名古屋大学 多元数理科学研究科 2022年2月実施 1日目 [2]
Author
江澤 樹
Description
を実数とし, 以下の行列 について考える.
(1) の階数を求めよ.
(2) の固有値を求めよ.
(3) が対角化可能であるための必要十分条件を求めよ.
Kai
(1) では行列式を計算して, となる を絞り込むことから考えた. (2) は単純な計算であった. 重複度については (3) の解答で議論している. (3) は (2) で求めた固有値の重複の可能性を考え始め, 各固有値につて重複度と固有空間の次元と比較している.
(1)
まず, の行列式が
と計算できる. よって, が実数であることに注意すれば のときに限り となり, となる. また, のときは
となるが, これは の各行に注目すれば となっていることがわかる. よって
と求まる.
(2)
の固有多項式は を不定元として
と計算できるため の固有値は
と求まる(これらは重複している可能性もあるが, それは (3) において決定する).
(3)
求める条件は「」である. よく知られているように, 正方行列が対角化可能であるための必要十分条件は「各固有値の(固有多項式の根としての)重複度と固有空間の次元が一致している」ことである (齋藤正彦, 線型代数入門, 東京大学出版会. p.136). このことに注意して, (2) で求めた の固有値の重複の可能性から議論し, 固有空間の次元と比較する.また, ここでは固有値 についての固有空間を と書くことにする.
まず, かつ よりこの2つが一致することはない.
さらに, を解くと である.
そして, が一致し1つの実数を表すのは のときに限る.
以上により, まず, (i) のとき固有値に重複がないため A は対角化可能である.
さらに, (ii) のとき
から各固有値 について重複度と固有空間の次元は一致している. よって, は対角化可能である. そして, (iii) のとき
から固有値 について重複度は で, 固有空間の次元が だから は対角化可能でない. 以上 (i),(ii),(iii) により が対角化可能であるための必要十分条件は
である.