広島大学 先進理工系科学研究科 数学プログラム 2022年8月実施 専門科目 午前 [1]
Author
Miyake
Description
次の (A), (B) のすべての問に答えよ.
(A)
を実定数とし, 実行列 を考える. 以下の問に答えよ.
(1). の階数が となるような の値を求めよ.
(2). を (1) で求めた値とする. を未知数, を定数とする. 実線形方程式
が解をもつための必要十分条件を を用いて表し, それが成り立つときの一般解を を用いない形で求めよ.
(B)
有限次元実線形空間 上の線形写像 は (ただし, は 上の恒等写像)を満たすとする.
とする. 以下の問に答えよ.
ただし, 写像の合成を積とみなし, 線形写像 に対してその核を と表す.
(1). を示せ. ただし, は 上の零値写像(すべての の元を の零ベクトルに写す写像)である.
(2). を示せ. ただし, はベクトル空間の直和を表す.
(3). は の部分空間であり, かつ となることを示せ.
(4). の次元が奇数ならば, は 1 を固有値にもつことを示せ.
Kai
(A)
(1)
は次のように行基本変形できる:
よって、 の階数が となるのは のときである。
(2)
与えられた方程式の拡大係数行列
は、次のように行基本変形できる:
よって、与えられた方程式が解をもつための必要十分条件は である。
このとき、
となるので、一般解は、 を任意の実数として、
と表せる。
(B)
(1)
なので、
がわかる。
(2)
の零ベクトルを とする。
まず、 を考えると
なので であり、
を考えると
なので である。
よって、
である。
さらに、任意の は
と表せるが、 から である。
このことと () から
が言える。
(3)
(i) 任意の は適当な を使って
と表せ、
なので、 であり、 がわかる。
また、任意の実数 と任意の
について、
であるが、 なので、
が言え、 が実線形空間であることがわかる。
以上より、 は の(線形)部分空間であることがわかる。
(ii) 任意の は適当な を使って
と表せ、
より
なので、 である。
(4)