東京大学 情報理工学研究科 数理情報学 2022年8月実施 第2問
Author
hari64boli64
Description
n 次元実ベクトル空間 Rn のベクトル u の第 i 成分を ui と表す。
すべての i=1,…,n に対して ui>0 である u∈Rn を正値であるといい。正値ベクトル全体の集合を Xn で表す。
また、ベクトル a∈Rn に対し、(i,i) 成分が ai (i=1,…,n) であるような対角行列を diag(a1,…,an) で表す。
行列 M の転置を MT で表す。
正則な n×n 実行列 A=(aij), ベクトル v∈Rn に対し、x∈Xn の関数 Fi(x) を
Fi(x)=xi(vi+j=1∑naijxj)(i=1,…,n)
と定める。ここで、Fi(x∗)=0 (i=1,…,n) を満たす x∗∈Xn が存在するとする。
そして、x(t)∈Xn についての微分方程式系
dtdxi(t)=Fi(x(t))(t≥0, i=1,…,n)(*)
を考える。以下の設問に答えよ。
(1) ベクトル c∈Xn に対し、x∈Xn の関数 L(x) を
L(x)=i=1∑nci[xi∗logxixi∗−xi∗+xi]
とする。
x(0)=x′∈Xn を初期値とする方程式 (∗) の解 x(t) に対し、L˙(x′) を L˙(x′)=dtdL(x(t))t=0 と定める。
また、行列 C を C=diag(c1,…,cn) と定める。対称行列 CA+ATC が負定値となるとき、かつそのときに限り、任意の x′∈Xn∖{x∗} に対して L˙(x′)<0 となることを示せ。
(2) ベクトル w∈Xn に対し、z∈Rn の関数 Hw(z) を
Hw(z)=21i=1∑nwizi2
とし、Hw(z) の z における勾配を ∇Hw(z)=(∂z1∂Hw(z),…,∂zn∂Hw(z))T と表す。
方程式 (∗) の解 x(t) に対して、z(t)=x(t)−x∗ が
dtdz(t)=G(z(t))∇Hw(z(t))
を満たすような行列関数 G(z) を求めよ。
ただし、関数 G(z) は、A,W=diag(w1,…,wn),X∗=diag(x1∗,…,xn∗),Z=diag(z1,…,zn) を用いて表すこと。
(3) 対角行列 C=diag(c1,…,cn) に対し、対称行列 CA+ATC が負定値となる c∈Xn が存在するとする。
このとき、次のことが成り立つようなベクトル w∈Xn を一つ求めよ。
「z(t)∈U∖{0} ならば dtdHw(z(t))<0 となる、0∈Rn の開近傍 U⊂Rn が存在する。」
Kai
(1)
まず、Fi(x∗)=0 という条件より、
また、x∗∈Xn より、xi∗=0 であることより、
vi=−∑j=1naijxj∗ である。
条件を整理していくと、
L(x′)˙=dtdL(x(t))t=0=i=1∑nci(−xi′xi∗+1)dtdxit=0=i=1∑nci(−xi′xi∗+1)Fi(x′)=i=1∑nci(−xi′xi∗+1)xi′(vi+j=1∑naijxj′)=i=1∑nci(−xi∗+xi′)(vi+j=1∑naijxj′)=−i=1∑ncixi∗vi−i=1∑ncixi∗(j=1∑naijxj′)+i=1∑ncixi′vi+i=1∑ncixi′(j=1∑naijxj′)=i=1∑nj=1∑ncixi∗aijxj∗−i=1∑nj=1∑ncixi∗aijxj′−i=1∑nj=1∑ncixi′aijxj∗+i=1∑nj=1∑ncixi′aijxj′=x∗TCAx∗−x∗TCAx′−x′TCAx∗+x′TCAx′=(x∗−x′)TCA(x∗−x′)
となる。
よって、
⇔⇔⇔⇔(∀x′∈Xn∖{x∗})L(x′)˙<0(∀x′∈Xn∖{x∗})(x∗−x′)TCA(x∗−x′)<0(∀x′∈Xn∖{x∗})((x∗−x′)TCA(x∗−x′)<0)∧((x∗−x′)TATC(x∗−x′)<0)(∀y∈Rn)yT(CA+ATC)y<0CA+ATC≺0
となる。
なお、x∗−x′ から y への変換には注意が必要である。
全ての y∈Rn に対して、
x∗−x′=y を満たす x′∈Xn∖{x∗}
が存在するとは限らない。
ここでは長さに関する定数倍の変換が挟まっている。
(2)
まず、∇Hw(z)=(w1z1,…,wnzn)T である。
ここで、
dtdzi(t)=dtdxi(t)=Fi(x(t))=xi(t)(vi+j=1∑naijxj(t))=(xi(t)−xi∗+xi∗)(j=1∑naij(xj(t)−xj∗))=(zi(t)+xi∗)(j=1∑naijzj(t))
となるので、
dtdz(t)=(Z+X∗)Az(t)=(Z+X∗)AW−1Wz(t)=(Z+X∗)AW−1∇Hw(z(t))
となる。
(3)
条件をより平易な表現で言い表すと、limz(t)→0 において、
dtdHw(z(t))<0 を満たすような w を、c を用いて表現せよ、
ということになる。
このことを念頭に置いて式変形していくと、
dtdHw(z(t))=i=1∑nwizi(t)dtdzi(t)=∇Hw(z(t))TG(z(t))∇Hw(z(t))=∇Hw(z(t))T((Z+X∗)AW−1)∇Hw(z(t))
となり、
⇔⇔dtdHw(z(t))<0∇Hw(z(t))T((Z+X∗)AW−1)∇Hw(z(t))<0∇Hw(z(t))T((Z+X∗)C−1(CA+ATC)W−1)∇Hw(z(t))<0
となる。
なお、最後の変形で、W,X∗,Z が対角行列であることを用いた。
以上より、(Z+X∗)C−1(CA+ATC)W−1 が CA+ATC に関する
二次形式の形で記述出来る時、これはその負定値性より負になる。
これは、
⇔W−1T=(Z+X∗)C−1W=(Z+X∗)−1C
を意味し、Z→0 を考慮すると、W=X∗C を満たすような w であれば、
題意を満たすことが分かる。