東京大学 情報理工学研究科 2019年8月実施 数学 第1問
Author
Miyake
Description
正方行列A,Bを
A=120212021,B=032−31−3203231−320
とする.また,行列Iは単位行列とする.実正方行列Xに対して,exp(X)を
exp(X)=k=0∑∞(k!1Xk)=I+X+2!1X2+3!1X3+…
と定義するとき,以下の問いに答えよ.
(1)、Aの全ての固有値と,それらに対応する固有ベクトルを求めよ.ただし,固有ベクトルとして、ノルムは1かつ第一要素は非負実数であるものを選べ.
(2)、非負整数nに対して,Anを求めよ.
(3)、exp(A)を求めよ.
(4)、αを実数とするとき、exp(αB)が次式のように表せることを示せ.
exp(αB)=I+(sinα)B+(1−cosα)B2
ただし、ケーリー・ハミルトンの定理を用いてもよい.
(5)、3次元実ベクトルαが与えられたとき、3次元実ベクトルxに関する関数fを
f(x)=k=1∑nexp(n2πkB)α−x2
とおく.ただし、n≥2とする.このとき、x=(I+B2)αにおいてfが最小になることを示せ.
Kai
(1)
A の固有値を λ とすると、
0=1−λ2021−λ2021−λ=(1−λ)3−2(1−λ)−2(1−λ)=−(λ+1)(λ−1)(λ−3)
なので、 λ=−1,1,3 である。
固有値 λ=−1 に対応する固有ベクトルを求めるため、
120212021xyz=−xyz
とおくと、 y=−2x=−2z を得る。
固有値 λ=1 に対応する固有ベクトルを求めるため、
120212021xyz=xyz
とおくと、 y=0,x+z=0 を得る。
固有値 λ=3 に対応する固有ベクトルを求めるため、
120212021xyz=3xyz
とおくと、 y=2x=2z を得る。
以上より、固有値 λ=−1,1,3
に対応する固有ベクトルは、次のように選べる:
211−21, 2110−1, 21121.
(2)
上で求めた固有値・固有ベクトルを使って、次のようにおく:
V=211−2120−2121, C=−100010003.
このとき、
V−1A=21121−2021−21=VCV−1
であるから、
An=VCnV−1=411−2120−2121(−1)n00010003n121−2021−21=41(−1)n+2+3n−2⋅(−1)n+2⋅3n(−1)n−2+3n−2⋅(−1)n+2⋅3n2⋅(−1)n+2⋅3n−2⋅(−1)n+2⋅3n(−1)n−2+3n−2⋅(−1)n+2⋅3n(−1)n+2+3n
を得る。
(3)
expA=k=0∑∞k!1Ak=41k=0∑∞k!1(−1)k+2+3k−2⋅(−1)k+2⋅3k(−1)k−2+3k−2⋅(−1)k+2⋅3k2⋅(−1)k+2⋅3k−2⋅(−1)k+2⋅3k(−1)k−2+3k−2⋅(−1)k+2⋅3k(−1)k+2+3k=41e−1+2e+e3−2e−1+2e3e−1−2e+e3−2e−1+2e32e−1+2e3−2e−1+2e3e−1−2e+e3−2e−1+2e3e−1+2e+e3
(4)
B の固有多項式を φ(x) とする:
φ(x)=det(B−xI)=−x3−x.
ケーリー・ハミルトンの定理より、
φ(B)∴ B3=−B3−B=0=−B
であるから、
exp(αB)=I+αB+2!1(αB)2+3!1(αB)3+4!1(αB)4+⋯=I+αB+2!1α2B2−3!1α3B−4!1α4B2+⋯=I+(α−3!1α3⋯)B+(2!1α2−4!1α4⋯)B2=I+(sinα)B+(1−cosα)B2
となる。
(5)
f(x)=k=1∑n∣∣exp(n2kπB)a−x∣∣2=k=1∑n(exp(n2kπB)a−x)T(exp(n2kπB)a−x)=k=1∑n(xTx−2aTexp(n2kπB)Tx+aTexp(n2kπB)Texp(n2kπB)a)=k=1∑nxTx−2aT(k=1∑nexp(n2kπB))Tx+aT(k=1∑nexp(n2kπB)Texp(n2kπB))a
Bは反対称行列なので、BT=−B、よって
exp(n2kπB)Texp(n2kπB)=exp(n2kπBT)exp(n2kπB)=exp(n2kπ(BT+B))=exp(n2kπO)=I
また、(4)で得た
exp(αB)=I+(sinα)B+(1−cosα)B2
に α=n2kπ を代入すると、
exp(n2kπB)=I+(sinn2kπ)B+(1−cosn2kπ)B2
を得るので
k=1∑nexp(n2kπB)=k=1∑n(I+(sinn2kπ)B+(1−cosn2kπ)B2)=k=1∑nI+(k=1∑nsin(n2kπ))B+k=1∑nB2−(k=1∑n(cosn2kπ))B2=nI+0+nB2−0=nI+nB2
がわかる。さらに、
(I+B2)T(1+B2)=I+(B2)T+B2+(B2)TB2=I+(−B)2+B2+(−B2)2=I+2B2+B4=I+2B2−B2=I+B2
となるので、
f(x)=nxTx−2naT(I+B2)Tx+naTa=n(xTx−2aT(I+B2)Tx+aTa)=n(xTx−2aT(I+B2)Tx+aT(I+B2+B4)a)=n(xTx−2aT(I+B2)Tx+aT(I+B2)a+aTB4a)=n(xTx−2aT(I+B2)Tx+aT(I+B2)T(I+B2)a+aT(B2)TB2a)=n(∣∣x−(I+B2)a∣∣2+∣∣B2a∣∣2)
である。つまり、が最小値になるのは
x=(I+B2)a
の時である。