名古屋大学 多元数理科学研究科 2021年2月実施 2日目 [2]
Author
江澤 樹
Description
とする. 上で定義された関数 は, ある が存在して の任意の分割
に対して
をみたすとき, で有界変動であるという. 以下の問に答えよ.
(1) は を含む開区間で微分可能で, その導関数 は で有界とする.
このとき は で有界変動であることを示せ.
(2) 次の関数は で有界変動であるかどうか, 理由とともに答えよ.
Kai
有界変動性が題材となっているのは珍しい.
(1) は有名な事実であり平均値の定理から が Lipschitz 連続であり Lipschitz 定数がどのように取れるのかを示した.
(2) は (i) を解くにあたって最初から (1) の結果が使えないか考えた. (ii) では問題の流れからして有界変動でないと予想して考えた.
(1)
任意の分割 に対して, 平均値の定理より
とできる.
ここで, とおいて
から について和をとれば
とできるため は で有界変動である.
(2)
(i)
有界変動である.
理由:まず,
と積の微分公式から
である. よって, 任意の に対して
ゆえ は を含む開区間で微分可能で, その導関数 は で有界である.
よって (1) より は で有界変動である.
(ii)
有界変動でない.
理由:いま の分割として
なる 個の分点より成るものを取れば
だからこの分割について, の における変動量 (杉浦光夫, 解析入門 I, 東京大学出版会. 定義 4) の下からの評価が
となることによる (杉浦光夫, 解析入門 I, 東京大学出版会. p.343, 例 3).