京都大学 情報学研究科 システム科学専攻 2020年8月実施 線形代数
Author
思齐塾, 祭音Myyura
Description
R3 から R3 への線形写像 f の表現行列が A であるとして, 以下の設問に答えよ。 ただし, a は実数とする。
A=101210−10a
(i) 行列 A の階数(ランク)が最小になる a の値を求めよ。また, このときの行列 A の階数を求めよ。
(ii) 行列 A の階数が最小になるとき, 線形写像 f の核(カーネル)を求めよ。また, このとき, f の像の正規直交基底を求めよ。
(iii) 行列 A が対角化できなくなる a の値を求めよ。
(iv) a=3 のとき, 行列 A は行列 B と相似であることを示せ。
B=100020012
题目描述
设从 R3 到 R3 的线性映射 f 在标准基下的表示矩阵为
A=101210−10a,
其中 a 为实数。回答:
- 求使 rankA 最小的 a,并求此时的最小秩。
- 在 A 的秩最小时,求线性映射 f 的核,并求
imf 的一组标准正交基。
- 求所有使 A 在实数域上不可对角化的 a。
- 当 a=3 时,证明 A 与矩阵
B=100020012
相似。
Kai
(i) 解答
行列 A の階数(ランク)は, A の行列式 det(A) が 0 でないときは 3, 0 のときは 3 未満となります。
まず, A の行列式を計算します。
det(A)=101210−10a=1(1⋅a−0⋅0)−2(0⋅a−0⋅1)+(−1)(0⋅0−1⋅1)=a+1
det(A)=0 となるのは a+1=0 , すなわち a=−1 のときです。このとき, 階数が最小になる可能性があります。
- a=−1 のとき, det(A)=0 なので, rank(A)=3 です。
- a=−1 のとき, det(A)=0 なので, rank(A)<3 です。
このときの行列 A は,
A=101210−10−1
左上の 2×2 小行列式は 1021=1=0 であるため, rank(A)≥2 です。
したがって, a=−1 のとき, rank(A)=2 となります。
これが最小の階数です。
答え: 階数が最小になる a の値は a=−1 で, そのときの階数は 2 です。
(ii) 解答
a=−1 のとき, 行列 A の階数は最小になります。
- 線形写像 f の核(カーネル) Ker(f)
Ker(f) は, 方程式 Ax=0 の解空間です。
101210−10−1xyz=000
これを連立方程式として解くと,
⎩⎨⎧x+2y−z=0y=0x−z=0
第2式より y=0 。これを第1式に代入すると x−z=0 となり, 第3式と同じです。
x=z となります。 z=t ( t は任意の実数)とおくと, x=t,y=0,z=t となります。
よって, 解ベクトルは x=t101 と表せます。
したがって, Ker(f) は以下のように表せます。
Ker(f)=⎩⎨⎧c101∣c∈R⎭⎬⎫
2. 線形写像 f の像 Im(f) の正規直交基底
Im(f) は A の列ベクトルで張られる空間(列空間)です。 rank(A)=2 なので, 基底は2つの線形独立な列ベクトルで構成されます。 A の第1列と第2列は線形独立なので, 基底として ⎩⎨⎧u1=101,u2=210⎭⎬⎫ を取ることができます。
この基底にグラム・シュミットの直交化法を適用して正規直交基底 {w1,w2} を求めます。
w1=∥u1∥u1=12+02+121101=21101
- w2 の計算:
まず, u2 から w1 方向の成分を引きます。
u2′=u2−(u2⋅w1)w1=210−210⋅2110121101
u2′=210−22⋅21101=210−101=11−1
次に, u2′ を正規化します。
w2=∥u2′∥u2′=12+12+(−1)2111−1=3111−1
答え: f の像の正規直交基底は ⎩⎨⎧21101,3111−1⎭⎬⎫ です。
(iii) 解答
ここでは f:R3→R3 の対角化なので,実数体上で考える。
特性多項式は
det(A−λI)=(1−λ)[λ2−(a+1)λ+a+1]
である。二次因子に λ=1 を代入した値は 1 なので,
1 が二次因子の根と重なることはない。二次因子の判別式は
D=(a+1)2−4(a+1)=(a+1)(a−3)
である。
- a<−1 または a>3 なら D>0 であり,相異なる3個の実固有値を
もつので実対角化できる。
- −1<a<3 なら D<0 であり,非実共役な固有値をもつので
実数体上では対角化できない。
- a=−1 では固有値 0 の代数的多重度は2であるが,(i) より
dimkerA=1 なので対角化できない。
- a=3 では固有値 2 の代数的多重度は2である。一方,
rank(A−2I)=2,dimker(A−2I)=1,
なので対角化できない。
したがって,実数体上で対角化できないための必要十分条件は
−1≤a≤3.
なお,複素数体上の対角化を意味する場合には, −1<a<3 の3固有値は
相異なるため対角化でき,対角化できない値は端点 a=−1,3 だけである。
(iv) 解答
a=3 のとき, 行列 A が行列 B と相似であることを示すには, A のジョルダン標準形が B と一致することを示せばよいです。
A=101210−103,B=100020012
(iii)の計算より, a=3 のときの A の固有値とその多重度は以下の通りです。
- 固有値 λ1=1 : 代数的多重度 1, 幾何学的多重度 1
- 固有値 λ2=2 : 代数的多重度 2, 幾何学的多重度 1
ジョルダン標準形の構造は, これらの多重度によって決まります。
- λ1=1 について: 幾何学的多重度が1なので, 1×1 のジョルダンブロックが1つです: (1) 。
- λ2=2 について: 幾何学的多重度が1なので, ジョルダンブロックは1つです。代数的多重度が2なので, ブロックのサイズは 2×2 になります: (2012) 。
したがって, A のジョルダン標準形 JA はこれらのブロックを対角に並べたものになります。
JA=100020012
これは行列 B と一致します。行列はそのジョルダン標準形と相似であるため, A は JA と相似であり, JA=B なので, A は B と相似です。
(証明終)