東京大学 情報理工学研究科 数理情報学 2022年8月実施 第2問
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hari64boli64
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次元実ベクトル空間 のベクトル の第 成分を と表す。
すべての に対して である を正値であるといい。正値ベクトル全体の集合を で表す。
また、ベクトル に対し、 成分が であるような対角行列を で表す。
行列 の転置を で表す。
正則な 実行列 , ベクトル に対し、 の関数 を
と定める。ここで、 を満たす が存在するとする。
そして、 についての微分方程式系
を考える。以下の設問に答えよ。
(1) ベクトル に対し、 の関数 を
とする。
を初期値とする方程式 () の解 に対し、 を と定める。
また、行列 を と定める。対称行列 が負定値となるとき、かつそのときに限り、任意の に対して となることを示せ。
(2) ベクトル に対し、 の関数 を
とし、 の における勾配を と表す。
方程式 () の解 に対して、 が
を満たすような行列関数 を求めよ。
ただし、関数 は、 を用いて表すこと。
(3) 対角行列 に対し、対称行列 が負定値となる が存在するとする。
このとき、次のことが成り立つようなベクトル を一つ求めよ。
「 ならば となる、 の開近傍 が存在する。」
Kai
(1)
まず、 という条件より、
また、 より、 であることより、
である。
条件を整理していくと、
となる。
よって、
となる。
なお、 から への変換には注意が必要である。
全ての に対して、
を満たす
が存在するとは限らない。
ここでは長さに関する定数倍の変換が挟まっている。
(2)
まず、 である。
ここで、
となるので、
となる。
(3)
条件をより平易な表現で言い表すと、 において、
を満たすような を、 を用いて表現せよ、
ということになる。
このことを念頭に置いて式変形していくと、
となり、
となる。
なお、最後の変形で、 が対角行列であることを用いた。
以上より、 が に関する
二次形式の形で記述出来る時、これはその負定値性より負になる。
これは、
を意味し、 を考慮すると、 を満たすような であれば、
題意を満たすことが分かる。