東京大学 工学系研究科 物理工学専攻 2019年8月実施 物理学 第3問
Author
Miyake
Description
固体表面における原子の吸着現象の簡単なモデルとして、原子が吸着できる場所(吸着サイト)が 個並んだ吸着格子と単原子理想気体が接した系を考える(図 1 を参照)。
なお、この系はボルツマン統計に従うものとする。
各吸着サイトは互いに独立で、それぞれ原子が吸着していないか、1つだけ吸着しているかのいずれかの状態をとるものとし、それぞれの状態のエネルギーを とする ()。
各原子の質量を とし、原子の内部自由度は考えない。
この系全体は、温度 、化学ポテンシャル の熱平衡状態にあるものとする。
ボルツマン定数を 、逆温度を 、プランク定数を で割ったものを とする。
[1] まず、単原子理想気体のみを考える。体積 中の単原子 個からなる理想気体の分配関数は
で与えられることを示せ。
[2] 式 (1) を用いて、大分配関数 を求めよ。
[3] 理想気体の圧力 は、 を用いて と与えられる。これに問 [2] の結果を用いることで、 の表式を求めよ。
[4] 次に、この単原子理想気体が吸着格子に接している状況を考える。1つの吸着サイトに着目し、それがとりうる状態に関する大分配関数 を求めよ。
[5] 吸着格子全体の大分配関数は で与えられる。これを用いて、吸着している原子の密度 (吸着原子の総数を で割ったもの)を求めよ。
[6] 問 [3] と [5] の結果を用いて、吸着原子密度 を圧力 と温度 の関数として表せ。
[7] 問 [6] で得られた を、温度 一定のもとで圧力 の関数として図示せよ。また、圧力 一定のもとで温度 の関数としても図示せよ。
Kai
[1]
まず、1粒子について考えると、空間積分は体積 となる。
また、運動量に関する積分は、1成分について、次のように計算できる:
よって、全体の分配関数は、
となる。
[2]
[3]
[4]
[5]
吸着格子全体の大分配関数は、
であり、グランドポテンシャルは、
であり、よって、
である。
[6]
[3] より、
であるから、これを [5] に代入して、
を得る。
[7]