東京大学 新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 2026年1月実施 問題7
Author
KardeniaPoyu
Description
以下の問いに答えよ。
(1) 行列 A=2−1−1−12−1−1−12 の固有値を求めよ。
(2) 行列 A の固有空間の基底を求めよ。
(3) PTAP が対角行列になるような直交行列 P を求めよ。
(4) x=(x1,x2,x3)T を三次元実ベクトルとする。f(x)=xTAx の最小値を与える最適解的集合は、三次元空間における直線になっている。この直線を表す方程式を示せ。
(5) 実数の成分からなる対称正方行列に対して、すべての固有値が異なるならば、すべての固有ベクトルは相互に直交することを証明せよ。
Kai
(1)
行列 A の固有方程式 ∣λI−A∣=0 を解く。
∣λI−A∣=λ−2111λ−2111λ−2
各列を第1列に加えると、
∣λI−A∣=λλλ1λ−2111λ−2=λ1111λ−2111λ−2
第2行および第3行から第1行を引くと、
=λ1001λ−3010λ−3=λ(λ−3)2=0
ゆえに、行列 A の固有値は λ=0,3(3 は2重根) である。
(別解:サラスの公式による展開)
∣λI−A∣=λ−2111λ−2111λ−2=(λ−2)3+(1⋅1⋅1)+(1⋅1⋅1)−(λ−2)⋅1⋅1−1⋅1⋅(λ−2)−1⋅(λ−2)⋅1=(λ3−6λ2+12λ−8)+2−3(λ−2)=λ3−6λ2+12λ−6−3λ+6=λ3−6λ2+9λ=λ(λ2−6λ+9)=λ(λ−3)2
(2)
固有値 λ に属する固有空間 W(λ) は、方程式 (λI−A)x=0 の解空間である。
① λ=0 のとき
(λI−A)x=−2111−2111−2x1x2x3=000
行基本変形により x1−x2=0 かつ x2−x3=0 を得る。すなわち x1=x2=x3。
したがって、W(0) の基底は以下の通りとなる。
⎩⎨⎧111⎭⎬⎫
② λ=3 のとき
(3I−A)x=111111111x1x2x3=000
これは x1+x2+x3=0 と同値である。x2=s,x3=t とおくと x1=−s−t となる。
したがって、W(3) の基底は以下の通りとなる。
⎩⎨⎧−110,−101⎭⎬⎫
(3)
実対称行列は直交行列によって対角化可能である。各固有空間における正規直交基底を構成する。
-
W(0) の正規直交基底:
v1=(1,1,1)T を正規化すると、
u1=31111
となる。
-
W(3) の正規直交基底:
v2=(−1,1,0)T,v3=(−1,0,1)T とし、グラム・シュミットの直交化法を用いる。
まず v2 を正規化すると、
u2=21−110
となる。次に v3 の u2 に対する直交成分 v3′ を求めると、
v3′=v3−(v3⋅u2)u2=−101−21−110=−1/2−1/21
これを正規化すると、
u3=61−1−12
を得る。
以上より、求める直交行列 P は以下の通りである。
P=(u1u2u3)=313131−21210−61−6162
(4)
直交行列 P を用いて x=Py (y=(y1,y2,y3)T)と変数変換を行うと、二次形式 f(x) は以下のように対角化される。
f(x)=yT(PTAP)y=0y12+3y22+3y32
y1,y2,y3 は実数であるため、f(x)=3y22+3y32≥0 が成り立つ。
したがって、f(x) の最小値は 0 であり、条件は y2=y3=0 である。このとき、
x=Py100=y1u1=3y1111
これは固有空間 W(0) に属する任意のベクトルを表す。よって、最適解の集合がなす直線の方程式は x1=x2=x3 である。
English:
By applying the orthogonal transformation x=Py using the matrix P from (3), the quadratic form f(x) is diagonalized as:
f(x)=yT(PTAP)y=0y12+3y22+3y32
Since yi∈R, f(x)≥0 holds. The minimum value 0 is achieved when y2=y3=0, which implies x is any multiple of the eigenvector u1:
x=Py100=y1u1=3y1111
Thus, the set of optimal solutions is the line x1=x2=x3.
(5)
実対称行列 A (AT=A) の相異なる固有値を λ1,λ2、対応する固有ベクトルを x1,x2 とする。
Ax1Ax2=λ1x1…(i)=λ2x2…(ii)
式 (i) の両辺を転置すると、x1TAT=λ1x1T となる。AT=A より、
x1TA=λ1x1T
この両辺に右から x2 を掛けると、
x1TAx2=λ1x1Tx2…(iii)
一方、式 (iii) の左辺に式 (ii) を代入すると、
x1T(Ax2)=x1T(λ2x2)=λ2x1Tx2…(iv)
式 (iii) と (iv) より、
(λ1−λ2)x1Tx2=0
λ1=λ2 より λ1−λ2=0 であるから、
x1Tx2=0
が成り立つ。これは x1 と x2 が直交することを意味する。(証明終)
English:
Let λ1,λ2 be distinct eigenvalues of a real symmetric matrix A, with eigenvectors x1,x2.
Ax1Ax2=λ1x1…(i)=λ2x2…(ii)
Taking the transpose of (i) and using AT=A, we have x1TA=λ1x1T. Multiplying by x2 from the right yields:
x1TAx2=λ1x1Tx2…(iii)
Simultaneously, from (ii), we have:
x1TAx2=λ2x1Tx2…(iv)
From (iii) and (iv), it follows that:
(λ1−λ2)x1Tx2=0
Since λ1=λ2, we must have:
x1Tx2=0
proving orthogonality. (Q.E.D.)