東京大学 工学系研究科 2016年8月実施 数学 第2問
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次の3次正方行列式に関する以下の問いに答えよ。
(I)
行列式の固有値を全て求めよ。
(II)
行列式を求めよ。ただし, は自然数とする。
(III)
3次正方行列式は対角化可能で, の関係を満たすものとする。行列の任意の固有ベクトルは, 行列の固有ベクトルでもあることを示せ。
(IV)
の関係を満たす3次正方行列を求めよ。ただし, 行列はその固有値が全て正となる対角化可能な行列とする。
(V)
3次正方行列は対角化可能で, の関係を満たすものとする。のとき, の最大値をの関数として求めよ。ただし, は正の実数とし, 行列の固有値全て正とする。また, は正方行列のトレース (主対角成分の和) であり, は行列の行列式である。
Kai
(I)
固有値をとおくと, より,
(II)
行列を対角化する。固有値に対応する固有ベクトルをそれぞれとすると,
となる。ここで行列を ,
とおくと, 以下のように対角化できる。
行列を掃き出し法で計算する。
よっては以下のように計算できる。
(III)
が行列の固有値に対する固有ベクトルのとき,
左からを掛けて式変形すると,
となり, これはベクトル が の固有値 に対する固有ベクトルの1つであることを示す。ある固有値に対する固有ベクトルの集まりはすべて平行であるから, 適当な定数 により,
とかける。これは, が行列の固有値に対する固有ベクトルであることを意味し, 題意のことが示された。
(IV)
の正の固有値をとおくと, (III)の性質より(II)のを用いて,
と対角化できる。より,
よって,
(V)
の正の固有値をとおくと, (III)の性質より(II)のを用いて,
と対角化できる。
ここでトレースの性質, から,
である。
ここで, より,
の関係より,
の最大値を求めよ。は,
より, で極値を取る。このとき,
となり, であるから, は極大値である。したがって, 求めるの最大値は,