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京都大学 情報学研究科 システム科学専攻 2026年8月実施 確率統計

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AnonTokyo #83056

Description​

以下の問題において,E(X)E(X) は確率変数 (random variable) XX の期待値 (expected value),V(X)V(X) は分散 (variance) を表す。N(μ,σ2)N(\mu,\sigma^2) は期待値 μ\mu,分散 σ2\sigma^2 の正規分布 (normal distribution) を表す。

問題 1​

nn は 2 以上の整数 (integer) とする。確率変数 X1,…,XnX_1,\ldots,X_n は独立で,Xi∼N(μ,1)X_i\sim N(\mu,1),i=1,…,ni=1,\ldots,n とする。ただし,μ\mu は未知パラメータである。また,

Xˉ=1n∑i=1nXi\bar X=\frac{1}{n}\sum_{i=1}^n X_i

とする。さらに,

R=X1−XˉR=X_1-\bar X

とおく。なお,確率変数の組 (Y,Z)(Y,Z) が二変量正規分布 (bivariate normal distribution) にしたがうとき,YY と ZZ が無相関 (uncorrelated) ならば独立 (independent) であることを用いてよい。以下の設問に答えよ。

(1) E(R)E(R) および V(R)V(R) を求めよ。

(2) RR と Xˉ\bar X が無相関であることを示せ。

(3) U=X12−1U=X_1^2-1 とする。E(U)E(U) および条件付き期待値 (conditional expectation) E(U∣Xˉ=x)E(U\mid\bar X=x) を求めよ。

問題 2​

nn を正の整数とし,既知の定数 a1,…,ana_1,\ldots,a_n は ∑i=1nai2=1\sum_{i=1}^n a_i^2=1 を満たすとする。確率変数 XX は X∼N(0,σ2)X\sim N(0,\sigma^2) であり,σ2>0\sigma^2>0 は未知パラメータとする。X=xX=x が与えられたとき,確率変数 Y1,…,YnY_1,\ldots,Y_n は独立 (independent) に正規分布にしたがい,Yi∼N(xai,τ2)Y_i\sim N(xa_i,\tau^2),i=1,…,ni=1,\ldots,n である。ただし τ2>0\tau^2>0 は既知の定数とする。ここで Z=∑i=1naiYiZ=\sum_{i=1}^n a_iY_i とおき,Y1=y1,…,Yn=ynY_1=y_1,\ldots,Y_n=y_n が観測されたときの ZZ の値を z=∑i=1naiyiz=\sum_{i=1}^n a_iy_i とおく。以下の設問に答えよ。

(1) X=xX=x が与えられたときの ZZ の条件付き確率分布 (conditional probability distribution) を求めよ。

(2) W=Z−XW=Z-X とおく。X=xX=x が与えられたときの WW の条件付き確率分布が xx によらないことを示せ。この結果により,WW と XX は独立であることがわかる。このことを用いて ZZ のしたがう確率分布を求めよ。

(3) Y1=y1,…,Yn=ynY_1=y_1,\ldots,Y_n=y_n が与えられたときの XX の条件付き確率密度関数 (conditional probability density function) を f(x∣y1,…,yn)f(x\mid y_1,\ldots,y_n) とする。f(x∣y1,…,yn)f(x\mid y_1,\ldots,y_n) を最大 (maximum) にする xx の値 x^\hat x を,z,σ2,τ2z,\sigma^2,\tau^2 を用いて表せ。

(4) 設問 (2) で求めた ZZ の確率分布の確率密度関数 (probability density function) を h(z;σ2)h(z;\sigma^2) とする。Z=zZ=z を観測したとき,h(z;σ2)h(z;\sigma^2) を最大にする σ2\sigma^2 の値 σ^2\hat\sigma^2 を,z,τ2z,\tau^2 を用いて表せ。ただし σ2>0\sigma^2>0 の範囲で最大値をとらない場合は σ^2=0\hat\sigma^2=0 と定める。

(5) 設問 (3) で求めた x^\hat x の式において,σ2\sigma^2 を設問 (4) の σ^2\hat\sigma^2 で置き換えた値を,z,τ2z,\tau^2 を用いて表せ。

Kai​

問題 1​

(1) RR の期待値と分散​

E(X1)=E(Xˉ)=μE(X_1)=E(\bar X)=\mu なので

E(R)=0.\boxed{E(R)=0}.

また,V(X1)=1V(X_1)=1,V(Xˉ)=1/nV(\bar X)=1/n,Cov⁡(X1,Xˉ)=1/n\operatorname{Cov}(X_1,\bar X)=1/n だから

V(R)=V(X1)+V(Xˉ)−2Cov⁡(X1,Xˉ)=1+1n−2n=1−1n.V(R)=V(X_1)+V(\bar X)-2\operatorname{Cov}(X_1,\bar X) =1+\frac1n-\frac2n =\boxed{1-\frac1n}.

