広島大学 先進理工系科学研究科 物理学プログラム 2022年8月実施 専門科目 [4] 熱統計力学
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以下の問いに答えよ.
(1) エンタルピー
(2) ある閉じた系の内部エネルギーの微小変化
(3) 問(2)の関係式を用いて、下記の関係式が成り立つことを示せ。
(4) エンタルピーが保存される場合について、
下図のように、断熱壁で作られたシリンダーの中央部に綿などでできた多孔質栓を固定して、断熱材で作られたピストン I, II を用いて左側から右側にゆっくり気体を押し出したとき、押し出される前と後の気体の温度がどのように変化するかを調べる実験を考える。
最初に図 1 のように、ピストン I で多孔質栓より左側に体積

(5) この過程でエンタルピーが保存されることを示せ。
(6) 問(4)の結果を用いて、気体が理想気体の場合、押し出される前後で気体の温度は変化しないことを示せ。
Kai
(1)
微小な熱
が成り立ち、
が成り立つ。
定圧変化では
がわかる。
(2)
がわかるので、
がわかる。
(3)
であり、 (2) で得た式を使って、次のように計算できる:
(4)
(5)
図 1 の状態での内部エネルギーを
図 2 の状態での内部エネルギーを
左側のピストンが気体になす仕事は
右側のピストンが気体になす仕事は
熱の出入りはないから、熱力学第1法則より次が成り立つ:
よって、
(6)
理想気体の状態方程式は適当な定数
が成り立ち、したがって (4) から
が成り立ち、気体の温度が変化しないことがわかる。