東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 2023年8月実施 専門科目B 第2問
Author
藍色日和
Description
剰余環
を考え、 で代表される の元を とおく。
のイデアル をとり、集合
を定める。
(1) が整域であることを示しなさい。また を の商体としたとき、その部分集合
は の体でない部分環であることを示しなさい。
(2) 代数の同型
を示しなさい。但し左辺は の 加群としての自己準同型全体の為す集合を表し、関数の合成を積とすることで 代数の構造を定めている。
(3) -代数の同型
が存在するような のイデアル の生成系を一つ挙げなさい。
Kai
(1)
まず前半については は既約多項式であるから、 は整域であることがわかる。
以下後半を示していく の元 (但し は二変数多項式、 は一変数多項式、 は 次以下の一変数多項式である)が を満たすとき、 であるから である必要がある。
ここで であったとすると、 になるが、 が 次以下の多項式であることから が従う。以上から
であることがわかる。よって集合として
であり、 であることを考慮すると を含んでいて和と積で閉じていることがわかる。
また は を含む一方 を含んでいないから体ではない。
以上から は の体でない部分環である。以上で後半が示せた。
(2)
まず で定義される写像 を を に、 を に送る写像とする。
ここで が整域であることと、 であること、そして であるから well-defined な写像
が定まる。定義よりこれは -代数の準同型になっているから、あとは全単射性を示せば良い。
まず が与えられたとする。
このとき であるから、 である。
以上から が従う。
このとき であるから、 は の元 を用いて と表せることがわかった。
よって の全射性が示せた。
次に であったとする。
このとき であるから の単射性がわかった。
以上から は 代数の同型であることがわかったから、 が所望の同型である。
(3)
いま
と定める。ここで は で生成される 代数であるから、 は 代数の全射準同型である。
この核を とする。まず である。
ここで が体でない整域であることと のクルル次元が であることから であることが従う。
以上から が所望の生成系である。