(2) 無相関の証明​

Cov⁡(R,Xˉ)=Cov⁡(X1−Xˉ,Xˉ)=1n−1n=0.\operatorname{Cov}(R,\bar X) =\operatorname{Cov}(X_1-\bar X,\bar X) =\frac1n-\frac1n=0.

従って RR と Xˉ\bar X は無相関である。また,両者は独立正規変数の線形結合であるから同時正規分布に従う。問題文の性質より両者は独立でもある。

(3) UU の期待値・条件付き期待値​

E(X12)=V(X1)+[E(X1)]2=1+μ2E(X_1^2)=V(X_1)+[E(X_1)]^2=1+\mu^2 なので

E(U)=μ2.\boxed{E(U)=\mu^2}.

X1=Xˉ+RX_1=\bar X+R かつ RR と Xˉ\bar X は独立である。従って

E(U∣Xˉ=x)=E[(x+R)2−1]=x2+2xE(R)+E(R2)−1=x2−1n.\begin{aligned} E(U\mid\bar X=x) &=E[(x+R)^2-1]\\ &=x^2+2xE(R)+E(R^2)-1\\ &=\boxed{x^2-\frac1n}. \end{aligned}

問題 2​

(1) Z∣X=xZ\mid X=x の分布​

条件付きの YiY_i は独立正規変数なので,ZZ も正規分布に従う。∑iai2=1\sum_i a_i^2=1 より

E(Z∣X=x)=∑iai(xai)=x,E(Z\mid X=x)=\sum_i a_i(xa_i)=x,
V(Z∣X=x)=τ2∑iai2=τ2.V(Z\mid X=x)=\tau^2\sum_i a_i^2=\tau^2.

ゆえに

Z∣X=x∼N(x,τ2).\boxed{Z\mid X=x\sim N(x,\tau^2)}.

(2) WW の独立性と ZZ の周辺分布​

W=Z−XW=Z-X なので,条件付き分布は

W∣X=x∼N(0,τ2)W\mid X=x\sim N(0,\tau^2)

であり,xx に依存しない。従って WW と XX は独立で,W∼N(0,τ2)W\sim N(0,\tau^2) である。Z=X+WZ=X+W は独立な正規変数の和であるから,

Z∼N(0,σ2+τ2).\boxed{Z\sim N(0,\sigma^2+\tau^2)}.

(3) 条件付き密度の最大点​

ベイズの定理より,xx に依存しない正の定数を省略して

f(x∣y1,…,yn)∝exp⁡ ⁣[−x22σ2−12τ2∑i(yi−aix)2]∝exp⁡ ⁣[−12(1σ2+1τ2)x2+zτ2x].\begin{aligned} f(x\mid y_1,\ldots,y_n) &\propto\exp\!\left[-\frac{x^2}{2\sigma^2}-\frac1{2\tau^2}\sum_i(y_i-a_ix)^2\right]\\ &\propto\exp\!\left[-\frac12\left(\frac1{\sigma^2}+\frac1{\tau^2}\right)x^2+\frac z{\tau^2}x\right]. \end{aligned}

指数部を xx で微分すると,極大条件は

−(1σ2+1τ2)x+zτ2=0.-\left(\frac1{\sigma^2}+\frac1{\tau^2}\right)x+\frac z{\tau^2}=0.

よって

x^=σ2σ2+τ2z.\boxed{\hat x=\frac{\sigma^2}{\sigma^2+\tau^2}z}.

(4) σ2\sigma^2 の最尤推定​

(2) より

h(z;σ2)=12π(σ2+τ2)exp⁡ ⁣[−z22(σ2+τ2)].h(z;\sigma^2)=\frac{1}{\sqrt{2\pi(\sigma^2+\tau^2)}} \exp\!\left[-\frac{z^2}{2(\sigma^2+\tau^2)}\right].

対数尤度の微分は

∂log⁡h∂σ2=z2−σ2−τ22(σ2+τ2)2.\frac{\partial\log h}{\partial\sigma^2} =\frac{z^2-\sigma^2-\tau^2}{2(\sigma^2+\tau^2)^2}.

z2>τ2z^2>\tau^2 なら内部の極大点は σ2=z2−τ2\sigma^2=z^2-\tau^2 である。z2≤τ2z^2\le\tau^2 なら σ2>0\sigma^2>0 の内部で最大値を取らず,問題文の定義により 0 とする。従って

σ^2=max⁡{z2−τ2,0}.\boxed{\hat\sigma^2=\max\{z^2-\tau^2,0\}}.

(5) 代入推定値​

(3) の式に (4) の値を代入すると

x^plug-in={z−τ2z,∣z∣>τ,0,∣z∣≤τ.\boxed{ \hat x_{\mathrm{plug\text{-}in}}= \begin{cases} z-\dfrac{\tau^2}{z},&|z|>\tau,\\[5pt] 0,&|z|\le\tau. \end{cases}}

となる。z=0z=0 も下段に含まれるため,零除算は生じない。