東京大学 数理科学研究科 数理科学専攻 2020年8月実施 専門科目 B 第16問
Author
Miyake
Description
質量が のおもりを 個用意し、図のように長さが の 本のひもで順につないで天井からぶら下げる。
ひもはたわんだり伸び縮みしたりせず、ひもの重さは無視でき、おもりの運動は鉛直軸を含む一定の平面内で起こるものとする。
また、時刻を 、重力加速度を で表すことにする。
図のように、運動が行われる平面の 座標を、天井とひもとの固定点を原点とし、水平方向が 、鉛直下向きを となるように定める。
上から数えて 番目のおもりの水平方向の位置座標を とする。
(1) どの も十分小さいという仮定のもとで、この系のLagrangian 、および から得られる Euler-Lagrange 方程式を求めよ。
ただし、こうして得られる Euler-Lagrange 方程式は、線型の微分方程式になるものとする。
(2) (1)で求めた線型微分方程式の解で、定数 を用いて
と表される解に興味があるとする。
このとき、最高次の係数が のある整数係数 次多項式 が存在し、上の形の解が存在するための必要十分条件が、 と表されることを示せ。
(3) 多項式列 を特徴付ける漸化式を一つ求めよ。
Kai
(1)
位置座標 の時間微分 を
それぞれ のように表す。
どの も十分に小さく、
得られる Euler-Lagrange 方程式が線型の微分方程式とのことなので、
運動エネルギーとポテンシャルエネルギーは
に関して2次まで求めればよい。
上から数えて 番目のおもりのy座標を とすると、
次が成り立つ:
よって、
なので、この系のポテンシャルエネルギーは(基準点を適当に選んで)
であり、
である。
また、 にくらべて は十分小さいので、
この系の運動エネルギーは
であり、
である。
よって、Langrangian は、
であり、Euler-Lagrange 方程式は、
である。
(2)
(1) で得た運動方程式に
を代入して整理すると、次のようになる:
ただし、 は 次の単位行列で、
は 成分が次のように与えられる 次正方行列である:
() が自明な解 以外の解
をもつための必要十分条件は
であるが、これの左辺は に関して
最高次の係数が の整数係数の 次の多項式である。
よって、
として、題意を満たすことがわかる。
(3)
について、
が成り立つ。