挙に当たっては、互いに一致しない K/Q の 4 次拡大を 7 個あげれば良い。ここで
K1=Q(2,3)=Q(2+3)
K2=Q(2+2)
K3=Q(3+3)
K4=Q(3−3)
K5=Q(3+3+3−3)
K6=Q(3+3−3−3)
K7=Q(12+62)
とおく。これらは全て Q 上 4 次拡大である。まず次のことがわかる。
- (a) K2,K7 は Q 上巡回拡大
- (b) K1 は Q 上非巡回アーベル拡大
- (c) K3 は σ0,1,0,0 で固定される一方、K4 は固定されない。特に K3=K4。またここから相異なる i,j∈{3,4,5,6} に対して Ki=Kj が従う。
- (d) K3 から K4 へ、K5 から K6 への同型が存在する。特に K3,K4,K5,K6 はガロアではない。
- (e) K2 は σ0,0,0,1 で固定される一方、K7 は固定されない。特に K2=K7。
以上から Ki たちは互いに一致しないことがわかる。よって K/Q の 4 次部分拡大は以上の K1,⋯,K7 で尽くされている。
(3)
(2) で挙げた群 G の位数 2 の部分群 ⟨x2⟩ 及び ⟨y2⟩ 及び ⟨x2y2⟩ はいずれも正規部分群であり、よってこれらの部分群による剰余群が考えられる。
これらの剰余群は G の表示に x2=1 または y2=1 または x2y2=1 を条件に課して得られる群であり、これらをそれぞれ G3,G1,G2 とする。このとき
G3=⟨x,y∣x2=y4=1,yx=xy⟩
G1=⟨x,y∣x4=y2=1,yxy=x−1⟩
G2=⟨x,y∣x4=y4=1,yxy−1=x−1,x2=y2⟩
である。ここで G3 はアーベル群、G1 は二面体群 D8 である。一方四元数群
Q8=⟨i,j,k∣i2=j2=k2=ijk⟩
を取ったとき、
Q8ijk→G2↦y↦x↦yx
は位数の同じ群の間の全射準同型を定めているから同型であり、よって G3 は四元数群 Q8 に等しい。
以上から M1=K⟨y2⟩ 及び M2=K⟨x2y2⟩ とすれば、これが所望の条件を満たしている。
このとき M1 及び M2 を求めるには、それぞれ ⟨y2⟩ 及び ⟨x2y2⟩ で不変な 8 次拡大を取れば良いから
M1=Q(2,3+3)
M2=Q(2,(2+2)(3+3))
になることがわかる。