京都大学 情報学研究科 システム科学専攻 2026年8月実施 数学【I】
Author
AnonTokyo #83056
Description
以下の問題において,R は実数全体からなる集合を,行列 A に対し AT は A の転置 (transpose) を表す。
問題 1
正方行列
A=11000−1−1−1−1
に関する以下の設問に答えよ。
(1) A の階数 (rank) を求めよ。
(2) A を表現行列とする線形写像 (linear mapping) の核 (kernel) kerA を求めよ。
(3) x∈R3 を変数とする線形方程式 (linear equations)
Ax=−1−1−1
の一般解 (general solution) を求めよ。解が存在しない場合は「存在しない」と答えよ。
問題 2
d,n を n>d>1 なる整数とする。i=1,2,…,n に対して xi=(xi,1,xi,2,…,xi,d)T とし,d×n 行列 X を X=(x1,x2,…,xn) により表す。また,A=n1∑i=1nxixiT とする。A は相異なるゼロでない固有値 (eigenvalue) をもつとし,これらを降順に並べたものを λ1>λ2>⋯>λd とする。また対応する固有ベクトル (eigenvector) を j=1,2,…,d に対してそれぞれ vj=(vj,1,vj,2,…,vj,d)T とし,これらは ∥vj∥=1 を満たすとする。ただし u=(u1,u2,…,ud)T∈Rd に対して ∥u∥=uTu は u のユークリッドノルムを表す。さらに m<d なる正の整数 m に対して d×m 行列 V を V=(v1,v2,…,vm) と定義する。以下の設問に答えよ。
(1) A を n,X を用いて表せ。
(2) v1,v2,…,vm を基底 (basis) とする Rd の線形部分空間 (linear subspace) への xi の正射影 (orthogonal projection) を zi∈Rd とする。zi を V,xi を用いて表せ。ただし,v1,v2,…,vd が互いに直交する (mutually orthogonal) ことは説明なしに用いてよい。
(3) 設問 (2) で定義した z1,z2,…,zn について,射影誤差 (projection error)
E=n1i=1∑n∥zi−xi∥2
を A,V を用いて表せ。必要であれば単位行列 (identity matrix) I,行列式 (determinant) det,トレース (trace) tr を用いてよい。
(4) 設問 (3) の射影誤差 E を A の固有値を用いて表せ。
Kai
問題 1
(1) 階数
第 2 行は第 1 行と等しく,第 1 行と第 3 行は一次独立である。行基本変形により
A∼1000−10−1−10
を得る。したがって,rank(A)=2 である。
(2) 核
x=(x1,x2,x3)T とおくと,Ax=0 は
x1−x3=0,−x2−x3=0
に等しい。x3=t とおけば x1=t, x2=−t であるから,
kerA={t(1,−1,1)T∣t∈R}.
(3) 線形方程式の一般解
Ax=(−1,−1,−1)T は
x1−x3=−1,−x2−x3=−1
に帰着する。x3=t∈R として,x1=t−1, x2=1−t である。よって解は存在し,一般解は
x=(−1,1,0)T+t(1,−1,1)T(t∈R).
問題 2
(1) 行列表示
X の各列は xi なので,XXT=∑i=1nxixiT となる。ゆえに
A=n1XXT.
(2) 正射影
A は実対称行列であり,v1,…,vm は正規直交系をなす。従って VTV=Im であり,射影行列は P=VVT である。したがって
zi=VVTxi=j=1∑m(vjTxi)vj.
(3) 射影誤差
P2=P,PT=P より,(I−P)T(I−P)=I−P である。このこととトレースの性質を用いると
E=n1i=1∑nxiT(I−P)xi=tr[(I−P)n1i=1∑nxixiT]=tr[(I−VVT)A].
従って
E=tr(A)−tr(VTAV).
(4) 固有値による表示
Avj=λjvj であるから,VTAV=diag(λ1,…,λm) である。また,tr(A)=∑j=1dλj なので
E=j=m+1∑dλj.