東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 2024年8月実施 問題I-2
Author
祭音Myyura (Based on ソニア's answer refined with GPT 6 Astra)
Description
以下の設問(1)および(2)に答えよ。
(1)
以下の文章を読み,問①~④に答えよ。図1は,八面体形錯体における,σ 相互作用に基づく分子軌道エネルギー準位を示している。

八面体形錯体であるヘキサアクアチタン(III)イオン [Ti(OH2)6]3+ のd電子数は【ア】であり,d電子は【イ】軌道に収容される。この錯体の光吸収スペクトルを測定すると,d電子の遷移に基づく吸収極大が 490 nm に観測され,この吸収は【ウ】軌道から【エ】軌道への遷移に帰属される。この遷移エネルギーに基づいて,配位子場分裂パラメーターを見積もることが可能となる。
[Ti(OH2)6]3+ とヘキサアンミンチタン(III)イオン [Ti(NH3)6]3+ の光吸収スペクトルを比較すると,分光化学系列において H2O よりも【i】位置にある NH3 を配位子とする [Ti(NH3)6]3+ では,d電子の遷移に基づく吸収極大が [Ti(OH2)6]3+ より【ii】に観測される。これは,[Ti(NH3)6]3+ の【オ】軌道のエネルギーが [Ti(OH2)6]3+ のものよりも高くなるからである。
【カ】個のd電子をもつヘキサクロロ銅(II)イオン [CuCl6]2+ は,正方ひずみを示し,八面体形構造から大きく変形した構造となる(図2)。この構造のひずみにより軌道の縮退が解消され,金属の dx2−y2 軌道に【キ】個,dz2 軌道に【ク】個の電子が入ると,錯体の全エネルギーが安定化する。このような現象は【ケ】効果の現れである。

