京都大学 情報学研究科 システム科学専攻 2026年8月実施 複素関数論
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AnonTokyo #83056
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以下の問題において i は虚数単位 (imaginary unit),e はネイピア数(自然対数の底)(Napier's constant, base of natural logarithm),π は円周率,C は複素数の集合を表す。また,複素数 z に対して ∣z∣,Rez,Imz は z の絶対値 (absolute value),実部 (real part),虚部 (imaginary part) をそれぞれ表す。
問題 1
以下の設問に答えよ。
(1) 複素変数 z の関数を
f(z)=(z3−1)(z5−1)(z6−1)1
と与える。{z∈C∣0<∣z−1∣<1} の領域において,f(z) の z=1 を中心としたローラン展開 (Laurent expansion)
f(z)=n=0∑∞an(z−1)n+n=1∑∞bn(z−1)−n
を考える。このとき,b3 の値を求めよ。
(2) 原点対称 (symmetric with respect to the origin) な領域 Ω 上で正則 (regular) な複素関数 f(z) が与えられたとする。また,領域 Ω は,閉円板 D={z∈C∣∣z∣≤1} を含むものとする。いま,集合 ∂Dr,∂Dl を ∂Dr={z∈C∣∣z∣=1,Rez≥0},∂Dl={z∈C∣∣z∣=1,Rez<0} と定義する。また,任意の z∈∂Dr に対して ∣f(z)∣≤3 が成り立ち,任意の z∈∂Dl に対して ∣f(z)∣≤5 が成り立つとする。このとき,
∣f(0)∣≤15
が常に満たされるか否かを示せ。
問題 2
複素数 z=reiθ(r>0,−2π≤θ<23π)に対する関数 Logz を,Logz=logr+iθ により定義する。また,
g(z)=z2+a2Logz
とする。ただし,a>0 である。以下の設問に答えよ。
(1) 図に示す積分路 (contour) を C とした際の
∮Cg(z)dz
を留数の定理 (residue theorem) により求めよ。ただし,R>a, 0<ϵ<a とする。
図:積分路 C(原図の向きを文章で再現)
実軸上を −R→−ϵ,原点を避ける半径 ϵ の上半円を −ϵ→ϵ(時計回り),実軸上を ϵ→R,半径 R の上半円を R→−R(反時計回り)に進む閉曲線。
(2) 設問 (1) の結果を用いて
∫0∞x2+a21dx=2aπ,∫0∞x2+a2logxdx=2aπloga
を示せ。
(3) 次式を求めよ。
∫0∞x2+a2(logx)2dx
Kai
問題 1
(1) ローラン係数 b3
z3−1,z5−1,z6−1 はいずれも z=1 で一位の零点を持つため,f は z=1 で三位の極を持つ。従って
b3=z→1lim(z−1)3f(z)=z→1limz3−1z−1z→1limz5−1z−1z→1limz6−1z−1=31⋅51⋅61=901.
(2) 不等式の証明
Ω は原点対称であるので,F(z)=f(z)f(−z) は閉単位円板を含む領域で正則である。∣z∣=1 ならば,z と −z は左右の半円に属する。虚軸上の端点では両方とも右半円側の条件 ∣f∣≤3 が適用でき,それ以外では ∣f∣≤3 と ∣f∣≤5 を一回ずつ適用できる。従って円周上で
∣F(z)∣=∣f(z)f(−z)∣≤15
が成り立つ。最大値の原理より ∣F(0)∣≤15 であり,F(0)=f(0)2 である。よって
∣f(0)∣≤15
は常に成り立つ。
問題 2
(1) 留数定理
積分路 C の内部の極は z=ia のみであり,z=−ia は外部にある。留数は
Res(g,ia)=2iaLog(ia)=2ialoga+iπ/2.
C は正の向きに内部を囲むので,留数定理から
∮Cg(z)dz=2πiRes(g,ia)=aπ(loga+2iπ).
(2) 二つの広義積分
R→∞,ϵ→0+ とする。大円弧上の g は O(logR/R2) であり,小円弧上の積分は O(ϵ∣logϵ∣) だから,いずれも円弧積分は 0 に収束する。
正の実軸で Logx=logx,負の実軸の上側では Log(−x)=logx+iπ である。よって積分路上の和は
lim∮Cg(z)dz=2I1+iπI0,
ただし
I0=∫0∞x2+a2dx,I1=∫0∞x2+a2logxdx.
(1) の結果と実部・虚部を比較すると
2I1+iπI0=aπloga+2aiπ2
となり,
I0=2aπ,I1=2aπloga
を得る。
(3) 対数二乗の積分
同じ積分路に h(z)=(Logz)2/(z2+a2) を用いると,
∮Ch(z)dz=aπ(loga+2iπ)2.
Log(−x)=logx+iπ に注意して実軸上の積分をまとめる。I2=∫0∞(logx)2/(x2+a2)dx とおけば
2I2+2iπI1−π2I0=aπ[(loga)2+iπloga−4π2].
(2) の I0,I1 を代入して整理すると
I2=2aπ[(loga)2+4π2].