① 文章中の空欄ア~クにあてはまる適切な数字または記号を答えよ。なお,記号については,以下の記号群の中から選ぶこと。同じ記号を繰り返し用いても良い。
【記号群】a1g,t1u,eg,t2g,eg∗,a1g∗,t1u∗
② 文章中の空欄ケにあてはまるもっとも適切な語句を答えよ。
③ 文章中の空欄iとiiにあてはまる語句として,正しいものの組み合わせを,選択肢A~Dの中から一つ選んで答えよ。
| 選択肢 | i | ii |
|---|
| A | 高い | 高エネルギー側 |
| B | 高い | 低エネルギー側 |
| C | 低い | 高エネルギー側 |
| D | 低い | 低エネルギー側 |
④ 分光化学系列において,Cl− や OH− は NH3 よりも低い位置にある。この理由を,金属と配位子間の π 結合の効果を考慮して3行程度で説明せよ。
(2)
平面四角形錯体 [IrCl(CO)(PPh3)2] に関する以下の問①~④に答えよ。
① Irの形式酸化数を答えよ。また,中心金属まわりの価電子数の総和を答えよ。
② 考えられる幾何異性体の構造を,中心金属まわりの立体化学がわかるようにすべて記せ。
③ 式(a)に示す [IrCl(CO)(PPh3)2] は,水素(H2)と反応してcis-ジヒドリド錯体 [IrCl(CO)(H)2(PPh3)2] へと変換される。この反応では,H–H結合が開裂し,二つのIr–H結合が生じる酸化的付加が進行している。一方で,式(b)に示す [Zr(η5-C5H5)2HMe] と水素との反応では,σ 結合メタセシスによってH–H結合が開裂し,メタンの生成を伴ってジヒドリド錯体 [Zr(η5-C5H5)2(H)2] が生成する。式(b)で水素の酸化的付加が進行しない理由を,金属のd電子数と関連付けて3行程度で説明せよ。
[IrCl(CO)(PPh3)2]H2[IrCl(CO)(H)2(PPh3)2](a)
[Zr(η5-C5H5)2HMe]H2[Zr(η5-C5H5)2(H)2]+Me−H(b)
④ 式(a)で生成するcis-ジヒドリド錯体 [IrCl(CO)(H)2(PPh3)2] がとりうる可能な幾何異性体のうち二つは,光学不活性(アキラル)である。それらの幾何異性体の構造を,中心金属まわりの立体化学がわかるようにそれぞれ記せ。
题目描述
回答以下(1)、(2)各题。
(1) 阅读以下文字,回答①~④。图1表示八面体配合物中由 σ 相互作用形成的分子轨道能级。
八面体六水合钛(III)离子 [Ti(OH2)6]3+ 的d电子数为【ア】,d电子填入【イ】轨道。测定其光吸收光谱时,在 490 nm 处观察到由d电子跃迁产生的吸收峰,该吸收归属于从【ウ】轨道到【エ】轨道的跃迁。可以根据这一跃迁能量估计配体场分裂参数。
比较 [Ti(OH2)6]3+ 与六氨合钛(III)离子 [Ti(NH3)6]3+ 的光吸收光谱:NH3 在光谱化学序列中的位置比 H2O【i】,以其为配体的 [Ti(NH3)6]3+,d电子跃迁吸收峰出现在水合配合物吸收峰的【ii】。这是因为氨配合物的【オ】轨道能量比水合配合物更高。
具有【カ】个d电子的六氯合铜(II)离子 [CuCl6]2+ 显示四方畸变,形成明显偏离八面体的结构(图2)。畸变消除轨道简并,当金属的 dx2−y2 轨道中有【キ】个电子、dz2 轨道中有【ク】个电子时,配合物总能量降低。这种现象体现了【ケ】效应。
① 为ア~ク填写恰当的数字或符号。符号从以下词库中选择,可以重复使用。
【符号】a1g、t1u、eg、t2g、eg∗、a1g∗、t1u∗。
② 为ケ填写最恰当的词语。
③ 从A~D中选择i、ii的正确组合。
| 选项 | i | ii |
|---|
| A | 高 | 高能量侧 |
| B | 高 | 低能量侧 |
| C | 低 | 高能量侧 |
| D | 低 | 低能量侧 |
④ Cl− 和 OH− 在光谱化学序列中的位置低于 NH3。考虑金属与配体之间的 π 成键作用,用约3行说明原因。
(2) 关于平面四方配合物 [IrCl(CO)(PPh3)2],回答①~④。
① 求Ir的形式氧化数及中心金属周围的价电子总数。
② 画出所有可能的几何异构体,明确表示中心金属周围的立体化学。
③ 上方反应(a)中,[IrCl(CO)(PPh3)2] 与氢气反应,生成cis-二氢化物配合物 [IrCl(CO)(H)2(PPh3)2]。该过程为氧化加成,H–H键断裂,同时形成两条Ir–H键。反应(b)中,[Zr(η5-C5H5)2HMe] 与氢气通过 σ 键复分解反应使H–H键断裂,生成二氢化物配合物 [Zr(η5-C5H5)2(H)2],同时生成甲烷。结合金属的d电子数,用约3行说明(b)中不发生氢的氧化加成的原因。
④ 反应(a)生成的cis-二氢化物配合物 [IrCl(CO)(H)2(PPh3)2] 的可能几何异构体中,有两个不具光学活性,即为非手性。分别画出它们的结构,明确表示中心金属周围的立体化学。
Kai
(1)
①
| 空欄 | 解答 |
|---|
| ア | 1 |
| イ | t2g |
| ウ | t2g |
| エ | eg∗ |
| オ | eg∗ |
| カ | 9 |
| キ | 1 |
| ク | 2 |
Ti(III)は d1、Cu(II)は d9 である。銅(II)という条件に従うと錯イオンの電荷は +2+6(−1)=−4 であり、式は [CuCl6]4− となる。 [CuCl6]2+ の電荷と銅(II)の指定は両立しないため、ここでは銅(II)として答える。
ヤーン・テラー効果。
A。NH3 のほうが強い配位子場をつくるため t2g–eg∗ 間隔が大きく、吸収は高エネルギー側(短波長側)へ移る。
Cl− と OH− は占有された π 軌道を持つ供与性配位子である。これが金属の t2g と相互作用すると、金属成分の大きい反結合性準位が押し上げられ、eg∗ との間隔 Δo が小さくなる。したがって主に σ 供与性の NH3 より弱い配位子場となる。
(2)
Clは −1、COと PPh3 は中性なので、Irの形式酸化数は +1。Ir(I)は d8 であり、
Ne=8+2+2+2×2=16.
PPh3 同士が cis または trans の2種類。


[Zr(η5−C5H5)2HMe] は二つの Cp−、H−、Me− を持つZr(IV)、すなわち d0 錯体である。H–Hの反結合性軌道へ供与する占有d軌道を持たず、通常の二電子酸化的付加はZr(VI)を要求する。したがってZrの酸化数を変えないσ結合メタセシスが進行する。
次の二つである。

(a) の三組のtrans対は Cl/CO、H/PPh3、H/PPh3。

(b) は PPh3/PPh3、H/Cl、H/CO。いずれもH同士はcisで、分子内に鏡映面があるためアキラルである。
Reference